『夜になるまえに』
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『バスキア』でデビューし、今年のカンヌ国際映画祭では『潜水服は蝶の夢を見る』で監督賞を受賞したジュリアン・シュナーベルの前作。今作でもヴェネツィア国際映画祭で審査員賞と男優賞を獲得している。
もう7年も前になるのだねー。なんでか今まで観る機会がなかった。
これはいいですよ。スゴイですよ。なんとゆーかまったくハズしてない。
一語たりとも無駄なセリフはなく、1カットたりとも間違った映像は使われていない。パーフェクト。
シュナーベルはこれまで撮った3本が3本とも実在の人物の伝記モノなんだけど、ぐりが知る限りで伝記映画でここまで完成度高い作品をつくれる人って他にいないんじゃないかと思います。『潜水服〜』にも期待しちゃおう。
リアリズムと説得力はべつものだけど、彼の作品ではそこがまさに顕著なんだよね。全体に説明は少なくて、情緒的な、感覚的なシーンの羅列に、ときどき詩的なモノローグが挿入される。この物語の主人公は作家だから、ホントに詩を詠んだりする。言葉も映像も一見抽象的。
そして、空気の匂いや温度、風の音や肌に感じる緊張感が、鋭いリアリティをもって観ているものの身体にまっすぐに入りこんで来る映像美。
ちりちりと背筋を焦がすような性的興奮、青くさい草いきれと虫たちのがさがさした脚の感触が混じった野原の肌触り、皿に盛られたさめたむき卵の湿った冷たさ、夏の太陽に照らされた髪の毛の熱さ、鼻の奥がつーんとしてくるような恐怖感、酒とチーズの匂いと酔いに暖められたはらわたのけだるさ、身体中にまとわりつく塩からい砂のべとつき、そんなものがみんな、映像を観ているだけで、目から耳から鼻から口から毛穴からしのびこみ、直接心臓をてのひらに包んでゆさぶる。
そんなことができるなんてほんとうにすごいことだと思う。
原作は主人公でもあるキューバ出身の作家レイナルド・アレナス(ハビエル・バルデム)の自伝。
同性愛者であり作家でもあることでカストロ政権下で迫害を受け1980年にアメリカに亡命、87年にエイズを発病し、90年に自殺した。
だが映画では具体的にいつどのようにして彼が作家を志しどんな迫害があったのか、どういう経緯でHIVに感染してどんな闘病生活を送ったかといった説明はやはりない。それよりも、アレナスが自分の作品をどんなに大事にしていたか、迫害を受けたことをどう感じていたか、エイズを発病したことをどう受け止めていたかを、ひとりの当り前の人間の皮膚感覚、胸の震え、魂の叫びとして描いている。
そうした「感情」は誰にでもわかるものだからだと思う。作家の芸術精神や社会主義政権化での差別や病気の痛みは、ともすれば当事者以外には共感しにくいものだ。だから、そのインプットはすっとばして、アウトプットとしての感覚・感情の末端部分を、とにかく丁寧にキチンと描くことで、観ている人間の内面に、アレナスという人物を立ち上げようとしているのではないだろうか。
逆に、題材や社会背景の重さのようなものは直接感じられない。アレナス本人にとってゲイであることや芸術家だったこと、迫害を受けたことは他に選びようのない運命だったのだから、実際その場では物事の軽さ重さなど比較できない。だからこそ、最期の孤独のせつなさが悲しい。激動の60〜70年代を投獄までされながら生き抜いて、故郷を捨ててまで勝ち取った自由だったのに。
『バスキア』もめちゃめちゃ感動したけど、これもすごく好きだ。
アレナスの本はこれまで読んだことがないんだけど、この機会に読んでみます。
ところでアレナスは作家のクセに毎度筆記用具を他人に借りてるのがおかしかったです。写真家ならいつもカメラを持ち歩くものだし、画家ならスケッチブックは常に必携、作家なら紙とペンくらい持ってて当り前、なんてのは固定概念にすぎないのかもしれないけれど。たぶん意図した演出なんだと思う。
ジョニデのドラアグクィーンは噂に違わず色っぽかったー。すんばらしー。ヒゲ生えてんのにつけ睫毛ばっちり、ぷりんとしたおしり半分まるだし、オシャレすぎます。完璧。美しー。ステキ。出番は少なかったけど、確かにこりゃキョーレツですわ・・・。
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『バスキア』でデビューし、今年のカンヌ国際映画祭では『潜水服は蝶の夢を見る』で監督賞を受賞したジュリアン・シュナーベルの前作。今作でもヴェネツィア国際映画祭で審査員賞と男優賞を獲得している。
もう7年も前になるのだねー。なんでか今まで観る機会がなかった。
これはいいですよ。スゴイですよ。なんとゆーかまったくハズしてない。
一語たりとも無駄なセリフはなく、1カットたりとも間違った映像は使われていない。パーフェクト。
シュナーベルはこれまで撮った3本が3本とも実在の人物の伝記モノなんだけど、ぐりが知る限りで伝記映画でここまで完成度高い作品をつくれる人って他にいないんじゃないかと思います。『潜水服〜』にも期待しちゃおう。
リアリズムと説得力はべつものだけど、彼の作品ではそこがまさに顕著なんだよね。全体に説明は少なくて、情緒的な、感覚的なシーンの羅列に、ときどき詩的なモノローグが挿入される。この物語の主人公は作家だから、ホントに詩を詠んだりする。言葉も映像も一見抽象的。
そして、空気の匂いや温度、風の音や肌に感じる緊張感が、鋭いリアリティをもって観ているものの身体にまっすぐに入りこんで来る映像美。
ちりちりと背筋を焦がすような性的興奮、青くさい草いきれと虫たちのがさがさした脚の感触が混じった野原の肌触り、皿に盛られたさめたむき卵の湿った冷たさ、夏の太陽に照らされた髪の毛の熱さ、鼻の奥がつーんとしてくるような恐怖感、酒とチーズの匂いと酔いに暖められたはらわたのけだるさ、身体中にまとわりつく塩からい砂のべとつき、そんなものがみんな、映像を観ているだけで、目から耳から鼻から口から毛穴からしのびこみ、直接心臓をてのひらに包んでゆさぶる。
そんなことができるなんてほんとうにすごいことだと思う。
原作は主人公でもあるキューバ出身の作家レイナルド・アレナス(ハビエル・バルデム)の自伝。
同性愛者であり作家でもあることでカストロ政権下で迫害を受け1980年にアメリカに亡命、87年にエイズを発病し、90年に自殺した。
だが映画では具体的にいつどのようにして彼が作家を志しどんな迫害があったのか、どういう経緯でHIVに感染してどんな闘病生活を送ったかといった説明はやはりない。それよりも、アレナスが自分の作品をどんなに大事にしていたか、迫害を受けたことをどう感じていたか、エイズを発病したことをどう受け止めていたかを、ひとりの当り前の人間の皮膚感覚、胸の震え、魂の叫びとして描いている。
そうした「感情」は誰にでもわかるものだからだと思う。作家の芸術精神や社会主義政権化での差別や病気の痛みは、ともすれば当事者以外には共感しにくいものだ。だから、そのインプットはすっとばして、アウトプットとしての感覚・感情の末端部分を、とにかく丁寧にキチンと描くことで、観ている人間の内面に、アレナスという人物を立ち上げようとしているのではないだろうか。
逆に、題材や社会背景の重さのようなものは直接感じられない。アレナス本人にとってゲイであることや芸術家だったこと、迫害を受けたことは他に選びようのない運命だったのだから、実際その場では物事の軽さ重さなど比較できない。だからこそ、最期の孤独のせつなさが悲しい。激動の60〜70年代を投獄までされながら生き抜いて、故郷を捨ててまで勝ち取った自由だったのに。
『バスキア』もめちゃめちゃ感動したけど、これもすごく好きだ。
アレナスの本はこれまで読んだことがないんだけど、この機会に読んでみます。
ところでアレナスは作家のクセに毎度筆記用具を他人に借りてるのがおかしかったです。写真家ならいつもカメラを持ち歩くものだし、画家ならスケッチブックは常に必携、作家なら紙とペンくらい持ってて当り前、なんてのは固定概念にすぎないのかもしれないけれど。たぶん意図した演出なんだと思う。
ジョニデのドラアグクィーンは噂に違わず色っぽかったー。すんばらしー。ヒゲ生えてんのにつけ睫毛ばっちり、ぷりんとしたおしり半分まるだし、オシャレすぎます。完璧。美しー。ステキ。出番は少なかったけど、確かにこりゃキョーレツですわ・・・。