偶然見つけたお知らせでこの番組を知りました。即、予約
NHKBSプレミアムでの放送でした。
残念ながら、再放送の予定は、今のところありません。
小泉今日子さんのナレーションで始まりました。
ヒットの秘密を5つ挙げています。
まずは、以前記事に挙げた『スタジオドラゴン』の密着取材から。
「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」の記事は、こちらとこちらから。
韓国最大手の制作会社です。所属するプロデューサーは約100人、年間30シリーズを視聴者に届けているそうです。
企画開発統括を手掛けるイ・ギヒョクssiが登場です。「アナザーストーリーズ~」でもインタビューに答えてくださってましたね。
この会社が手掛ける全ての作品の企画開発の責任者なんだとか。
彼の一日の仕事にカメラが密着。ヒットの秘密を探りました。
そして導き出した秘密の1つ目が
≪独特の企画開発システム≫
スタジオドラゴンでは、イ・ギヒョクssiをトップとして、その下に2人の局長、その下に30代~40代の9人のチーフプロデューサーがいます。9人のチーフプロデューサーはそれぞれに得意とするジャンルが違うので、バリエーション豊かな作品が提案されます。
1人のチーフプロデューサーの下には、7人ほどのプロデューサーがついています。
プロデューサーには特別な環境が整えられています。
スタジオドラゴンでは、国内の指折りの監督や脚本家約200人と契約し、事前に契約金を支払っているのです。先行投資ということです。
だから、プロデューサーたちは監督や脚本家と自由に企画を練る事が出来るのです。
そこで開発した企画は、まずチーフプロデューサーに挙げられます。
チーフプロデューサーは、多くの提案の中から厳選した企画をイ・ギヒョクssiと局長に提出し、判断を仰ぐわけです。
企画方法も様々で。
脚本家が先にアイデアを出してプロデューサーと一緒に企画する作品もあれば、脚本家の草稿をもとに一緒に完成させる場合もあるとか。最近では、原作を重要視することが多くなってきたので、原作をベースにする場合もあるとか。
そして構想期間が長い作品もあって、3年から5年かかる場合もあるとチーフプロデューサーが話してくれました。
膨大な企画の中から作品化されるのはごくわずか。
だから、監督や脚本家への先行投資の内、還元されるのは僅かと思えます。
しかし、イ・ギヒョクssiは言います。
「私たちの会社の資産は無形です。脚本家や監督が私たちの資産です。いい環境でいい作品が生まれるよう、事前投資するのです。クリエイターに投資する額より将来得る収益の方がはるかに大きいのです。」
企画をドラマ化するかどうかのイ・ギヒョクssiたちの審議は、かなり厳しいものです。
イ・ギヒョクssi、2人のCEO、2人の局長、そして9人のチーフプロデューサーの14人がメンバーです。
判断の材料は本番と同じレベルに仕上げられた4話の脚本。
企画段階にもかかわらず、膨大な費用と時間をかけて作られたモノです。
参加者は事前に脚本を読み込んで、採点しています。
テーマやキャラクター、時代性や構成、セリフ、収益性について評価するのです。
提出された作品について、遠慮の無い指摘、アドバイス等が交わされます。
多くの人によっていろんな方向から議論されたうえで、一つの作品が生まれているのですね。
2つ目の秘密は
≪制作スタジオシステム≫
日本には前例のないビジネスモデルです。
以前、制作会社は放送局の発注に応じてドラマ作品を納品するだけで、作品の二次展開も、放送局が行っていたそうです。下請け会社と言う立ち位置です。
作品の権利は放送局が持っていると言う事です。
これはおそらく日本も同じなんじゃないでしょうかね・・・詳しくは知りませんが
これでは作品の質的向上を求められないと、スタジオドラゴンは親会社から独立。株式上場しました。
それによって、韓国初の制作スタジオと言うビジネスモデルを取り入れたのです。
放送局と制作会社の立場を逆転させるシステムです。
ドラマの企画制作は制作会社が行い、完成したドラマを放送局に販売。当然、作品の権利は制作会社が持ち、二次販売等のビジネス展開も制作会社が行うのです。
制作会社は様々な方法で収益を上げられるようになりました。
「ドラマ全体の責任を負うのが制作スタジオなんです。」
と、イ・ギヒョクssiは言いました。
この制作力に目を付けた配信会社Netflixが株を取得しました。
戦略的パートナーシップ契約を締結したのです。
資金力を挙げ、売り上げを伸ばす恰好のチャンスを掴んだということですね。
豊富な資金力は、作品の質を上げるのにも役立っています。
その一つが、今年総工費200億円をかけて完成したバーチャルスタジオです。
3つ目の秘密は
≪社会的メッセージを打ち出す≫
巨匠ノ・ヒギョン作家が脚本に込めた思いを語ってくれました。
済州島を舞台にした「私たちのブルース」。高い評価を得た作品です。
ソウルの様に都会で生きる上流階級の人々ではなく、今も“親戚文化”の残る済州島の人々をえがきたかったと言いました。
プロデューサーと半年にも渡って話し合ったのは、どんな社会的メッセージを込めるかということ。
そして「韓国の庶民文化を上手く表現すること」を目標としたのです。
「人間らしさとは余裕のある者の品位ではなく、困窮者の勇気だ」と言う事を描こうと。
「物語を創作するのではなく、人々や世の中をじっと観察すること。人が何に感動し悲しむかを観察することが脚本家には一番大事だと思います。」
と、ノ・ヒギョン作家が言いました。
ドラマというのは、以前ただの暇つぶしだったが、今は学問の世界で扱うような社会問題を描く事が求められています・・・と。
「私が誰の物語を書くとしても、社会的なメッセージがあると思います。」
・・・と。
かつては、韓国も日本と同じように国内市場がメインでした。
成長の切っ掛けは、「冬ソナ」。やっぱりそーですよね
まだケーブルTVでドラマが制作されていなかった時代です。
「冬ソナ」が日本で大ヒットを記録したことで、ドラマ制作を担っていた地上波の現場を大きく変えたそうです。
ドラマが海外で稼げるビジネスになると分かったからです。多くの作品が制作されるようになりました。
その後、ケーブルテレビ局が多く誕生し地上波とは異なる作品が制作されました。規制の多い地上波では作れないような多様な作品が登場したのです。
2017年からは、放送広告市場占有率でケーブル等の非地上波チャンネルが地上波チャンネルを超えました。
次に訪れたのが、動画配信サービスの普及です。
競争が世界に広がったと言う意味でもあります。
ますます作品の質が問われるようになりました。競争の激化ですね。
ここで現れた4つ目の秘密は
≪ウェブトゥーンに“肉”をつける≫
『STUDIO n』という会社が紹介されました。
この会社は、NAVERのウェブトゥーン部門が設立した会社です。まだ小さな会社ですが、企画から主導する制作スタジオです。
親会社が持つ膨大なウェブトゥーン作品の中から自由にチョイスしてドラマ化することができるようで。
普通の脚本家は、制作可能かどうかを考えて書くのでやはり想像には限界があるが、ウェブトゥーンはそうではありません。
そして何より大きいのが、作品の権利を親会社とSTUDIO nが持っているということ。原作者が映像化権利を会社に渡して全て任せているということです。
よって、ドラマ化するにあたってストーリー等の変更は自由なのです。
この会社にある特別な制度も発展の上で大きな要因となっているのが、秘密の5つ目。
≪SUPER PASS≫という制度がそれ。
映像化を決める会議において、映像化するか否かは、原則、多数決で決めます。
しかし、提案者が≪SUPER PASS≫を使えば、無条件で採択されるのです。
絶対に自信があると言う強い意思表示だからです。
これまで2回だけ、その制度が使われたそうです。
1度目は2020年のホラードラマ。そしてもう1つがチェ・ウシクssi主演の「その年、私たちは」だそうです。
提案者は、過去の実績や年齢などは一切考慮されないようですね。
会社とすると、ある意味チャレンジですよね。
「その年、私たちは」も、入社2年目の若いプロデューサーと、TVドラマが初めての脚本家、そしてデビュー作となった監督と言う組み合わせだったそうです。
それでも、スーパーパスが使われた以上、会社は信頼して最適なキャストや配信等の支援をしたわけです。
作品がヒットしたことで、会社とスタッフの間での信頼関係がより一層深まるわけですね。
ちなみに、今年、3回目の≪SUPER PASS≫が使われたそうです。
既に映像化が始まっているそうです。
何のドラマなのか、楽しみです。
地上波放送局も頑張っているようです。
SBSがドラマ部門を独立させました。制作スタジオ方式をとったようですね。
既に成果もあげているようです。
今現在、日本国内のドラマ制作がどのような方式なのか知りませんが、韓国のドラマ制作が国内だけじゃなく、最初から世界を目指していることが躍進の大きな原動力となっているのが分かりました。
既に、スタジオドラゴンでは、アメリカに支社を設立し、韓国の会社が作る初めてのアメリカドラマとして注目されているそうです。
そして、イ・ギヒョクssiは、日本の小説や漫画にも注目し、日本人スタッフと制作する計画も持っていて、既に動き出しているそうです。
「社会のトレンドを追いかけるのでは遅いのです。私たちがそのトレンドを作り出すのです。」
と、最後にイ・ギヒョクssiが言いました。
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