Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

マルタのやさしい刺繍

2009-08-04 | 外国映画(ま行)
★★★★ 2006年/スイス 監督/ベティナ・オベルリ
「みんなマルタの夢にお付き合い」

映画館で見たくてたまらなかったのだけど、結局時間が合わずDVDにて観賞。

私も洋裁が趣味で、いつか自分の店を開きたいという夢があるので、かなり前のめりで見てしまいました。でも作品としての完成度を問われると、正直すごくオーソドックスよね。年寄りが一念発起して新しいことにチャレンジするけど、保守的な反対派おやじ達がいて、一度はチャレンジが頓挫する。でも、最終的にはオヤジどもをギャフンと言わしてスッキリ、ジ・エンド。予想通りの展開過ぎてあっけにとられちゃったりして。でも、この手の作品って素直で真っ当だからこそ、観客の心に響くのかな、なんてことも思うのです。

マルタおばあさんが久しぶりに街に出て、手芸屋さんでいろんなレースを見てうっとりするでしょう?あの気持ちは本当によくわかる。私も生地屋さんに行くと、目がトロ~ンとして、この生地ならふんわりワンピース、この生地ならかっちりスカート、ってめまぐるしく「できあがりの図」が頭を占領してちょっとしたハイ状態になるんです。この勝手に沸き上がるイマジネーションほど、自分を突き動かすものはないよねえ。この作品とは似ても似つかぬスタイルの大森南朋主演「春眠り世田谷」。あれの場合は映画を作りたくて会社を辞めちゃったけど、何をするでもなく家でゴロゴロ。ただ、彼もイマジネーションは沸き上がるのよ。そして、そいつが語りかけるのよ。「オマエならできる。やるのは今しかない」って。

結局、その抑えきれぬ衝動がカタチになるのは、協力してくれる友人、応援してくれる友人がいてこそなんだよなあ。ちょっと辛気くさい話だけど(笑)。ひとりで空回りしている春眠りの大森くんに対して、マルタの周りには「アンタの夢に付き合ってやろうじゃないか」って人々が集まってくる。それは、マルタのランジェリーをステキと思っているかどうかなんて、関係ないのよ。なので、本作はひとりの老女が昔の夢を取り戻す話でありながら、人は夢を実現しようとする人に吸引され、バックアップしたくなる生き物なんだってことを示されて、嬉しくなってしまった。

色とりどりの花が咲く、スイスののどかな町の景色もとても美しい。「店を開きたい!」「○○になりたい!」なんて、抑えきれぬ気持ちを味わったことのある人はきっと堪能できると思います。皺だらけのマルタおばあちゃんがひと針ずつ縫った美しい刺繍のランジェリー。私だって、ネット通販で買いたい!