『パレスチナが見たい』 森沢典子著
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2002年3月に3週間パレスチナを訪れた日本人女性の手記。
著者の森沢典子氏はジャーナリストでも社会活動家でもない。2000年までは幼稚園の先生をしていた。2001年の9.11をきっかけに、かねて親交のあった広河隆一氏(『パレスチナ1948 NAKBA』)を頼ってパレスチナを訪問することを決意、単身でイスラエルに渡った。
滞在期間も長くはないし、彼女自身イスラエル・パレスチナ問題の専門家でもない。だからこれはドキュメンタリーとかルポルタージュとか、そんな大袈裟な本ではない。イスラエルとパレスチナの宗教問題や歴史、政治についてもいっさい触れていない。あくまでもふつうの一般市民の目から見た旅行記、見学記というレベルの内容にとどまっている。
だがその旅路のなんと悲惨なことか。
イスラエル軍は授業中の学校を爆撃し、救急車を襲撃している。病院に献血にきた人々の列まで砲撃する。無抵抗の一般市民を何百人も連行して拷問する。女性も子どももお年寄りも海外ジャーナリストも容赦なく殺す。生活道路が何重にも封鎖されているため、食糧や医療品など生活に必要な物資の流通が著しく滞っている。市庁舎も警察も空港もイスラエル軍にめちゃめちゃに壊されている。犠牲者たちの墓は荒らされる。農園の隣には核兵器工場が建てられ、周辺住民にははっきりと健康被害が出ている。
パレスチナで起きていることは、そのまま63年前までヨーロッパ各地のユダヤ人たちに対して行われていたこととまったく同じである。ないのはガス室くらいなものだ。両親や祖父母がナチスにされたのとまるっきり同じことを、イスラエル人がパレスチナ人にしている。
どうしてそんなことができるんだろう。
意味がわからない。
この本に書かれているのは、パレスチナで起きていること全体からすれば、ほんの一部のそのまた断片くらいのものかもしれない。
でも、彼女のようなごくふつうの、なんでもない一般の女性が一般観光客として観て来た現実だからこそ、日本にいる一般市民のキャパシティに見合うだけのレポートにまとまっているところに、この本の存在意義がある。
宗教や歴史や政治はこの際はっきりいってどうでもいい。それは、この問題を他人事にしておくための言い訳にしかならない。
人間として、あたたかい血の通った、生きた魂をもった者の道理として、こんな犯罪は決して許されるものではない、という誰もが感じるはずの思いを、パレスチナ人もイスラエル人も日本人も国境や民族を超えたすべての人が共有することに、何の条件も理由も必要ないのではないだろうか。ぐりはそう思う。
分量的にも気軽に読めるやさしい本です。文章もごく平易で、たぶん中学生くらいなら充分理解できると思う。オススメです。
関連作品:
『パラダイス・ナウ』
『ビリン・闘いの村』
『ミュンヘン』(原作:『標的は11人─モサド暗殺チームの記録』)
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2002年3月に3週間パレスチナを訪れた日本人女性の手記。
著者の森沢典子氏はジャーナリストでも社会活動家でもない。2000年までは幼稚園の先生をしていた。2001年の9.11をきっかけに、かねて親交のあった広河隆一氏(『パレスチナ1948 NAKBA』)を頼ってパレスチナを訪問することを決意、単身でイスラエルに渡った。
滞在期間も長くはないし、彼女自身イスラエル・パレスチナ問題の専門家でもない。だからこれはドキュメンタリーとかルポルタージュとか、そんな大袈裟な本ではない。イスラエルとパレスチナの宗教問題や歴史、政治についてもいっさい触れていない。あくまでもふつうの一般市民の目から見た旅行記、見学記というレベルの内容にとどまっている。
だがその旅路のなんと悲惨なことか。
イスラエル軍は授業中の学校を爆撃し、救急車を襲撃している。病院に献血にきた人々の列まで砲撃する。無抵抗の一般市民を何百人も連行して拷問する。女性も子どももお年寄りも海外ジャーナリストも容赦なく殺す。生活道路が何重にも封鎖されているため、食糧や医療品など生活に必要な物資の流通が著しく滞っている。市庁舎も警察も空港もイスラエル軍にめちゃめちゃに壊されている。犠牲者たちの墓は荒らされる。農園の隣には核兵器工場が建てられ、周辺住民にははっきりと健康被害が出ている。
パレスチナで起きていることは、そのまま63年前までヨーロッパ各地のユダヤ人たちに対して行われていたこととまったく同じである。ないのはガス室くらいなものだ。両親や祖父母がナチスにされたのとまるっきり同じことを、イスラエル人がパレスチナ人にしている。
どうしてそんなことができるんだろう。
意味がわからない。
この本に書かれているのは、パレスチナで起きていること全体からすれば、ほんの一部のそのまた断片くらいのものかもしれない。
でも、彼女のようなごくふつうの、なんでもない一般の女性が一般観光客として観て来た現実だからこそ、日本にいる一般市民のキャパシティに見合うだけのレポートにまとまっているところに、この本の存在意義がある。
宗教や歴史や政治はこの際はっきりいってどうでもいい。それは、この問題を他人事にしておくための言い訳にしかならない。
人間として、あたたかい血の通った、生きた魂をもった者の道理として、こんな犯罪は決して許されるものではない、という誰もが感じるはずの思いを、パレスチナ人もイスラエル人も日本人も国境や民族を超えたすべての人が共有することに、何の条件も理由も必要ないのではないだろうか。ぐりはそう思う。
分量的にも気軽に読めるやさしい本です。文章もごく平易で、たぶん中学生くらいなら充分理解できると思う。オススメです。
関連作品:
『パラダイス・ナウ』
『ビリン・闘いの村』
『ミュンヘン』(原作:『標的は11人─モサド暗殺チームの記録』)