ふくい、Tokyo、ヒロシマ、百島

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

紫式部の末裔

2013年05月12日 | 千伝。
ドナルド・キーンさんの言葉は、日本人に勇気を与えてくれます。

昨年、日本に帰化したドナルド・キーンさん 九十歳。

日本人以上に、日本人の情感を分かりやすく具体的に説明してくださいました。

今回の福井での講演会・・地元に関わる橘曙覧、近松門左衛門の「曽根崎心中」も取り上げていましたが、個人的には「源氏物語」との出会い話が印象深いものとなりました。

ドナルド・キーンさん曰く、受験のための古文の文法を学ぶより、現代訳の「源氏物語」を読む教育のほうが、余程人生が豊かになるとおっしゃっていました。

彼が、初めて日本と接したのは、学生時代に読んだ英訳された「源氏物語」だったそうです。

「源氏物語」は、世界最高レベルの長編恋愛小説だそうです。

作者の紫式部が描く光源氏の情感・・千年の歳月を超えて、非常に美しく、ほんとうに驚かされたようです。

例えば、日記が、日記文学へと昇華するのは、日本人独特の情感だと説明されていました。

第二次世界大戦中・・日本は、敵国の言語、英語を使うのも学ぶのも禁止しました。

一方のアメリカは、徹底的に日本語を研究しました。

日本に興味を抱いていた若きドナルド・キーンさんは、アメリカ海軍の日本語学校に入りました。

戦線で日本語の通訳官も勤めるようにもなります。

そして、戦場では、多くの日本兵士が残した日記を読むことになったそうです。

(アメリカの軍隊では、兵士が戦場での日記を書くことは禁じられています。)

千年昔の恋文ひとつとっても、日本人の情感の素晴らしさを源氏物語は、伝えているとのこと。

・・恋人に、文をしたためるのにも、どんな紙をつかおうかと迷う情感。

・・文を書くのにも、墨の濃淡さえ考える情感。

・・文に、どんな花の芳しい香りを添えるか惑う情感。

圧倒的に美しい情感が、千年の時を超えて、胸の奥まで迫ってきたと言います。

越前市にある紫式部公園です。



平安朝の庭園を再現しています。

カップルが、多いです。



父の藤原為時が越前国司として赴任した時、紫式部も、約二年間、ここで娘時代を暮らしました。

向こう側に見える越前富士(日野山)・・紫式部が毎日見たであろう山は、千年昔も今も変わりなく座しています。



山を眺めて、感じたこと・・ドナルド・キーンさんは、紫式部の末裔かもしれません。