落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

レンタルまつり 南部系

2006年03月26日 | movie
『楽園をください』
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1861年に勃発した南北戦争を舞台に、北軍から故郷を守るために戦った青年たちの苛酷な青春を描いた歴史ドラマ。1991年の李安(アン・リー)監督作品。
南北戦争を題材にした映画や小説はいくつもあるし、歴史の授業で習った最低限の知識はあるけど、アメリカの短い歴史のなかでも一種タブー視されている内戦の実情については、ぐりはまったくなにも知らない。『風と共に去りぬ』を最後にTVで観たのはいくつのときだったか。『若草物語』を読んだのは小学生のときだ。
この映画では、南北戦争の政治的意義や歴史的背景にはほとんど触れることなく、ただアメリカ史上最悪の時代を生きた若者たちの苦悩を、ただただ淡々とクールに描いている。戦争の正義をあえて語らず、そこに置かれた人々の人生に起きた悲劇を穏やかに描くことで、人と人が争うことの虚しさや、そんななかでも力強く前向きに生きる生命の輝きが、しっかりとした立体感をもって表現されている。

それにしても観ていて自分の知識のなさにこれほどいらつく映画もそうそうない。ホントに説明がまったくないから。
それでも常識として、この戦争が奴隷制廃止をめぐって南北が対立して起きたことだけは知っている。だから、奴隷制存続を主張して抵抗した南軍に黒人戦士がいたり、白人同士の間にも民族差別が横行する南軍ゲリラの人間関係には、最初かなり面喰らいました。こんなことがほんとうにあったのか?と。
けど観てるうちに、この物語ではそうした歴史と矛盾する細部でもって、暴力と諍いの無意味さ、愚かさを伝えようとしていることがわかってくる。ラスト近く、伸ばしていた髪を切りヒゲを落とす主人公(トビー・マグワイア)と老農場主とのやりとりがまさに圧巻だ。このひとことふたことの台詞に、全てが象徴されているようにぐりは感じた。
原作があるようなので、そのうち読んでみようと思います。

戦争映画なので暴力的なシーンも確かに多いけど、台詞は非常に少なく展開も静か。主人公があくまで寡黙に無表情なまま、周囲の求める“南部男”たろうとする姿が却って痛々しい。
李安やっぱ今作でも地味です。この地味さが妙に台湾っぽく感じるのはぐりだけですか?他の李安作品も、非アジア圏を舞台にして非アジア人を描いているのに、いつもトーンがどことなく東洋っぽいような気がする。
でもそうした客観的視点からしか語れないドラマもある。西欧社会の抱えたどうしようもない歪み、影、悲惨さ。それら当事者には直視しがたいテーマを、非西欧人だからこそ、ことの善悪や正誤をさておいて、ニュートラルな語り口によってひもとくことができるのかもしれない。
若い子向けの教育的映画としても文芸映画としてもいい作品だと思います。ただちょっと長かったのが難点といえば難点でした。

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