Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

それでも恋するバルセロナ

2009-07-12 | 外国映画(さ行)
★★★★ 2009年/スペイン・アメリカ 監督/ウディ・アレン
<MOVIX京都にて鑑賞>

「大人のバカンスラブ」

結局、何がどうなるわけでもなし。それぞれの愛が破滅したり、成就したりするような終わり方じゃありません。でも、私好きですね、この作品。これはロメールの「海辺のポーリーヌ」などに代表される ヨーロッパのバカンス映画のへのオマージュかも。 バカンスの恋と言えば、たいてい少女が主人公ですが、 それを大人の女性で描くのがウディ流ということではないしょうか。

スペイン訪問歴4回。世界で一番好きな都市がバルセロナ!な私には、舞台設定だけでウキウキ。しかし、それ以上にウディの描く恋愛模様が面白い。芸術家のフアン・アントニオに惹かれるヴィッキーとクリスティーナ。親友同士の奪い合いかと思いきや、元妻の出現によって奇妙な三角関係に突入します。まるで、ヘンリー&ジューンの世界ですね。でも、ウディが描くと優雅でお上品です。これはもう完璧な関係です。うっとりしてしまいました。

一見、浮気性で手当たり次第に手を出す男に見えるフアン。しかし、元妻マリアに「この家では英語でしゃべろ」と何度も言いますね。あれは、なかなかできることじゃありません。欲望のままに行動しているようで、芯の部分はとても紳士な男ではないでしょうか。魅力的な女性には美しい花を愛でるがごとく声をかける。それは、実に自然なことであって、そこから一旦何らかの関係性ができあがった場合には、相手の気持ちを考慮して行動できる男のように感じます。私もバルセロナでフアンに出会ったら、恋に落ちてしまうかも。そんなフアンを演じるのがハビエル・バルデム。いつもの強烈個性を敢えて抑えめにしているようで、とても良かった。

また、ヴィッキーの婚約者や友人を通して、アメリカ人の価値観をやんわりと皮肉っています。有名デザイナーのインテリアに囲まれ高性能テレビを見ているよりも、フラメンコギターを聞きながらワインを傾けることがどれほど豊かなことか。アメリカ人がスペイン人と恋に落ちれば、そのような展開になるのはもちろん想像できるのですが、ウディが描くと嫌味がありません。

普通恋愛映画を見ると誰かに感情移入してしまいますが、私はヴィッキーにも、クリスティーナにも、マリアにも感情移入してしまいました。 ラスト、ふたりがアントニオとマリアの元を去った時、バルセロナでの出来事はまさしくひと夏の恋の思い出となります。そんなラストが何とも爽やか。ああ、恋がしたい…。そんな気持ちにさせられました。