Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

たみおのしあわせ

2009-07-08 | 日本映画(た行)
★★★☆ 2007年/日本 監督/岩松了

「ラストにポカーン」

唐突なラストまではかなり楽しい作品でした。岩松テイストの面白さは、ズレとか間と言う類とはまた違いますね。例えるなら、バッティングセンターで構えていたら、隣のレーンから球が飛んできた。そんな感じ。なんでそうなるの?のアイデアは、センスとしか言いようがありません。でも、私は結構好きです。屋根裏に隠れていた叔父がいつのまにやら、老人たちをしきっているなんてねえ。しかも、逢い引き場所まで提供しちゃって。

冒頭、デパートの屋上で父親をチラ見する女性を見て、息子が「化粧が濃すぎる」なんて、いちゃもん付けます。ただチラ見しただけですよ。このシーンで、彼は父の再婚に複雑な心境を抱いていることがわかります。母の面影を引きずっているのもそうでしょうが、おそらく彼は父と2人きりの生活に第三者が介入してくるのが相当に嫌なのです。想像するだけでも嫌。そう考えるとラスト、父の引く手に素直に従う息子も、まあしょうがねーなあと言う気もします。もちろん「おいおい瞳さんは!」と突っ込みましたけど。

父、伸男を演じる原田芳雄がとても素敵です。あれなら、モテて当然でしょう。瞳さんの真意は何でしょうねえ。「素」なのか、魔性の女なのか。過去を含めてなかなかミステリアスな存在。この敢えて描かない瞳さんの心境があるから、余計にラストの展開もよくわからないという思いを多くの人に与えてしまうんでしょう。

さてコメンタリーを聞きながら見ると面白さ倍増でした。特にオダジョーと麻生ちゃんのかけ合いは、まるで夫婦漫才。またボーダーシャツの大竹しのぶが自転車に乗るシーンで、岩松監督が「これはヌーベルバーグだな」と言ったりして、ナルホドそういうノリで撮っちゃってるのね、とわかると、なかなか味わい深い作品のように思えてきました。ラストに関する監督の弁を楽しみにしていましたが、それはわからず仕舞い。麻生ちゃんは、「ふたりは死んだんでしょう?」と完全にボケてました。出演者もわからないエンディング、観客にわかるはずがありませんよね。