Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

プライド

2009-09-04 | 日本映画(は行)
★★★★ 2008年/日本 監督/金子修介

「敢えて正面からぶつかった作品」


岡ひろみとお蝶婦人。北島マヤと姫川亜弓。「地味」VS「派手」の女のバトルは少女漫画の王道。読みつつ、燃える。勝者はどっちだ?この「プライド」の面白さは地味女が純粋で天才型という枠をぶちやぶっていること。地味で貧乏で、性根が悪い。そんな萌を若手有望株の満島ひかりが大熱演。

ふたりのバトルが過熱する終盤よりも、むしろ本作の見どころは始まってすぐのオペラ合戦。この小柄な体でオペラもなかろうに、と思うのですが、その堂々たる成りきりぶりが見事。声はもちろん吹き替えで、それは取り立ててあげつらうことでもないだろうと思う。オペラの歌える女優なんて、そうそういないわけだし。ふたりがオペラ歌手然として見えるその要因は、「振り付け」の妙。黒いドレスに身を包んだ満島ひかりがモーツァルト「魔笛」の「夜の女王のアリア」を歌う際、肩胛骨が激しく上下するむきだしの背中をとらえる一瞬のバックショットがあるのですが、ここは唸りました。彼女の歌の上手さはもちろん、激しさとか、したたかさも表現しているんですよね。また、あの背中を作り出せる満島ひかりも凄いと思います。吹き替えだからこそ出る恥じらいが一切ない。

惜しむらくはステファニーの演技力。彼女がもう少しうまければ、一歩抜きんでた力作になったでしょう。脇役の中では高島礼子の存在が大きい。彼女の演技は堅いですね。全体が落ち着きます。また、先生を演じる由紀さおりにしても、社長を演じるミッチーにしても、与えられたセリフは説明的でくどいものばかりですが、ゆっくりと自然に話すよう演技しています。そうそう、新山千春もしかり。そのことで漫画的チャラチャラした世界観とは一線を画している。本来、こうした成り行きで製作に至った映画は、B級的な立ち位置に自然になってしまいがちです。それはそれで悪いことでは全くなく、B級としての面白さに突っ走ってしまっても一向に構わないのですが、この「プライド」という作品は、あくまでも正統に徹して作られている。そこがとてもいいと思います。