OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

マッコイ和みのライブ

2008-03-13 16:58:37 | Weblog

いよいよ雪国も暖かくなって、バイクの季節♪

と思っていたら自賠は切れているし、肝心のキーを紛失したか……。

う~ん、そういえば実家の机の引出しに入れていたような……。

ということで、煮え切らない不安はこのアルバムで解消です――

McCoy Tyner Live At Newport (impulse!)

マッコイ・タイナーといえば、説明不要の豪腕ピアニストとして1960~70年代には絶対的な存在感がありました。特にジョン・コルトレーンのバンドレギュラーとしてブレイクした頃の勢いには、何時聴いても血沸き肉踊るものがあります。

このアルバムは1963年のニューポートジャズ祭におけるライブセッションで、録音されたのは7月5日! つまりジョン・コルトレーンの、あの名演盤「セルフレスネス(impulse!)」の2日前なのですから、暑苦しいまでの熱気はお約束です。

しかもメンバーがクラーク・テリー(tp)、チャーリー・マリアーノ(as)、マッコイ・タイナー(p)、ポブ・クランショウ(b)、ミッキー・ロッカー(ds) という明らかに臨時編成というミスマッチ感覚も興味深いところです――

A-1 Newport Romp
 マッコイ・タイナーのオリジナルというブルースですが、イントロから躍動的にアドリブしていくマッコイ・タイナー以下のリズム隊が雰囲気を作り出す常套的な仕掛けで、特に決まったテーマメロディはありません。しかしこれが非常に魅力的なのは、ジャズならではの楽しみでしょう。
 続くクラーク・テリーは何時もの駆け足スタイルを全面に出していますが、やや不安的……。これはかなり前にラジオで油井正一氏が語ったところによると、なんとクラーク・テリーは当日に自分の楽器を忘れてきて、借り物を吹いていたというお粗末のようです。
 しかしチャーリー・マリアーノは絶好調で、白人ながらチャーリー・バーカー直系のビバップフレーズとアグレッシブな感性で大熱演! バックで煽るリズム隊とのコンビネーションも五分五分というところです。
 演奏はこの後、ボブ・クランショウとミッキー・ロッカーの4ビートスイング合戦から簡単なリフがあって終了しますが、如何にもモダンジャズというノリは不滅だと思います。

A-2 My Funny Valentine
 前曲からの拍手喝采の中、マッコイ・タイナーが上手いイントロを弾き、この人気曲のメロディがチャーリー・マリアーノによって思わせぶりに吹奏されていきます。密やかにからんでくるクラーク・テリーのトランペットもベテランの味わいで感度良好♪ もちろんテーマ後半は俺に任せろです。
 そしてマッコイ・タイナーは意外なほどに神妙な歌心に撤し、実はビル・エバンスがルーツであることを告白するのです。あぁ、こういう歌心優先のマッコイ・タイナーが私は大好きですから、何度聞いても飽きません。
 さらにアドリブからラストテーマに繋げていくチャーリー・マリアーノのネクラな真情吐露も素晴らしいですねっ♪ 数多ある同曲のジャズバージョンでも、味と情熱の世界が上手くミックスされた名演だと思います。

A-3 All Of You
 コール・ポーターの名曲で、モダンジャズではマイルス・デイビスのバージョンが耳タコになるほどに有名ですから、ここでもそのイメージが先入するのですが、マッコイ・タイナーはリズム隊だけの軽妙で躍動的な演奏に専心しています。これが実に正解!
 ボブ・クランショウとミッキー・ロッカーのコンビネーションは堅実ですし、マッコイ・タイナーは動きすぎる指で独自の歌心を表現し、絶対にコルトレーンもマイルスも出てくる気配すら感じさせないのは見事です。
 そしてボブ・クランショウのベースソロも最高!

B-1 Monk's Blues
 セロニアス・モンクではなく、あくまでもマッコイ・タイナーのオリジナルというセロニアスでモンクなブルースです。
 そしてこれもリズム隊だけの演奏とあって、暗くて饒舌なマッコイ節が大爆発! あぁ、これがジャズだっ! と熱血して感動するのが私のような世代のジャズ者ではないでしょうか。ほとんどパブロフの犬のようなモードとコードの合わせ技です。
 またボブ・クランショウが素晴らしいベースソロを披露♪ ミッキー・ロッカーのドラムスが些か軽い感じですが、それを言ったらお終いという雰囲気は、ジョン・コルトレーンが出てこないので、これも正解だと思います。

B-2 Woody'n You
 クライマックスは再びホーン陣が入っての熱血ハードバップ大会! もちろんマッコイ・タイナーはモード優先主義のスタイルを崩していませんが、クラーク・テリーは我関せずのマイペースで楽しさを追求していますから、ついついボリュームを上げてしまいます。
 快調にアップテンポのグルーヴを作り出すミッキー・ロッカーとボブ・クランショウに煽られて、チャーリー・マリアーノが新しいことをやろうとして苦闘するあたりにも、思わずニンマリ♪
 そしてマッコイ・タイナーが猛烈な全力疾走! う~ん、なんでコルトレーンが出ないんだぁ~~~! これは言ってはいけないのですが……。

ということで、今日ではあまり注目されることもないアルバムでしょうが、私はけっこう愛聴しています。というか、思い出した頃に聴くと、なかなかジャズの楽しさを再認識させられる1枚かと思うのです。

既に述べたとおり、当時のマッコイ・タイナーはジョン・コルトレーンのバンドで巡業に明け暮れていた熱い日々でしたが、そこで聞かせていたドロドロしたマグマのような演奏とは、明らかに別次元のノリが楽しめるのは貴重で嬉しいプレゼント♪

しかしジャズ喫茶の人気盤にもなっていないのは、他に秀作が多いマッコイ・タイナーとしては当然ということでしょうか……。聴かず嫌いは勿体無いアルバムです。

コメント (4)
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