Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ある愛の風景

2009-09-27 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2004年/デンマーク 監督/スサンネ・ビア

「みんな実直過ぎる」


夫としても父親としても完璧なミカエル、美しい妻のサラと可愛い2人の娘。一家は幸福そのものだった。しかし、軍人のミカエルがアフガニスタンへ派兵され、突如もたらされた訃報によってその幸せな暮らしは一変する。悲しみに暮れるサラと娘たちを支えたのは、刑務所帰りで、今までは常にトラブルの種だったミカエルの弟ヤニックだった。ようやく平穏な日々が戻りつつあった矢先、戦死したはずのミカエルが帰還する…。

とても考えさせられる良い作品だと思いますが、私には真面目すぎるという印象の方が大きかったです。

人間というのは、愚かで、弱くて、己の意志とは裏腹に誰かを裏切ったり、傷つけてしまう生き物だと思います。常に兄と比べられはみ出し者となった弟、愛する夫を亡くした哀しみにくれる妻。互いの空洞を埋め合うかのように、両者が惹かれあうのは仕方のないことであり、また極限状況の中で奇跡的に生を勝ち取った夫が精神に異常をきたしてしまうことも仕方のないことでしょう。

しかし、監督はこの物語をあくまでも倫理的に逸脱しない方向で締めくくってしまう。みんながみんな真面目すぎて、敢えて非難を承知で言うならば、面白味に欠ける。心に深く突き刺さらないラストになってしまっているように感じました。何も夫を捨てて、新しい愛に走って欲しいというわけではありません。そもそも、ここで示されている問題提議は深いです。家族のために他者を犠牲にして生き延びるということ。そのテーマに足を突っ込んだのならば、とことん泥沼の中でもがいて、あがいて、這い上がってくる(物語としての)プロセスが必要ではないでしょうか。

ただ、人間の心理を丁寧に描き出そうとする監督の手法は決して嫌いではありません。スクリーンの四隅が暗い、というのは、だからどうなのという感じがしなくもありませんが…。ともかく、新進気鋭の女性監督。他の作品も見てみようかとは思っています。