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ヨハンが何かを真剣に考えている時、右手の指でコツコツと机を叩く癖があります。
そのせいかどうかは分かりませんが、彼の手の中指の爪が一つだけ黒く変色しています。
何かしら、ヨハン自身にも秘密がありそうです。それにその黒い爪が関わっていそうに思えてなりません。
チュ・ヒョヌの弁護士から人工呼吸器を外してほしいと言う要望が出されました。
これはチュ・ヒョヌ自身が音声データに残しているようです。
でも、家族の意見は分かれていました。ヒョヌ父は可能な限り治療を続けてくれと言い、妻はヒョヌ自身の意向に沿ってくれと言いました。
しかし、妻の本心はヒョヌ父と同じでした。
病院側は家族の意向に沿い、治療を継続する決定を下しました。ただ、ヨハンは外す決定がくだされたのです。
検査の結果、今回の呼吸不全の理由は肺炎だと判断されました。
その診断に沿った治療が始まったのですが、それを聞いたヨハンは慌てて病室に向かおうとしました。
何故なら、ヨハンが導き出した病名は重症筋無力症で、投与される薬では症状を悪化させてしまうだけだからです。
自分の考えが正しいかどうか確認するため薬を持ってヒョヌの病室に急ぐヨハン。
その前にシヨンが立ちはだかりました。
もしヨハンの推察が正しければ凄いことだが、証拠は何も無いわけで。もし重症筋無力症でなかったら、ヨハンが投与しようとしている薬で悪化する恐れもあるのです。
シヨンは、ヨハンが自分の考えが正しいかどうかを知るためにテストしようとしていると考えたのです。
「正直分かりません。教授の治療は患者のためなのかご自身のためなのか。患者を助けたのも、命を救いたかっただけなのか診断が出ていないからなのか。」
ヨハンは呆れたような表情をして背を向けました。
「患者を助けたいなら、急げ。」
担当医はヨハンの突然の主張に気分を害しました。
言い争っている時、シヨン母が。
ヨハンはチュ・ヒョヌの治療から外れた筈だと言いました。
ところがその時、チュ・ヒョヌの容体が悪化。
ヨハンは、朦朧としているチュ・ヒョヌに自分の考えを話し、許可を求めました。
チュ・ヒョヌは、ヨハンを信じました。
ヨハンが持ってきた薬を投与。
一瞬、容体が悪化するかと思われましたが、直後に急激に好転。状態が安定しました。
ヨハンの推察が正しかったのです。
チュ・ヒョヌはヨハンに礼を言いました。
「俺の話を無視してまで助けてくれてありがとう。」
「無視したわけではありません。逆にヒントを得ました。」
と、ヨハン。
チュ・ヒョヌが、格闘家が目や手足を失う気分にさせるものが何なのか・・・と考えることが出来、出した結論が重症筋無力症だったのです。
倒れる前、目や手足を失う事は死ぬことに値する苦痛だとチュ・ヒョヌはヨハンに言ったのです。
だから、安楽死させてくれと。
しかし、ヨハンは言いました。
「苦痛を取り除くことと命を奪う事は違う。私は命を奪う医者ではない」
・・・と。
チュ・ヒョヌは病名が確定したことから、本格的に治療が開始され、病状は徐々に安定していきました。
手段を選ばずに苦痛を取り除く医者、それがヨハンだ・・・と、シヨンは感じました。
シヨンは復帰して初めて父の元を訪ねました。
同じ病院に入院中なのです。もう1年もの間、植物状態でした。
何の好転もありません。
泣きました。涙が止まりませんでした。
病室から駆け出して行くのを、偶然ヨハンが見ました。
シヨンは一人誰もいない階段で泣いていました。
ヨハンはそっと見守るだけで、声は掛けませんでした。
ひとしきり泣いて顔を洗ったシヨン。
その時、ジョンナムから食事の誘いの電話が入りました。
ジョンナムはヨハンも呼んでいました。不思議な縁のヨハンとシヨンですからね。
ジョンナムは、何度も何度もシヨンを頼むとヨハンに言いました。
「優秀ですよ。」
と、ジョンナムに言ったヨハン。もち、シヨンの事です。
シヨンは思いもよらない褒め言葉に驚きを隠せません。
理由を聞きました。
「前は意欲が見えなかった。今は自分で考えて行動する。」
私の患者はまだ死んでいません・・・と突然シヨンが言いました。
「私の手で心臓を止めた私の患者です。1年以上も植物状態のままです。」
後悔したことは?事件の日以来、3年の間一度も後悔したことは無いのですか?と、シヨンが問いました。
患者から苦痛を取り除く方法が死だけなら患者を殺せますか?・・・と。
ヨハンは3年前の事を話し始めました。
ユン・ソンギュの疼痛管理を担当していたヨハン。疼痛管理とは、鎮痛剤で意識を失わせ苦痛を和らげた後、死なない様に薬を減らし再び苦痛を与えることです。
栄養供給を中断しても殺人、鎮痛剤過量で死んでも殺人でした。
ヨハンは、殺人罪になるのが怖くて2か月以上生かして苦痛を与え続けたのです。患者が殺人犯であると自分に言い聞かせて。
ユン・ソンギュが言ったのです、たとえ死んでも良いから苦痛を終わらせてほしいと。
助けてくれとも、殺してくれとも言わなかったようです。ただ、苦痛を終わらせてほしいとだけ。
「苦痛を取り除くために殺すんじゃない。たとえ死んだとしても苦痛を取り除くんだ。それだけだ。患者を任意で殺すのは犯罪だが、患者の望みを無視し、苦痛を放置する事こそ犯罪かもしれない。俺が2か月の間施したのは治療じゃなく、拷問だった。」
後悔などしていない、ただ怖かったんだ、すごく。
私もすごく怖かった・・・とシヨン。
でも、教授のように自分の行動に後悔は無いと言えないんです・・・と。
今でも、患者の命を預かることが怖いんです・・・と。
「当たり前だ。患者にとっては恐怖をしらない医師より怖さを知る医師が必要だ。それでいいんだ、カン・シヨン。」
シヨンは心が少し落ち着きました。
ヨハンの後姿に深々と頭を下げました。
シヨン父の容体が急変しました。
連絡を受け、シヨン母もミレも、カン院長やクォン教授等々、主だった医師が駆け付けました。
シヨン母が、必死に救命措置を施しました。
しかし、シヨンが現れません。電話にも出ません。
事情を聞いたヨハンは、以前一人で泣いていた階段に行ってみました。
シヨンはやはりそこで一人泣いていました。
ヨハンはほどけていたシヨンの靴ひもを結び直してあげました。
「患者には時機がある。医師は駆け付ける準備ができていないと。今がその時だ。娘であり医師である君が今、父親には必要だ。」
シヨンはマッサージを続ける母に泣きながら言いました。
事故の時、マッサージするシヨンに、痛いと、父は言いました。とても痛いと。
「止めて。お父さんが苦しんでるわ。」
シヨン母は手を止めました。