Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

O侯爵夫人

2009-03-11 | 外国映画(あ行)
★★★★ 1975年/ドイツ・フランス 監督/エリック・ロメール
「撮影技術があまりにすばらしくてため息」

フランス革命直後の北イタリア。身に覚えのない妊娠をしたO侯爵夫人は、子供の父親に名乗り出るよう呼び掛ける奇妙な新聞広告を出す。その数カ月前、O侯爵夫人は兵士達に襲われそうになったところを、ロシア軍の伯爵に助けられた。家族の元に戻った侯爵夫人に伯爵は結婚を申し込む。亡き夫に操をたてる夫人は時間を稼ぐうち、妊娠の徴候が現れるのだが…。

この時代に身に覚えのない妊娠がわかり、「夫は名乗り出てください」という新聞広告を出すなんて、そりゃもう街は大騒ぎです。で、果たしてO侯爵夫人を身籠もらせたのは誰だろうという展開になるわけですが、残念なことにすぐに予測は付いてしまいます。

それでも、映像が本当に美しくて、そんなことはどうでもいいってくらいに引き込まれてしまいました。以前「グレースと公爵」でも書きましたけど、本当に油絵みたいなんです。本作、夜の室内はロウソクのみ、昼は自然光のみで撮影されたとのこと。もともと、ロメールは自然光撮影が得意ですけども、貴族の屋敷内のコントラストがハンパないんですよね。

奥にいる人や家具は、まるで油絵の黒の絵の具で描いたよう。ビロードのカーテンの陰影なんて、後からフィルムに絵の具で補正したでしょ?としか思えないほど。どうしてこのコントラストを自然光で作りだせるのか、不思議でなりません。

しかも、光は少ないのにドレスなどコスチュームのふんわりした感じや透明感は、まるで触って感じるかごときリアルさがあります。この撮影技術、現代にも引き継がれているんでしょうか。感心すればするほど、そちらの方が気になって仕方ありませんでした。