落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

わが魂の支配者

2010年03月05日 | movie
『インビクタス 負けざる者たち』

1990年、27年間収監されていたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)が釈放され、全民族が参加した初の総選挙で大統領に就任。
直後の95年には南アフリカでラグビーのワールドカップが予定されていたが、代表チームのスプリングボックはアパルトヘイト時代の象徴ととらえられ、国民にはまったく人気がなかった。
肌の色を越えた融和政策によって国の発展を目指したいマンデラはキャプテンのピナール(マット・デイモン)を激励、国を挙げてのワールドカップキャンペーンを画策する。

今年、南アフリカでやりますよね。ワールドカップ。サッカーの。
まあだからその話題をあてこんでの企画映画なんだと思いますがー。でも。クリント・イーストウッド、これでよろしーのでしょーか?
ええ話やと思うんですよ。けどなんか薄いんですよ。ストーリーが。観てて「あ、そこもーちょっと観たいな」「えーと、そこはどーなってんのかな?」なんて感じる部分が全部スル―で。ディテールがないんだよね。思いっきりどーでもよさげなの。内面描写とかもちょーおざなりで。せめてアパルトヘイトの何たるかとか、南アフリカの風土とか、そーゆーとこをちゃんと表現してほしかった。
『グラン・トリノ』とか『チェンジリング』に比べたらだいぶ投げてる感否めず。これがアカデミー賞候補(主演男優賞・助演男優賞)って・・・マジですか。今週末授賞式なんだよねー。

ただ、ストーリーと直接関係のない警備チームをしつこく絡めたりして、国民がだんだん一体になってく過程の表現なんかはいいなあとは思いましたです。
しかし元はええ話やのに、こんなんでええんですかいねえ?しつこいよーですがー。いっしょに観た友だちなんがくうくう寝てましたよ・・・?

森の星

2010年03月05日 | movie
『アバター』(3D吹替え版)

22世紀、パンドラという惑星の鉱物資源開発に乗り出した地球人たち。
だがその鉱源地帯はナヴィという強靭な肉体をもった現地民族が支配していた。
事故死した双子の兄の代わりにナヴィへの潜行作戦に参加した元海兵隊員で下肢不随の後遺症を持つジェイク(サム・ワーシントン)の任務は、合成したナヴィの肉体を操り、ナヴィの社会に潜入することだったのだが・・・。

やっと観たよ・・・。
もちろん3Dで観ましたん。それもIMAXシアターで。おほほ。高かったわ。
でもそれだけの価値はあるねー。映像はほんとすごいです。技術的には多少、んー、まだこれが限界かー?って部分もなきにしもあらずですが(そーゆーことをいちーち考えちゃうのが職業病)、それでもやっぱすごいです。だって桁が違いますわよ。解像度の。ぶっちゃけ、肉眼で見る自分の視界よりクリアなんじゃ?ってくらいクッキリ!ハッキリ!しちゃってます。IMAXで3D映画観たのはかなりひさびさ(10年以上ぶりぐらい)だったので、それにはやっぱしビビりましたです。今週末公開の『アリス・イン・ワンダーランド』も3Dで観たいわあ。

って映像のことしか書いてませんがー。
いやー。内容、なかったねー。話めっちゃ薄いですもん。ストーリーそのものは過去のありとあらゆるハリウッド映画でくさるほど観飽きた、手垢にまみれきってべちょべちょの古典だし、世界観は手塚治虫とかジブリ映画とか、世界中の男の子が大好きなジャパニメーションSFのそれとそっくり。新鮮味もなーんもありゃしません。
登場人物も少ないし、ディテールとか奥行きとかもぜんぜんない。だから誰にもなかなか感情移入できない。展開がかなり強引なので、けっこうちょくちょく「ええ?」「そんなんあり?」「(失笑)」なパートもひっかかる。よーするに大味なのだ。
せめて主人公の内面の葛藤をもうちょっと丁寧に表現するとかさあ、なんかしてほしいよ。あれじゃタメもなんもないでしょーが。大体、問題の鉱物が何なのかまったく説明ないし。
あとナヴィの生活風景とか社会様式ももっときちんと描写してくれないと、登場人物たちの彼らをリスペクトしたい気持ちになかなか馴染んでいけない。ただただ、大自然って美しー!すばらしー!サイコー!とか叫ぶだけじゃあねえ・・・だってCGだしさ・・・。
まーぐりがいちばん納得いかんかったのはあのオチですけどね。ぐりが観た劇場にも身障者の観客がいたけど、当事者から観たらあのオチはどーなんだろ??

けど映像はとにかく綺麗なので、ちょっとお高いライドアトラクションだと思えば充分楽しいです。おもしろかったです。これで座席が画面に合わせて動いたりしたら完璧ね。なのでこれから観られるご予定の方には是非3Dで、出来たらIMAXでのご鑑賞をお薦めしますです。って公開されて2ヶ月以上経ってんのに、今さら何いってんですかね~。
ただ、3Dだと字幕が結構きつい(技術的な問題で)。なんだけど吹替え版の訳がガッチガチで・・・センスとか情緒とかいっさいない。なんだかなあー。普段吹替え版て観ないけど、なんじゃこりゃ~?こんなんでええの~?って感じでした・・・。

DISPOSABLE PEOPLE

2010年03月03日 | book
『グローバル経済と現代奴隷制』 ケビン・ベイルズ著 大和田英子訳

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ぐりは某NPOでボランティアをちょろーっとやっておるのですが。
そこの活動は「性的搾取を目的とする人身取引と戦う」こと。
でもこの話をするとたいていの人は“人身取引”って言葉がもうわからない。人身売買ならわかるんだけど。
人身売買はなんとなくみんな知ってるんだよね。新聞報道なんかでも人身売買って言葉はちょいちょい見かける。

実は今は人身売買そのものはあんまり行われていない。なんでかっつーと違法だから。昔は合法だったから、みなさん堂々と「売買」しておられたわけです。
それが違法になった。国際法上、違法です。地球上のどこいったって、違法。
けど需要はある。だから人を売り買いすることそのものはなかなかやめられない。なくならない。
つーわけで皆様は新しい方法を考える。「売買」じゃなくて「取引」ならいーじゃん、と。
具体的にどーゆーことか?っつーと、「売買」ならその人そのものに値札をつけて売り買いする。売る方は品質管理に責任を負うし、買う方は買った人間に対する責任を負う。
「取引」の場合は、その人そのものには値札はつかない。つけられないから。どこにつくか?っつーと、その人の持つ労働力につく。やり取りされる料金には仲介料とか手数料とか紹介料とか契約料とか保険料とか借金とか積立貯金とか、なんかとにかくべつの名目をつければいい。
んで労働力として価値がなくなれば「取引」は終了、存在そのものが必要なくなる。だってどーせ違法なんだから、売り物に何が起こったって誰も責任は問われない。しぼれるだけしぼりとって、あとは捨てる。放り出す。
つまりーよーするに、売買する方はラクになった。売買される方はよけいしんどなったっちゅうワケでございます。

著者のケビン・ベイルズはNGOフリー・ザ・スレイブズ代表。活動家です。
この本を書くにあたって、タイ・モーリタニア・ブラジル・パキスタン・インドを旅して各地の奴隷制を調査した。
世の多くの人々は、人身売買が違法となった現代に奴隷制が存在しているなどということはにわかに信じられないだろう。
だが、世界中の各地にそれは厳然と存在している。ベイルズが調査した5ヶ国だけではもちろんない。今年地震で大きなニュースになっているハイチの報道ではちょくちょく取り上げられているけど、ハイチの子どもが売買されているのはかなり以前から有名だった。11歳くらいの女の子が3~5万円で購入できる。家事労働に酷使しよーと性玩具にしよーと臓器を取り出して残りを捨てよ―と、買った方は自由にできる。買うのはもちろん金持ちで、外国人も多い。
いわゆる先進国にだってごく当り前に人身売買は存在している。欧米各国には旧植民地のアフリカや東南アジア・中南米から連れて来られて売り買いされている奴隷が数多くいる。東欧の貧しい国から豊かな西欧に売られてくる奴隷も多い。家事や子守をさせられる奴隷もいれば、売春をさせられる奴隷もいる。工場や農場、ゴミ処理施設や建設現場で死ぬまでこき使われる奴隷もいる。彼らは監禁され、脅迫や虐待を受け、極限まで人格を蹂躙される。過去の話ではない。まさに今現在の話である。
奴隷を国境を越えて移動させるのにも専門の業者がいる。書類を整えたり出入国審査官を買収したりしてくれる。この手の業者も世界中にいる。やりたい放題でございます。
日本にだって人身売買はある。外国人だけではない、日本人も売買されている。

そしてそうして売買された奴隷の労働力の上に、われわれの暮らす社会は成り立っている。
われわれが手にしているモノ─電化製品、家具、衣料品、文具、食料品、医薬品、嗜好品、電子機器、自動車etc.─のいったいどれが、奴隷と関わりなく、完全に正当な取引によってつくられているといえるだろうか。
だから、今の社会を生きる誰にでも、この問題を知らなくてはならない義務がある。
そして知ったからには、自分の生活をもう一度、冷静に見つめなおす義務もまた、あるのではないだろうか。

ケビン・ベイルズは近々また新しい本を出すらしい。てかもー出てんのか?邦訳が出るんかな?
出たら読みたいと思いますー。


関連レビュー:
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『人身売買をなくすために―受入大国日本の課題』 JNATIP編
『現代の奴隷制―タイの売春宿へ人身売買されるビルマの女性たち』 アジアウォッチ/ヒューマンライツウォッチ/女性の権利プロジェクト著
『アジア「年金老人」買春ツアー 国境なき「性市場」』 羽田令子著
『幼い娼婦だった私へ』 ソマリー・マム著
『子どものねだん―バンコク児童売春地獄の四年間』 マリー=フランス・ボッツ著
『アジアの子ども買春と日本』 アジアの児童買春阻止を訴える会(カスパル)編
『少女売買 インドに売られたネパールの少女たち』 長谷川まり子著