百島百話 メルヘンと禅 百会倶楽部 百々物語

100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

安部 公房 (1924~1993)

2017年06月29日 | 空木宝剣
梅雨の空 蛇の目蛇の道 傘の道

団塊が30代半ばの頃だったろうか?
雨の中、文具店に立ち寄って、帰ろうとした際、傘立てを見ると、 新調したばかりの傘がない。
代わりに少し似た、色あせた傘が残されていた。
道路に目をやると、お孫さんと一緒に、我が傘をさして去っていく女性を発見。
追いついて「すみません、傘を間違えられていませんか?」と尋ねると「えっ?どうしてこの傘が、あなたの傘と言えるのですか?」と、安部公房の小説もどきの受け答え。
おもむろに、その女性が手にする傘と同じ柄の袋をポケットから出すと、態度が一変して「ごめんなさい、申し訳ありません」と平身低頭の体だった。
もしも、傘袋がなかったら、防犯カメラもない時代、不毛のやり取りの末、お人好しが馬鹿をみたのだろうか?
あれから30年以上。
もちろんその傘は、今では存在しないし、その後、どこかに置き忘れたか、古くなったのでお釈迦にしたのかさえ記憶にない。
そして、某文具店さえヒャッキンに圧されて閉店。
もしも、お孫さん連れの女性が、傘を間違えてなかったら、
全ては忘却の雨の中。
存在は記憶の中にあり、記憶はアクシデントによって刻まれる。
(存在と記憶)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿