■Tobaco Road / Nashville Teens (Decca / キングレコード)
ナッシュヴィル・ティーンズは、今ではすっかり忘れられたビートバンドかもしれませんが、そのカッコ良さは、この1曲に集約されているといって過言ではないでしょう。
発売されたのは昭和39(1964)年という、ちょうどビートルズの大ブレイクによって世界中に蔓延したブリティッシュビートのヒット曲のひとつでしたが、オリジナルはジョン・D・ラウダーミルクというアメリカのカントリー系シンガーの持ち歌でした。
尤も私がそうした真実を知ったのは後のことで、バンド名からしてアメリカのグループだと思っていましたし、やっていることが所謂ブルーアイドソウルの元祖的な真っ黒いサウンドをツインボーカルで表現するという、もしかしたら我国のスパイダースやビーバーズにもヒントを与えたかもしれない存在です。
メンバーはアーサー・シャープ(vo)、レイ・フィリップ(vo,g,b)、ジョン・アレン(g)、ピート・シャノン(g,b)、ジョン・ホーケン(p,org)、バリー・ジェンキンス(ds) という6人組ながら、ボーカルの2人以外はメンバーの出入りも相当にあったと言われています。
しかしこのバンドのウリは、何と言ってもエヴァリー・ブラザーズを黒人化したような強力なツインボーカル! そしてエグミの強いピアノ中心の演奏パートじゃないでしょうか。
実はサイケおやじがナッシュヴィル・ティーンズを知ったのは、もちろん当時のラジオから流れたこの曲、そしてテレビで見た口パクの出演場面によるものですが、それにしてもツインボーカルというスタイルは強い印象を残しています。
それゆえに現実的には、この1曲だけで消えてしまった感じですが、リアルタイムでは何枚もシングル盤を出していましたですね。当然ながら、後にはサイケおやじの蒐集の対象になったわけですが、驚いたことに本国イギリスでは1枚のアルバムも出していないという!?
いゃ~、なんとも業界の厳しさを象徴する事態じゃないでしょうか。
しかしナッシュヴィル・ティーンズは、この「Tobaco Road」を残しただけで永久に不滅だと思います。なにしろ後年のサイケデリック時代になっても、このナッシュヴィル・ティーンズのバージョンを参考にしたと思しきヘヴィロックのカパーが幾つも世に出たという実績が、それを証明しています。
ぜひとも、ひとりでも多くの皆様に楽しんでいただきたいですねぇ~♪
ただし今日まで、決定的な集大成アルバムが出ないのは、一発屋の宿命というには、あまりにも悲惨な現実だと思います。
今こそ、素晴らしい復刻盤が出ることを決死的に熱望しているのでした。