Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ブラインドネス

2009-07-06 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2008年/カナダ・ブラジル・日本 監督/フェルナンド・メイレレス
「反面教師でもキツ過ぎる」


 視力を失うことにより、人間の剥き出しの本能だけが表出する薄汚い世界に一体何を見いだせば良いのやら。敢えて推測するならば、家族という最小形に始まり、企業、社会、国といった全ての集合体が互いを信頼し合うことによって保持されている、それがいかに価値あることで、すばらしいものかを見つめ直すということでしょうか。
 わたくしひとりの人間としては、例え世界中の人が失明しようとも、その環境下で人間は人間社会を築く知恵と理性があると信じたい。全ての人間が野獣と化してしまうとは思いたくない。もしかすると、本作の狙いはそれかも知れません。つまり反面教師的なアプローチ。

 それでもあまりの悲惨な状況に気が滅入ります。そして、このような極限状況でも、いや極限だからこそ男は女を犯すのでしょうか。「フランドル」同様、無防備に眺めていると男性不信に陥りかねませんね。この食料の代わりに女性を要求するという忌まわしい行為は首謀者を殺すことで、その後うやむやにされてしまう。そこがとても残念です。あの映像が示すものに作り手は落とし前を付けて欲しい。それは、言い出しっぺを殺してハイお終いということではないように思うのです。
 呼吸困難の状態からラストにようやく深呼吸。でも、余韻をかき消すダニー・グローバーのナレーションは余計かな。ただひとり異常事態を目の当たりにしてきた彼女は何に思いを馳せるのか。それは観客1人ひとりが考えることなのでしょうから。

期待の伊勢谷友介はいつものごとくパリッとしたスーツ姿が美しい。悪くありませんでした。