Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

アイデン&ティティ

2009-08-29 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2003年/日本 監督/田口トモロヲ
「豪華布陣で小品、ってところがいいね」

何度も言いますが、ちっぽけな人間がいじいじしている作品が好きなので、ドンピシャで楽しめました。原作:みうらじゅん、監督:田口トモロヲ、脚本:宮藤官九郎、ちょい役ベーシストに大森南朋。この布陣見たら、100点とは言わなくても、確実に6、70点は取れるだろうという心づもりで見ちゃいますよね。で、見事にその期待に応えてくれた良質の作品です。

バンドブームでいきなりデビュー曲から売れちゃったバンド、スピードウェイ。リーダーの中島は売れる曲を書け、と社長に言われるけど行き詰まり。そこへ、ロックの神様、ボブ・ディランが現れるが、なぜかその姿は中島にしか見えない…。ボブ・ディランと言えば「アヒルと鴨のコインロッカー」を思い出してしまうのですが、あの作品は、いかにもスカした雰囲気が、私は受け付けませんでした。でも、これは結構笑える。そこがいい。

顔を見せない珍妙なディランもどきがハーモニカでメッセージを伝える。ちょっと、「中島らも」っぽかったりもしますよねえ。このくすっとした笑いと、若者らしい青臭さ、そして時折流れるディランの曲のような爽やかな風。この爽やかさは、中島くんのガールフレンドを演じる麻生久美子の演技の賜物です。セリフがいかにもディランの歌詞のよう。「キミが理想を追い続ける限り、キミのことを好きでいるよ」きっと、彼女はみうらじゅんにとっての理想の女性ではないでしょうか。麻生久美子の出演映画の中でこの役、一番いいかも知れません。

主演の峯田和伸はお世辞にも演技が巧いとは言えませんが、却ってそれが凄くいいんですね。素朴でストレートなメッセージが共感を誘います。前半のいじけムードから一転、ラストのライブシーンで観客をバカども呼ばわりするくだりは、ミュージシャンの本領発揮といったところ。そして、斉藤和義の新作「COME ON!」のPVにもベーシストとして参加している大森南朋。彼の演奏シーンはスクリーンの端っこばかり。「もうちょっと、ちゃんと見せてよぉ~」ファンには何とも、心憎い演出でした。中村獅童は、やっぱはみ出し者が似合いますねえ。ドラムがマギーとか、キャスティングもGOODです。