■Couldn't Stand The Weather / Stevie Ray Vaughan (Epic)
驚愕のデビューアルバム「テキサス・フラッド」で一躍、ブルース&ハードロックのギターファンを狂喜させたスティーヴィ・レイ・ヴォーンが待望のセカンドアルバムで、これまた、ブルースというよりはロックギター最良の瞬間が、きっちり楽しめる秀作でした。
発売されたのは1984年の初夏でしたから、当時の流行音楽とは大きく立ち位置の異なるそういうスタイルは、リアルタイムでブルースロックに心を奪われていた青少年が大人になったその時、本当に掛け替えのないものだったのです。
もちろんサイケおやじも含めて、スティーヴィ・レイ・ヴォーンのレコードを率先して買っていたのは、そういう世代でしょう。しかし、この凄腕ギタリストの放出するエネルギーは、もっと若い世代にもアピールしていたことは確実でした。
A-1 Scuttle Buttin'
A-2 Couldn't Stand The Weather / テキサス・ハリケーン
A-3 The Things That I Used To Be
A-4 Voodoo Chile
B-1 Cold Shot
B-2 Tin Pan Alley
B-3 Honey Bee
B-4 Stang's Swang
演奏メンバーはスティーヴィ・レイ・ヴォーン(vo,g) 以下、前作と同じトミー・シャノン(b)、クリス・レイトン(ds) のダブルトラブルですから、その気心の知れたハートウォームな雰囲気が尚更にハードなブルース&ロックを提供してくれたものと思います。
とにかくA面ド頭の「Scuttle Buttin'」からして、激しく燃え上がるスピード満点のブルースインスト! というよりも、これは完全にロックインストでしょうねぇ~♪ 実は私のような者には全盛期のベンチャーズを想起させれる場面さえあるんですが、ちっとも古くなっていないそのフィーリングは、ベンチャーズとスティーヴィ・レイ・ヴォーンの普遍性を証明するものでしょうねぇ。僅か2分に満たない演奏時間の短さも流石です。
そして続くアルバムタイトル曲「Couldn't Stand The Weather」は思わせぶりなギターのイントロから、これはもう完全なハードロック! しかもキメになっているがスティーヴィ・レイ・ヴォーンの素晴らしいカッティングなんですねぇ~♪ これは実際にコピーに挑戦してみると痛感するんですが、ちょっと出来そうで、なかなか難しいんですよ。まあ、私の技量不足は言わずがなではありますが、もちろん間奏のギターソロも用意周到に展開されています。まさに邦題「テキサス・ハリケーン」に偽り無し!
その意味でジミヘンのカパーに敢然と挑んだ「Voodoo Chile」は、なかなか怖いもの知らずというか、無謀というか、その意図が良く分からないと言えば贔屓の引き倒しですが、やはりアマチュアバンドがそれをやるのとは立場が違います。
正直言えば、ジミヘンの唯一無二の凄さがますます際立ってしまう結果だったと思いますが、実際のライプステージでは常にやっていたそうですから、自らの存在意義を明確にしたかったんでしょうか……? あえて言えば、ジミヘンよりもジミヘンっぽいギターを弾きたかったのかもしませんねぇ。そういうところが絶対、憎めません!
そうした心意気は有名ブルース曲のカパー「The Things That I Used To Be」でも全開ですし、ジワジワとその場の空気に染み込んでいくスローブルースな表現が素晴らしすぎる「Tin Pan Alley」は、その刹那の甘さが後戻り出来ない境地かもしれません。本当にゾクゾクしてきますよっ♪♪~♪ ちなみに「Tin Pan Alley」はデビューアルバム「テキサス・フラッド」の最新リマスターCDにボーナストラックとしてアウトテイクが収められていますから、聴き比べも興味津々だと思います。
また正統派ブルースロックの「Cold Shot」や「Honey Bee」も安定感のある快演ですが、オーラスの「Stang's Swang」は、アッと驚くモダンジャズな自作のインスト!?! ゲストとしてスタン・ハリソン(ts) が加わっている所為もありますが、あえてライトタッチを心がけたような短い演奏が逆に印象的かもしれません。
ということで、全体としては幕の内弁当的なバラエティが、ブルースロックだけに限定されない音楽性を披露する目論見だったのでしょうか。しかしその中にあるブルースロックな本質が、尚更に強く感じられる結果は、深読みすれば大成功!
おそらくスティーヴィ・レイ・ヴォーンの人気は、このアルバムで決定的になったと思われます。
さて、現在発売中のCDには以下のボーナストラックが入っています。
S.R.V Speaks
Hide Away
Look At Little Siste
Give Me Back My Wig
Come On (Part.Ⅲ)
何れもこのアルバムセッション時のアウトテイクですが、「S.R.V Speaks」は文字通り、スティーヴィ・レイ・ヴォーンへの短いインタビューで、その中で一節を弾いた「Hide Away」が、次にインストで完奏されるのはニクイばかり♪♪~♪ ご存じ、エリック・クラプトンも十八番にしているフレディ・キングのオリジナルですから、聴き比べも楽しいところですが、ここでのスティーヴィ・レイ・ヴォーンの自然体の余裕は凄いですねぇ。軽くやって、これ、ですからっ! いや、軽くやっているように感じさせられるところが、本当に凄いんでしょうねぇ~♪
ですから同じく「Look At Little Siste」「Look At Little Siste」「Come On (Part.Ⅲ)」と続く有名ブルース曲のカパー三連発も楽しさ最高の極みで、正直に言えばアルバム本篇よりも好きなぐらいです。とにかくスティーヴィ・レイ・ヴォーンのギターが泣き喚きの連続ですし、バンドが一体となったグルーヴも素晴らしく、しかも適度に肩の力が抜けたボーカルの味わいも良い感じ♪♪~♪
あぁ、ブル~スロック、万歳!
それが保守的であろうともっ!