Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

クライマーズ・ハイ

2009-09-22 | 日本映画(か行)
★★★☆ 2008年/日本 監督/原田眞人  

「ひとり残らず自分勝手」


ドラマの方が面白いという意見をたくさん聞いていたせいか、そんなにも悪くないというのが率直な印象です。クレーンを使ったカメラワーク、豪華なキャスト陣の使い方など、映画ならではスケール感は随所に感じます。

新聞社面々の行動に倫理観を持ち込みたくなる人のお気持ちもわかります。しかし、現場にいるとこんな風になってしまう、その状況はわからなくもありません。私は出版社勤務の経験があるのですが、締め切りギリギリまで粘って粘って校了を迎えた時の達成感って、ちょっとしたハイ状態。それが味わいたくて、むしろ締め切り間際まで原稿を引っ張っているのかという錯覚に陥ってしまうことすらあります。そんな彼らの心理状態はある程度理解できるのですが、一番引っかかったのは、どいつもこいつも自分のことしか考えてないということです。そして、原作以上にそう見せている演出に疑問を感じます。

右から左へとひっきりなしに動くカメラ、次から次へと飛ぶ罵声、丁々発止の腹の探り合い。画面からMAXの緊張感を出してやろうという魂胆が見え見え。しかし、際立ってくるのは、緊張感なんぞより「オレの主張を通せよ、この野郎」と息巻く人々のエゴイズムだけです。事件の大小に関わらず、日々の新聞もよくこのメンツで発行できているようなあと思わず首を傾げたくなります。作品全体の緩急で言えば、「緩」の部分に相当するのは山崎努演じる社長のシークエンスになるのかも知れません。しかし、これまたエゴイズムの権化みたいなオッサンですから、全編総エゴ祭りみたいになっていて、やりきれません。

人の不幸で大騒ぎしやがって。そう言われるのがメディアに関わる人間の宿命です。ゆえに、その苦悩がいちばん前面に出てこなければ、この現実に起きた事件を映像化する意味がありません。原田監督はスポットの当てどころを間違ったように感じます。悪役ばかりに見える強烈なキャラクターたちの内面をもっと描くべきだったのではないでしょうか。


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