Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

エヴァの匂い

2009-07-28 | 外国映画(あ行)
★★★★☆ 1962年/フランス 監督/ジョセフ・ロージー
「変幻自在のカメラワーク」


魅力的なカメラワークに思わず溜息。流れるようなカメラワークと言うと、社交ダンスのワルツのようなイメージが浮かぶのだけど、前半部のパーティーシーンを見て思わずつぶやく。これはまるで「クイックステップ」。短くリズムを刻むステップ、そして鋭いターン。そう、スクリーンの中を着飾った男と女が小刻みに入れ替わり現れては消えてゆく。右から左へと言った直線的な動きではなく、美しい弧を描いて。この弧を描く人物の動きは随所で見られるのですけど、こんなの見たことあったかしら?ってくらい、とっても新鮮。

水槽の熱帯魚とキスするティヴィアンなど印象的なカットも数多いし、ベネチアのゴンドラを水上から撮影するシーンも素敵。そして、ラストは、俯瞰でヴェネチア広場を眺めながら港をとらえる長回し。ジャンヌ・モローの悪女ぶりを楽しんでやろうとしていた私でしたが、終始カメラに魅せられっぱなしでした。

エヴァは賭博場で金づるを見つけては転がり込んでいるような女。男の気持ちや境遇なんて知ったことじゃない。計算高いわけでもないし、ずる賢いわけでもない。こんな女にどっぷりハマってしまう男が悪いのだ。どこまでも、エヴァを追い続けるティヴィアン。それは、愛ではなく「執着」。自分の愚かな行為を初めて語り、惨めな姿を初めてさらした女への執着。

新しい愛人の前で「みじめな男」と断じるエヴァを見て、つい自分を愛する男に何の連絡もせずインドとやらへ旅立ってしまった「人セク」のユリを思い出してしまった。悪女と小悪魔の差はかくも大きい。恋愛なんて、ズタボロになってこそ。もし、神様が叶えてくれるのだとしたら、私は小悪魔より悪女がいい。