昨夜までのゴタゴタをブッ飛ばす意味で、本日は朝から、こんなん聴いてます――
■This Time The Drum's On Me / Stan Levey (Bethlehem)
ジャズは大音量で聴いてこそ! という部分は否定出来ず、このアルバムはそうした効果があって最高に輝く名盤かもしれません。
つまり普通の音量というか、お茶の間での“それなり”の音量ではイマイチ、良さが認識出来ないというのが、私の感性です。
実際、ジャズ喫茶で聴いて、おぉっ♪ と感動し、レコードを買って自宅で聴いた時は、ちょっと???でした。これは日本盤だった所為もあるのですが……。
ところが現在、単身赴任で木立に囲まれた山間部の家を借り、ひとりジャズ喫茶を心置きなく楽しめる身分となって、あの感動が蘇えりました。これには心から感謝♪
録音は1955年9月27&28日、メンバーはコンテ・カンドリ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、デクスター・ゴードン(ts)、ルー・レヴィー(p)、リロイ・ヴィネガー(b)、スタン・リーヴィー(ds) という西海岸では相等にシュートな面々です――
A-1 Diggin' For Diz
ハードバップな曲想と西海岸派のスマートなアンサンブルが奇妙に合体した演奏ですが、アドリブパートは間違いなく本物の魅力に溢れています。
スタン・リーヴィーの小型マックス・ローチというドラミングがイントロとブレイクで冴えわたり、コンテ・カンドリの溌剌としたトランペットを上手く導いていますが、続くデクスター・ゴードンは強烈な自己主張で、逆に演奏全体をグイグイとリードしていきます。ルー・レヴィーのファンキーな伴奏も良い感じ♪
そしてフランク・ロソリーノが大らかな持ち味を発揮すれば、クライマックスはドラムス対ホーン陣のソロチェンジ! 各人が見せ場の連続となるのですが、リロイ・ヴィネガーの骨太ウォーキングも素晴らしいですねぇ。
さらに終盤では予定外と思えるほどにファンキーで小粋なルー・レヴィーのアドリブまで楽しめるのでした。
A-2 Ruby My Dear
セロニアス・モンクが書いた耽美な名曲を、ふくよかなアンサンブルで演じています。テーマメロディをリードするコンテ・カンドリのトランペットをがっちりと支えるリロイ・ヴィネガーのベースが実に良い雰囲気ですねぇ。
そしてアドリブパートではルー・レヴィーのビアノが物凄くファンキーなんです♪ う~ん、恐るべしです。
A-3 Tune Up
これまたハードバップのファンには説明不要の名曲ですから、このメンツならアップテンポのガチンコ演奏は間違いないところです。
アドリブ先発のデクスター・ゴードンが幾分ギスギスしたビバップ魂を全開させれば、コンテ・カンドリは白人らしい明快な歌心で対抗します。ただし両者とも、やや自意識過剰というか、イマイチ本調子ではないかもしれません。
しかし続くフランク・ロソリーノが本領発揮の小刻みなフレーズの連発で、最高に爽快なアドリブを披露♪ 続くルー・レヴィーもケニー・ドリューっぽい飛跳ねピアノで楽しく、またファンキーな味わいも絶品だと思います。快演ですねぇ~~~♪
そしてリロイ・ヴィネガーの4ビートウォーキングに続いてのソロチェン場では、スタン・リーヴィーがビシッとキメまくり、このパートが短いのが勿体無いです。
A-4 La Chaloupee
リロイ・ヴィネガーの4ビートウォーキングが演奏全体をリードした快演です。テーマメロディとアンサンブル、そしてアドリブパートには西海岸派特有の楽天的なフィーリングが濃厚ですが、しかし演奏全体のグルーヴは完全にハードバップという、この時期、この場所でしか生まれなかったノリが、たまらないところ♪
フランク・ロソリーノはもちろん、ちょっと軽めの黒っぽさを発散するデクスター・ゴードンには、目からウロコ状態ですし、コンテ・カンドリも泣きのフレーズを上手く入れていますから、グッときます。
気になるリズム隊の存在も流石の力強さで、好感が持てますね。ルー・レヴィーが小粋なファンキー節をたっぷりと聞かせています。。
B-1 Day In Day Out
軽くて楽しいスタンダード曲で、全く西海岸派ジャズにどっぷりのアレンジ&アンサンブルなんですが、アドリブパートにハードエッジな感覚が横溢するのは、先発のデクスター・ゴードンの熱演によるものです。あぁ、この歌心の男意気!
するとコンテ・カンドリは流麗なフレーズを積み重ね、フランク・ロソリーノが十八番の芸の細かいスライドワークで、これぞの自己主張です。シャープなピアノタッチのルー・レヴィーも素晴らしい快演で、本当にたまりませんねっ♪
B-2 Stanley The Steamer
このアルバムのハイライトというか、評論家の先生方も昔から大絶賛しているモダンジャズの名演で、主人公はデクスター・ゴードン! ルー・レヴィーのファンキーなイントロからミディアムテンポの粘っこいグルーヴが充満し、デクスター・ゴードンが唯我独尊のアドリブを展開していきます。
それはやや遅れて始るアドリブフレーズの頭、しかしケツはぴったりと合っているというデクスター・ゴードンだけの名人芸で、う~ん、聴くほどに快感♪
リズム隊のヘヴィな感覚も素晴らしく、とても西海岸で録音されたとは思えない雰囲気は、やっぱり凄いですね。特にスタン・リーヴィーのドラミングが、そういうフレーズとノリに鋭く対応し、このアルバムの中では一番熱気の醸し出しています。
B-3 This Time The Drum's On Me
オーラスはアップテンポで演じられるアルバムタイトル曲ですが、実はビバップの名曲「Max Is Makin' Wax」と、ほとんど同じですから、メンバー全員が心置きなくアドリブに専心しています。
特にここでもリズム隊のノリが素晴らしく、ルー・レヴィーはホレス・シルバー状態! ガンガンにイケイケです。
ということで、ちょっと聞きには期待ほどではない雰囲気なんですが、音量を上げると物凄い存在感を示すリロイ・ヴィネガーのベース! そして小粋にファンキーなルー・レヴィーの素晴らしさが、グッと前に迫出してきますから、フロントのホーン陣のアドリブもブリブリに楽しめます。
肝心のスタン・リーヴィーのドラムスが、ちょっと薄目の録音なのが勿体ないところですが、それも音量が解決してくれると思います。
ですから、ジャズ喫茶みたいな大音量があれば最高というアルバムです。尤もそれは、このアルバムに限ったことではありませんが……。
ルー・レヴィーのファンは必聴!