仕事はお金の話ばっかりで、ちょっと嫌気がさしています。
もう少し、心意気とか感じられれば、男にしてやろうという気持ちも湧くのですが、最初っから打算とタテマエばかりで、本音を吐かない者には、共感を覚えませんね。たとえ何年も付き合いが続いていても、です。
ということで、本日はスカッと――
■Ezz-therics / George Russell (Riverside)
ジョージ・ラッセルはモード理論推進派のひとりとして、モダンジャズに確固たる足跡を残した偉人とされていますが、それほど聴かれているのかなぁ……。
というのが、私の素直な感想です。実際、ジャズの解説本なんかに載っている「リディアン的概念」とか、素人には意味不明の論理ばかりが先走り、そんな頭でっかちな演奏が入ったレコードなんか、乏しい資金を使って買う気にもならないし、たまにジャズ喫茶で鳴っているリーダー盤にしても、個人的には??? という印象でした。
ところが、このアルバムには素直にシビレましたですねっ♪ なんというかストレートな凄みが意味不明な理論をブッ飛ばしている感じです。
録音は1961年5月8日、メンバーはドン・エリス(tp)、デイヴ・ベイカー(tb)、エリック・ドルフィー(as,bcl)、ジョージ・ラッセル(p,arr)、スティーヴ・スワロー(b)、ジョー・ハント(ds) というガチンコで恐い面々――
A-1 Ezz-thetics
古くはリー・コニッツ&マイルス・デイビスによるクールで熱い名演、ハードバップではマックス・ローチとソニー・ロリンズによる烈しくドライブしまっくた熱演がモダンジャズ史上に燦然と輝く幾何学的な名曲! そしてここでの演奏は地獄の底まで突進していきそうな、本当に火の出るような爆演が聞かれます。
まずはテンションの高いイントロからテーマ合奏、猛然と突っ込んでいくリズム隊と妥協しないホーン陣の恐い対決は、アドリブパートでグングン白熱! 先発のデイヴ・ベイカーが瞬発力満点の爆裂トロンボーンを響かせれば、クールな浮遊感と青春の情熱が両立したようなドン・エリスのトンペットが不思議なカッコ良さです。
そして真打のエリック・ドルフィーが危険極まりない狂気のアルトサックスで悶え泣き! 各アドリブ奏者のパートには絶妙のブレイクが仕掛けられていますが、エリック・ドルフィーの場合は、そんなの関係ねぇ~~! 天地驚愕の唯我独尊でしょうねぇ♪
また終始、緊張感が強いリズム隊ではドラムスのジョー・ハントがヤケッパチ寸前のブチキレながら、実は冷静なところが凄いと思います。もちろんジョージ・ラッセルのピアノは些かワザとらしく響くのですが、ラストの混濁まで、実に爽快な演奏の決定版だと思います。
A-2 Nardis
一応、マイルス・デイビスが作ったことになっているモードの名曲が、ここでは真相究明というか、種明し気味のアレンジで演奏されていきます。まずテーマのアンサンブルがミステリアスで最高ですねぇ♪ ちょっと情け無いドン・エリスのトランペットさえも、実は演出だと思います。
リズム隊ではスティーヴ・スワローのベースが好き放題♪ ドン・エリスのミュートソロとウマが合った名演ですし、デイヴ・ベイカーのモゴモゴトロンボーンからエリック・ドルフィーのエキセントリックなバスクラリネットが登場するパートは、何時聴いてもスリル満点です。
A-3 Lydiot
意味不明のテーマメロディが素晴らしくグルーヴィに演奏されていくという新世代のビバップ! アドリブ先発で手本を示すジョージ・ラッセルのピアノが煮え切らないぶんだけ、スティーヴ・スワローが素晴らしい助け舟を出し、バンドをスイングさせています。
途中で居心地の悪いリフをぶっつけてくるホーン陣の中では、エリック・ドルフィーがツボを押えた嘘泣きアルトサックスですが、ドン・エリスのクール節は本物か??? と思っていると、デイヴ・ベイカーが重苦しい音色で密度の濃いフレーズを乱れ打ち!
しかしこの演奏は、やはりスティーヴ・スワローが極みつきです。4ビートで自在に躍動するウォーキング、さらにしぶといアドリブソロまで、完全無欠の存在感は、ほんとうに気持ち良いですねぇ~♪
B-1 Thoughts
ほとんど意味不明なテーマメロディが???とはいえ、途中からジョー・ハントがリードして躍動的なパートが始ると、少しはホッとします。しかしまたまたウジウジとした本音に立ち返り……。
ですからアドリブパートは、ちっとも面白くありません。辛うじてバックの面々の絡みとか、意地悪く仕掛けられたアレンジにハッとさせられるのですが……。
個人的にはドン・エリスが秀逸だと思います。
B-2 Honesty
ゴスペル調の楽しい演奏ながら、やっぱり随所に変態指向がある感じでしょうか。エリック・ドルフィーのアルトサックスが熱く咆哮するほどに、裏にはジョージ・ラッセルの薄ら笑いがあるような……。
まあ、それでも緊張感と和みのコントラストが素晴らしく、バンドメンバー各々が見せ場を作っていくのでした。
B-3 'Round Midnight
オーラスは有名モダンジャズ曲なので安心感も漂いますが、実は出だしからフリー系の響きです。そしてもちろん、その中から、あの有名なテーマメロディが浮き出してくるというエグイ仕掛なんですねぇ♪
あざといと言えば、それまでなんですが、エリック・ドルフィーのアルトサックスが艶っぽく、堂々とケレンを演じて潔いと思います。
ということで、ジャズ喫茶では隠れ定番でしょう。特にA面が鳴り出すと、お客さんはジャケットを眺めて手帳にメモという光景も、1970年代の文化世相でした。
またB面はお茶の間とか自室で聴くと、また違った味わいがあったりして、なかなか侮れない名盤だと思います。
論より証拠の1枚でしょうね♪