落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

幸せってなんだっけ

2009年04月27日 | diary
こないだ町山智浩氏のコラム集『キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 超大国の悪夢と夢』を読んだんですがー。

内容は大体がブログ「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」かmixiに書かれるか、ラジオ番組やポッドキャストで語ったネタと重複しているので、とくに新鮮な項目はそんなになかった。ってか読んで改めて「あたしってけっこう町山さんファンなんだなあ」って気づいたくらいで。自分ではそんなつもりなかったけど、そういえば番組もブログも定期的にチェックしてるもんね。雑誌は買わないし、単行本も全部図書館で借りてるけど(爆)。そんなのファンじゃないか。すいません。

そんななかで目についたのが「レン・フェア」の話。
「レン・フェア」とはルネッサンス・フェア、要は中世ヨーロッパのコスプレをしてバロック音楽を演奏したり、ダンスや演劇を上演したり、馬上競技をして見せたりして全米を巡業する、いわば旅芸人一座(って表現も古過ぎるな)のようなもの。
「レン・フェア」のクルーにはべつに本業を持って趣味でフェアに参加している人もいるが、完全に中世ヨーロッパ人になりきってフェアの中だけで暮らしている人もいるらしい。日本的にたとえていうと、お侍さんの格好をして衣食住から言葉遣いまで完全に江戸時代の通りに再現して暮してるってことか?
そんなの無理だろう、と思いきや、アメリカではなんとなくどうにかなってしまうらしい。未だにヒッピーがいる国だからね(レン・フェアが生まれたのは1960年代、ヒッピー全盛の時代だそうだ)。
まあたぶん、そーゆー人ってちょーディープな中世ヨーロッパフリークなんでしょー。つまりオタクってことだよね。好きな世界にどっぷり浸って暮せるって幸せなんだろーな。

話は全然変わりますが。
先日、うちの大家さん(隣に住んでる)に「連休はどうするのー?」と訊かれて、素直に「××といっしょに○○に出かけます」と答えたところ、「あら、お幸せね」と羨ましそうにいわれた。
そのときは「ええ、まあ」と流したのだが、はて?と後になって気になりだした。気になりだすと止まらない。
休日にどこかにいっしょに出かける相手がいる、とゆーのはそれだけで「幸せ」なことなのだろうか?「幸せ」なんてそんなささやかなものなんだよ、とかなんとかいうのはいかにももっともらしいまとめ方だけど、そんなもの結局は無内容な一般論でしかない。
実際のぐりにも、そのいっしょに出かける予定の相手にも現実的な問題は山積み状態で、とりあえずは休みくらいは気晴らししないと、と半ば逃避で予定を立てた。ぶっちゃけ、われわれの「幸せ」には泣きたくなるほどの長さの但書きがしっかりとくっついている。だとしても、われわれはかなり大雑把にかつ強引にいえばだいたい「幸せ」なんだろう。そう思わないとほんとに泣きたくなるから。

じゃあ今まで「幸せ」なんてものはまったく経験なかったか、といわれればそんなことはない。何の留保もなく「わたしは幸せです」といえたときも何度もあった。
そのうちのいちばんの頂点は、間違いなく学生時代、ノー天気に恋愛なんかしていたころだろう。
一年の浪人生活を経て東京の大学に入学したばかりのころ、「これからは本格的に思いっきり恋愛をしてやろう」と決心して、サークルで知りあったある男の子にロックオンした。無口でおとなしそうな可愛い子だった。専門課程は違うけど、小さな大学だからアプローチするのにいくらでも口実はつくれる。何とかどうにかしてうまく仲良くなるところまでこぎつけた。
仲良くなった後のすったもんだについては、お読みいただいても楽しいお話ではないので今回は割愛する(爆)。でも十年以上を経た今思い出しても、寝ても覚めてもその子のことを考えていた日々の楽しさは、まず二度と味わえないだろうなというくらい強烈だった。その男の子自体は客観的にみればとくに大した男でもなかったんだけど(本当)、自分で「恋愛してやるぞ!」とわざとテンションをひっぱりあげて浮かれていたときの楽しさったらなかった。だって受験が終わって親元から離れて東京で一人暮らし、恋愛するでしょ!するしかないでしょ!今でしょ!みたいなノリだったんだよね。われながら天晴れな計算高さです。お陰様で楽しゅうございました。

でもその「幸せ」を今、もう一度味わわせてくれると誰かが薦めてくれたとしても、たぶんぐりの答えは「ノー」だと思う。
あれはあのときだったから楽しかったんであって、今、同じことをやったとしても絶対に楽しくないことがわかっているから。恋愛の楽しさだってあれはあれなりに疲れるし、体力も消耗する。もう無理です。
余談だが、例の男の子はいつも水色のミレのバックパックを担いでいて、ぐりはそのリュックを目印に毎日彼の姿を探していたのだが、この癖は別れたあともなかなか抜けなくて難儀した。実をいうと、未だに水色のリュックを背負った男の子を見かけると、反射的にびくっとしてしまう。いわゆるパブロフ状態である。今となってはあの子ももう「男の子」じゃないし、もう一度会いたいなんて夢にも思わないのに(つかむしろ絶対会いたくない)。
困ったもんです。

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