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知らせを受けたオソルは、最初、躊躇しました。
もう関係無いとハインに言いました。ハインは言いました。
「ソンギョルに罪は無い。彼も会長の犠牲になった一人だ。それが自らを傷つける理由だ。虐待による潔癖症の子がいる。そしてその子が頼れるのはお前だけだ。お前を待ってる。」
オソルは駆け出しました。
オソルの前にチャ会長が立ちはだかりました。
「ここに何の用だ。お前の来るところじゃない。」
いいえ、会長こそ来るべきじゃない・・・と、オソルは臆せずチャ会長を真っ直ぐに見つめて言いました。
「唯一の孫を追い詰め、罪のない人たちを死に追いやった。全て会長のせい。もう逃げたり避けたりしません。怖くても隠れません。恨みながら後悔することはしません。後悔するのは私じゃなく、会長の方です。苦しむべき人は社長じゃなく、私の前にいるあなたです。」
チャ会長は、怒りとショックで言葉が出ませんでした。
ソンギョルはたくさんのチューブでつながれていました。かなりの重傷だったようです。
待ったでしょ、ごめんね。目を開けて。何してるの?・・・。
どれほど会いたかったか、どれだけ恋しかったか、会いたくないと言ったのは嘘よ・・・。
泣きながらオソルはソンギョルに話しかけました。
それから、毎日オソルはお見舞いに行きました。
ソンギョルの意識が戻るまでは・・・と。
そして、ある日、やっとソンギョルが目を開けました。
クォン秘書から会社が自分の手から離れたと聞いたのかな?潰れたのか、AGグループに吸収されたのかは不明です。
全てを失ったとソンギョルは思ったでしょう。
そんな時、母からオソルが毎日見舞いに来ていたと聞かされました。
絶望の中の唯一の光だと感じたでしょうね。
「そろそろ来る時間よ。」
と、母が言ったので、ソンギョルはそわそわしながら待ちました。
でも、その日はとうとう来ませんでした。
出かける間際に、父とハインがソンギョルの意識が戻ったらしいと話すのを聞いてしまったのです。
父はソンギョルの人となりを気に入っているのは事実でした。
でも、結ばれない縁だと考えていました。それを知ったら、オソルは見舞いにはいけませんでした。
ある日、ソンギョルの姿が病院から消えました。もう退院しても良いという診断は下っていたようですが。
ソンギョルが行ったのは、チャ会長のところでした。
こうなった今、もうチャ会長もオソルの家族への手出しは止めるだろうと期待していたソンギョル。
チャ会長は、AGグループに入るなら、願いの一つでも聞いてやる・・・と言いました。
やっぱりチャ会長は変わらない・・・とソンギョルは思いました。
6年前の事故を、あくまで自分に責任は無いと言い張るチャ会長。ソンギョルが代わりに謝罪しようと思って現場を訪ねたと聞いても、その考えは変わりません。
「私は約束した期日を守り、法的な手続きに従い、それに見合う補償もした。」
その基準を決めたのは、お祖父さんだろ・・・とソンギョル。
「遅すぎるけど、被害者を訪ねて謝罪し許しを請うんだ。あなたの孫としての最後のお願いだ。」
一礼して、ソンギョルは背を向けました。
チャ会長が何度も呼んでも振り向くことはありませんでした。
ソンギョルは、テコンドー協会の役員に、懲戒委員会の追加名簿にある人物は全員AGグループの人ばかりだという資料を提出しました。
判断に恣意的なものが含まれていると示したのです。
でも、協会側としても不正の事実を指摘されたようなものですから、そう易々と判断を覆すこともできないかもしれません。
ソンギョルが建物を出たところで、オソルとばったり。
オソルも資料を提出に来たのです。
なぜここに?・・・とオソル。
ただ、傍観できなくて・・・とソンギョル。
そして、ソンギョルはオソルに謝りました。すまない、僕のために・・・と。
「ありがとう。君と一緒に過ごした時間は僕にとって奇跡のような時間だった。」
オソルは手を差し出しました。
「最後の挨拶をしてなかったよね。」
でも、ソンギョルは手を出せませんでした。まだ深い傷が残っていたのです。
「お元気で。」
オソルは背を向けました。