OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

今回も凄かったジミヘンの発掘音源集

2010-04-04 13:12:24 | Jimi Hendrix

Valleys Of Neptune / Jimi Hendrix (Experience Hendrix / Sony)

兼ねてより予告されていたジミヘンの完全未発表音源集!?!

これを素直に喜んで聴いていれば良いものを、サイケおやじはその秘密になんとか迫ろうと、あてどない暗闘を繰り返してしまうのが、本当に悪いクセです。

正直に言うと、ソニー系列からの発売なので、日本盤をオリジナルとして買えば、翻訳されたライターや詳細な解説書が付属しているはずでしょう。しかし大手ソフト屋のネット通販で同じ中身のデジパック仕様輸入盤が、千円ちょっとで売られているとすれば、ついつい手が出てしまうのもご理解願えると思います。

よって、英文ライナーを読みながら、あれこれ手持ちの旧音源を引っ張り出し、唸りながら聴いていた一応の結果報告を、ここにさせていただきます。

まず収録は以下の12曲♪♪~♪

 01 Stone Free (1969年4月7、9&14日、5月17日録音)
 02 Valleys Of Neptune (1969年9月23日&1970年5月14日録音)
 03 Bleeding Heart (1969年4月24日録音)
 04 Hear My Train A Comin' (1969年4月7日録音)
 05 Mr. Bad Luck (1967年5月5日録音)
 06 Sunshine Of Your Love (1969年2月16日録音)
 07 Lover Man (1969年2月16日録音)
 08 Ships Passing Through The Night (1969年4月14日録音)
 09 Fire (1969年2月17日録音)
 10 Red House (1969年2月17日録音)
 11 Lullaby For The Summer (1969年4月7日録音)
 12 Crying Blue Rain (1969年2月16日録音)

曲名の後に記した録音年月日は付属の英文ライナーからの転載ですが、個人的には???という部分が打ち消せませんし、ジミヘンの死後にオーバーダビングされたパートもあるという記述も気になりますが、それは各々、後で触れます。

で、まず特筆したいのは、アルバム全篇を通してのリマスターの統一感ということです。

当然ながら、ジミヘンの死後には未発表作品集がゴチャゴチャ売り出され、中には詐欺まがいのブツもあったわけですが、1995年以降はジミヘンの親族によってその大部分が管理され、また素材への実質的な関わりには、リアルタイムでエンジニアを務めていたエディ・クレイマーが今も引き継いでいるという賛否両論があります。

と書いたのも、いろんな音源をひとつの流れに纏めたり、あるいは修復をした段階で、ここに収録されたのが本当にリアルな音だったのか、ちょいと疑問に感じるからなのですが……。

まあ、それはそれとして、このCDでは一番に古い録音とされる「Mr. Bad Luck」は、後にLP「レインボー・ブリッジ」やCD「サウス・サターン・デルタ(MCA)」等々で世に出た「Look Over Yonder」の原型と解説書にあるとおり、演奏メンバーはジミヘン(vo,g) 以下、ノエル・レディング(b) とミッチ・ミッチェル(ds) の初代エクスペリエンスです。

ちなみにノエル・レディングもミッチ・ミッチェルも、1970年代だと言われていますが、音源に関する自分達の権利を10万ドル程度で手放したという、なんともバカらしい裏話は本当なんでしょうか?

それゆえに死後に残された音源が放埓に扱われ、また今日、ようやく統一されようとしているのは悲喜こもごもでしょうね。

で、肝心の「Mr. Bad Luck」はアップテンポのジミヘンロックで、秀逸なリマスターによってグッと重心の低いリズムとビートが炸裂する中、歪み気味のギターが暴れるという、まさに血沸き肉躍る演奏です。幾分コミカルな歌詞を歌うジミヘンのボーカルも良い感じ♪♪~♪ ただし元々の素材テープが痛んでいた所為でしょうか、解説書によれば、1987年にベースとドラムスがオーバーダビングされたとのことですが、それが誰だったのかは不明……。

そんな諸々の情報から個人的に推察すれば、おそらくはセカンドアルバム「アクシス:ボールド・オブ・ラブ(Track)」制作中のデモ音源に手が加えられたんじゃないでしょうか? ちなみに前述した「レインボー・ブリッジ」に収録され、1971年に世に出た「Look Over Yonder」は、1968年10月22日の録音とされています。

次に1969年2月16&17日録音の5曲、「Sunshine Of Your Love」「Lover Man」「Fire」「Red House」「Crying Blue Rain」は、ブートながら映像も出回っている同年18&24日のロイヤル・アルバート・ホール公演のリハーサル音源です。もちろんメンバーは前述のエクスペリエンスですが、ここではストーンズとも関わりの深いロッキー・ディジョーン(per) の特別参加が、ちょいと注目かもしれません。

そしてスタジオでのリハーサルながら、バンドのテンションは最高潮! ご存じ、クリームのヒット曲だった「Sunshine Of Your Love」はインストですが、中盤にはベースソロを設定したり、クリームの他の演目も断片的にやってしまったりと、なかなか憎めません。その意味でジミヘンのライプステージでは公式デビュー当時から定番だった「Lover Man」が、グッとテンポを落としたエグ味の強いものになっていたり、逆に疾走感満点に突進する「Fire」という感じで、なかなか意欲的です。もちろんジミヘンのギターは痛快至極! ボーカルパートを挟んで前後に激しくギターを泣かせる「Lover Man」、シンコペイトするミッチ・ミッチェルのドラミングや必死で存在感を認めさせようとするノエル・レディングのバックアップボーカルを置き去りにして宇宙へと舞い上がる「Fire」でのアドリブソロには、完全KO請け合いです。

そしてさらに凄いのが、「Red House」での情念の呻き! 最初は十八番の思わせぶりながら、そのエロスさえ感じさせるギターでの表現力は、ボーカルパートでの合の手も含めて、全く余人の入り込むスキがありません。もちろん後半のギターソロは、とてもリハーサルとは思えない熱の入り方で、本当にフェードアウトが勿体無い!!! う~ん、それでも至福の8分20秒♪♪~♪

しかし一応は新曲扱いの「Crying Blue Rain」は、完全に試行錯誤なブルースジャムというか、手さぐりでお約束のリックを積み重ね、ジミヘンの歌も「イェ~、イェ~」と唸るだけ……。しかし粘っこいブルースロックの枠組みの中で少しずつ形を作っていくバンド演奏の面白さは、ジミヘンがやっているがゆえに興味深々で、特に中盤からテンポを上げていく場面の乱れ方とか、いろんなコードを試し(?)弾きするところは、なんともリアルです。ちなみに付属解説書によれば、この演奏にも後年、ドラムスとベースがダビングされたことになっていますが、う~ん……。

そういう現場主義は、ステージの定番であったにも関わらず、死後になってようやく有名になったジミヘンがオリジナルのブルース「Hear My Train A Comin'」も同様で、1969年4月7日録音という、初代エクスペリエンスの結束が微妙な時期だけに、殊更ガチンコな演奏が楽しめます。おそらくはスタジオでの完成を目論んでいたんでしょうが、このド迫力な混濁した熱気をレコード化するのは、当時としては無理があったのかもしれません。それを今日、こうして聴ける喜びは至上のものです。いゃ~、本当に凄いですよっ!

そして同日に録音され、様々な手直しが施された「Stone Free」は結局、ノエル・レディングから交代参加したビリー・コックスのペースを得て、さらにファンキー&ワイルドに作り直されたお馴染みの人気曲♪♪~♪ 1966年に録音されたシングルバージョンに比べると、グッと黒人感覚が強くなっていて、まさにブラックロックの誕生というところでしょうか。新しく付け加えられたエンディングも、不思議な魅力かと思います。

それと、これも同日録音とされる「Lullaby For The Summer」は完全未発表のスピード感溢れるインスト! とにかくジミヘンの纏まりの良い暴れ方は何回ものオーバーダビングによるものとはいえ、その確信犯的な快感に酔わされますよ。ただし演奏メンバーは初代エクスペリエンスとされていますが、個人的には些かの疑問も……。

また、その最中の1969年4月14日に録音された「Ships Passing Through The Night」は、これも死後に発売されたLP「クライ・オブ・ラブ(Track)」に収録されていた名演「Night Bird Flying」の原型と各方面で言われていた幻のトラックですが、その軽やかに舞い踊るフィーリングに比して、この「Ships Passing Through The Night」は重心の低いハードロックがジミヘンそのもの!?! 幾層にも重ねられたギターの様々なリフやアドリブソロ、さらにベースやドラムスとの絡みも相当に練られていて、これがオクラ入りとは、流石に同時期の初代エクスペリエンスは爛熟していたんだなぁ~、と感慨もあらたなものがあります。

しかし1969年4月24日録音の「Bleeding Heart」は、それが完全に崩壊した後のセッションで、共演メンバーはビリー・コックス(b) とロッキー・アイザック(ds) という新顔組!?! 他に2人の打楽器奏者が参加とクレジットされていますが、同曲のエルモア・ジェイムスの古典に敬意を表したカパー演奏を披露していた同年3月18日の録音、つまり後に出たCD「ブルース(MCA)」収録のバージョンと比べると、実にブッ飛んだファンキーロックに変換されているのは痛快! いゃ~、このアップテンポのアレンジ、ジミヘンのカッコ良すぎるリズムカッティング、刹那的なボーカルと狂おしいギターソロ♪♪~♪ もちろん未完成なんですが、もう、最高ですよっ!

そしてお待ちかねっ! アルバムタイトル曲の名誉を勝ち得た「Valleys Of Neptune」は、録音データからしてジミヘンが新しい展開を求めての模索という雰囲気も濃厚というか、なんとも不思議な心持にさせられる王道ロックです。それは如何にもという曖昧な曲メロと投げやり気味のボーカル、相当に難しい伴奏系のギター等々が、一応の纏まりは聞かせてくれるのですが……。

もちろん公式に発売されるのは初めてでしょうし、リマスターによって迫力満点の音作りにはなっているのですが、例え本人自らの手によって完成されていたとしても、これは……??? う~ん、なんだかなぁ……。

ということで、肝心の目玉曲が私にはイマイチだったんですが、他は文句無しの優良発掘でした。ただし冒頭でもちょっと書きましたが、全体のリマスターに統一感を持たせようとした所為でしょうか、些かの作為は賛否両論かもしれません。

しかし、そんな不遜な暴言を反省する間にも、押さえきれない胸騒ぎがするのは確かです。つまり今日でも、これだけ凄い未発表音源が残されていたということは、次なる発掘と再発が本当に楽しみ!

前述したロイヤル・アルバート・ホール公演はプロショットの映像として映画用に撮られたものがブートで昔から出回っていますから、これの公式版は絶対でしょう。さらに分散しているライプ音源の統一や新しいソースによる復刻も期待するところです。

本当にジミヘンの音源は、何時までも楽しみがいっぱいですね♪♪~♪

コメント (2)
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