『幸せのちから』クリス・ガードナー著 楡井浩一訳
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ウィル・スミス父子主演の映画『幸せのちから』の原作本。
映画はぐりはもうひとつ感心しなかったけど、実際のクリス・ガードナー氏についてもっと知りたくて読んでみた。
えーと映画と全然違います(また)。
映画では内妻ジャッキー(役名はリンダ:タンディ・ニュートン)との関係が破綻してシングルファーザーになり、医療機器のセールスマンから証券ブローカーとして活躍するようになるまでを描いているが、原作でいうとそれはほんの一部分、後半4分の1のそのまた半分ほどに過ぎない。
原作には、ガードナー氏の生立ちから、シカゴに投資会社を設立し、南アフリカ共和国の国家資産を運用するようになるまでが描かれている。
長い話だ。
彼の生立ちはそれこそアメリカで最底辺の、そのうちでも人が想像できうる限り最悪の部類に属するような環境で始まった。
彼の母はシングルマザーだった。姉とふたりの妹がいて、それぞれ父親が違っていた。妹たちの父親は酔っ払いで、家族をしじゅう虐待した。貧困と無知と暴力の悪循環。ドキュメンタリー映画『RIZE』そのままの世界だ。いや、まだ人種差別が法制度として残されていて、女性の権利も確立されていない時代のことだ。ガードナー母子のした苦労は、今のアメリカの貧困層の人々の苦労よりももっと苦しいものだっただろう。現在を生きている我々の権利は、彼らのように、差別や貧困に負けず常に戦い続けた人々の汗と涙の上にたっているのだと、改めて気づかされる。
ガードナー氏に父がいないことは不運だったが、それ以外の面では幸運もあった。母は聡明でタフで優しく、愛情に満ちた女性だった。子どもを守るためにどんな犠牲も厭わなかった。母方の親戚はみな一家に親切にしてくれた。義父はどうしようもない男だったが、彼の親族もまた親切だった。貧しく教養もない彼らだったが、愛の力だけはよく知っていた。ガードナー氏が成功したのは、運や才能や努力のためばかりではない。家族が信じあい、助けあう愛の力があればこそ、彼は自立し、外の世界へ出て、成功を夢み、挫折に屈することなく、上昇を目指し続けることがで来たのだろうと思う。
まさにアメリカンドリームを体現したガードナー氏だが、完全無欠なヒーローでは決してない。
少年時代、非行に奔って盗みを働いたこともある。ケンカもした。ドラッグに手を出したこともある。女好きでたくさんの女性と恋をした。結婚してから不倫もした。離婚もした。父親のいない自分のように子どもに寂しい思いをさせたくなくて、男手ひとつで育てたけど、彼らには結局母親はいない。ここに書かれていない失敗もたくさんあったろうと思う。
彼が成功者らしいと思うのは、そうした失敗をほとんど反省していないところだ。開き直っているというより、失敗なんか大して気に止めてないみたいである。過ぎてしまったことは変えようがない、So what ? みたいな。
これはこれでひとつの哲学ではある。過ぎたことにばかり拘泥してもしかたがない、要はこれからどうするか、どうしたいか?ということの方がずっと大切。人は生きていて、これからも生きていかなくてはならないのだから。
かといって過去は過去とすべて割りきっているわけでもない。ガードナー氏は成功した後、ホームレス時代に宿や食事を提供してくれた教会の事業に出資し、ホームレス支援施設の設立を援助している。
あと、たぶんガードナー氏ってもともと細かいことにはあんまりくよくよしない人なんじゃないかと思う。
2歳にもならない赤ん坊(映画では5歳)をひとり抱えてホームレス生活なんか、普通に考えたらムチャクチャ不幸だ。でも本を読む限りはそんなふうにはどうも本人考えてなかったらしい。夢があって、息子がそばにいれば、なんとかなるさ。チョー楽天的。
楽観主義もひとつの才能になるとは知りませんでしたです。
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ウィル・スミス父子主演の映画『幸せのちから』の原作本。
映画はぐりはもうひとつ感心しなかったけど、実際のクリス・ガードナー氏についてもっと知りたくて読んでみた。
えーと映画と全然違います(また)。
映画では内妻ジャッキー(役名はリンダ:タンディ・ニュートン)との関係が破綻してシングルファーザーになり、医療機器のセールスマンから証券ブローカーとして活躍するようになるまでを描いているが、原作でいうとそれはほんの一部分、後半4分の1のそのまた半分ほどに過ぎない。
原作には、ガードナー氏の生立ちから、シカゴに投資会社を設立し、南アフリカ共和国の国家資産を運用するようになるまでが描かれている。
長い話だ。
彼の生立ちはそれこそアメリカで最底辺の、そのうちでも人が想像できうる限り最悪の部類に属するような環境で始まった。
彼の母はシングルマザーだった。姉とふたりの妹がいて、それぞれ父親が違っていた。妹たちの父親は酔っ払いで、家族をしじゅう虐待した。貧困と無知と暴力の悪循環。ドキュメンタリー映画『RIZE』そのままの世界だ。いや、まだ人種差別が法制度として残されていて、女性の権利も確立されていない時代のことだ。ガードナー母子のした苦労は、今のアメリカの貧困層の人々の苦労よりももっと苦しいものだっただろう。現在を生きている我々の権利は、彼らのように、差別や貧困に負けず常に戦い続けた人々の汗と涙の上にたっているのだと、改めて気づかされる。
ガードナー氏に父がいないことは不運だったが、それ以外の面では幸運もあった。母は聡明でタフで優しく、愛情に満ちた女性だった。子どもを守るためにどんな犠牲も厭わなかった。母方の親戚はみな一家に親切にしてくれた。義父はどうしようもない男だったが、彼の親族もまた親切だった。貧しく教養もない彼らだったが、愛の力だけはよく知っていた。ガードナー氏が成功したのは、運や才能や努力のためばかりではない。家族が信じあい、助けあう愛の力があればこそ、彼は自立し、外の世界へ出て、成功を夢み、挫折に屈することなく、上昇を目指し続けることがで来たのだろうと思う。
まさにアメリカンドリームを体現したガードナー氏だが、完全無欠なヒーローでは決してない。
少年時代、非行に奔って盗みを働いたこともある。ケンカもした。ドラッグに手を出したこともある。女好きでたくさんの女性と恋をした。結婚してから不倫もした。離婚もした。父親のいない自分のように子どもに寂しい思いをさせたくなくて、男手ひとつで育てたけど、彼らには結局母親はいない。ここに書かれていない失敗もたくさんあったろうと思う。
彼が成功者らしいと思うのは、そうした失敗をほとんど反省していないところだ。開き直っているというより、失敗なんか大して気に止めてないみたいである。過ぎてしまったことは変えようがない、So what ? みたいな。
これはこれでひとつの哲学ではある。過ぎたことにばかり拘泥してもしかたがない、要はこれからどうするか、どうしたいか?ということの方がずっと大切。人は生きていて、これからも生きていかなくてはならないのだから。
かといって過去は過去とすべて割りきっているわけでもない。ガードナー氏は成功した後、ホームレス時代に宿や食事を提供してくれた教会の事業に出資し、ホームレス支援施設の設立を援助している。
あと、たぶんガードナー氏ってもともと細かいことにはあんまりくよくよしない人なんじゃないかと思う。
2歳にもならない赤ん坊(映画では5歳)をひとり抱えてホームレス生活なんか、普通に考えたらムチャクチャ不幸だ。でも本を読む限りはそんなふうにはどうも本人考えてなかったらしい。夢があって、息子がそばにいれば、なんとかなるさ。チョー楽天的。
楽観主義もひとつの才能になるとは知りませんでしたです。