OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

快楽のビート

2008-03-29 18:39:07 | Weblog

昨日までの仕事地獄から脱出したものの、本日は野暮用地獄でした。もちろんその合間には、しっかりネタ集めというか、中古盤店やジャズ喫茶にも行けましたけどね♪

ということで、本日は――

Blues Walk / Lou Donaldson (Blue Note)

ジャズ喫茶なんて暗い空間では、悩んで聴くのがジャズの王道という風潮が確かにありました。それはもちろんフュージョンブーム以前の事ですが、だからルー・ドナルドソンのような快楽主義を貫いているミュージシャンはジャズではなかった時期もあったようです。

実際、タイトル曲がグループサウンズにもカバーされた「Alligator Bogaloo (Blue Note)」はもちろんの事、今では名盤扱いとなったこのアルバムも、店内の雰囲気を汚す1枚として槍玉にあげたジャズ喫茶もあったほどです。

しかし、これはバリバリのモダンジャズど真ん中でしょう!?

適度に緩くてファンキー、コンガ入りの楽しいリズムにウキウキワクワクしながらも、ルー・ドナルドソンといいう黒人ミュージシャンのハート&ソウルにシビレて何がいけないのでしょう。

録音は1958年7月28日、メンバーはルー・ドナルドソン(as)、ハーマン・フォスター(p)、ペック・モリソン(b)、デイヴ・ペイリー(ds)、レイ・バレット(per) という、これは当時のレギュラーバンドだったと思われる面々です――

A-1 Blues Walk
 なんともイナタイ!
 ファンキーというにはユルユルな雰囲気は、ズバリ、チャカポコのコンガがその秘密かもしれません。ルー・ドナルドソンもブルースを意識しつつも、実はR&Bに近いソウルフルなノリとフレーズで分かり易いアドリブに撤していますが、まずテーマメロディのジンワリフィーリングに魅了されてしまいますねぇ~♪
 ハーマン・フォスターのピアノはソニー・クラーク+エロル・ガーナーにオルガンっぽい奏法も交えた独特のグルーヴがクセになる危うさです。
 演奏は終盤でコンガとドラムスのズンドコ対決もあって、ひとつ間違えればドC調というギリギリ感がたまりません。

A-2 Move
 ルー・ドナルドソンのスタイルは誰が何と言おうと、チャーリー・パーカーの影響が色濃いわけですが、流石にあそこまでのエキセントリックのところは無く、むしろ同じ様なフレーズとノリを使っていても、実に分かり易いのが特徴で、それはチャーリー・パーカーが十八番にしていた、このビバップ曲で丸分かりでしょう。
 猛烈なアップテンポで、かなりトリッキーのフレーズも吹いていますが、明朗快活なスピード感が爽快です。コンガ入りのリズム隊も本領発揮の楽しい4ビートで盛り上がり、そういうノーテンキなところがビバップの進化形たるハードバップの魅力かもしれません。

A-3 The Masquerade Is Over
 どちらかと言えばシンミリ系のスタンダード曲を、ルー・ドナルドソンは屈託無く明快に吹きまくり♪ このネアカなフィーリングが我国のジャズ喫茶にはそぐわないところだったのでしょうねぇ……。
 しかしチャカポコのコンガ入り4ビートの快楽性は麻薬的なもので、こんな演奏ばっかり聞いていると社会復帰が難しくなりそうです。このリズム隊、最高!

B-1 Play Ray
 B面ド頭が、これまた緩いファンキー節というメロディですから、たまりません♪ もちろんレイ・バレットのコンガが絶妙の合の手ビートです。
 さらにアドリブ先発のハーマン・フォスターがハートウォームな和みの極北ならば、ルー・ドナルドソンはベタなフレーズと明快なノリでウキウキの居直りです。
 演奏は終盤にかけてリズム隊のケレンも用意されていて、どこまでも調子が良すぎるのでした。

B-2 Autumn Noctrne
 いやはや、これまたベタベタな選曲♪ もちろん演奏は期待通りにスローなグルーヴが醸し出され、ルー・ドナルドソンが真摯な歌心を聴かせてくれます。いゃぁ~、このメロディフェイクの上手さは流石ですねぇ~~♪
 こういう普通っぽい演奏を敬遠してはバチアタリというもんでしょう。

B-3 Callin' All Cats
 オーラスはアップテンポの陽気なハードバップ演奏ですが、ルー・ドナルドソンは意外にも新しい雰囲気のフレーズも使っています。
 しかしハーマン・フォスター以下のリズム隊には、そんなの関係ねぇ~! レイ・バレットのコンガも快調ならば、ペック・モリソンのベースも基本に忠実にな4ビートを送り出し、まさに魔法のビートの秘密が解き明かされていくのです。
 そして結局、ルー・ドナルドソンは元の木阿弥! さらっとしたソウル味が付けられたパーカーフレーズの洪水で見事に演奏を締め括るのでした。

ということで、捨て曲無しの楽しいアルバムです。まあ、本音を言えば、「Blues Walk」あたりはピアニストがソニー・クラークだったらなぁ……、なんて不遜な事を思った時期もありましたが、いやいや、これはやっぱりハーマン・フォスターの起用が正解です。

というよりも、このアルバムはリズム隊の快楽性が魅力じゃないでしょうか? コンガとかラテン系打楽器の入った演奏はチャーリー・パーカーもやっていますが、それはあくまでもラテンミュージックのモダンジャズ的展開であって、ここで聴かれる黒人系R&Bグルーヴとは一線を隔するものかと思います。

けっこう粘っこいファンキー4ビートにコンガのチャカポコピートが加わったことにより、ますますソウルフィーリングが強調されたのはルー・ドナルドソンの意図するところだったのでしょうか?

こういうビートの魔術が楽しめるのもジャズの魅力かもしれません。

コメント
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