■Schizophrenia / Wayne Shorter (Blue Note)
最近はすっかりジャズから遠ざかってしまったサイケおやじではありますが、決してジャズが嫌いになったわけでは、もちろんありません。
ですから、どうにか新年気分が継続している今、勇躍ターンテーブルに乗せたのが、本日ご紹介の1枚です。
う~ん、如何にもサイケデリックなジャケットデザインとアルバムタイトル!
それは1967年3月10日の録音という、まさにモダンジャズにとってもロックに主導された時代の最先端を意識せざるをえない切迫感があったにちがいない!?
そんな独断と偏見をサイケおやじは抱いていますが、流石にウェイン・ショーター(ts) は一筋縄ではいきません。
カーティス・フラー(tb)、ジェームス・スポールディング(as,fl)、ハービー・ハンコック(p)、ロン・カーター(b)、ジョー・チェンバース(ds) という怖い面々を引き連れての演奏は、正統派モダンジャズはもちろんの事、ロックやラテンミュージック、フリーや現代音楽、さらには黒人である限り避けて通れない特有のルーツに根ざした広範な音楽性が見事に融合されていると感じます。
A-1 Tom Thumb
いきなりウェイン・ショーター十八番の脱力系ジャズロックが最高に気持良く演奏されます。しかもテーマアンサンブルをリードするのがジェームス・スポールディングのアルトサックスであり、ウェイン・ショーターはカーティス・フラーと共にホーンリフに徹するあたりの懐の深さ!?
これはなかなか今後の道筋に重要な局面だったんじゃないでしょうか。
しかもリズム隊はロックやラテンのリズムを柔軟に導入解釈しつつ、そう簡単にリスナーを安心させない依怙地があるみたいなんですよねぇ~。
例えばウェイン・ショーターがアドリブの展開で得意の気抜けのビールみたいなノリに入っていくと、その瞬間からジョー・チェンバースが厳しいオカズを連打したり、ハービー・ハンコックとロン・カーターは共にマイルス・デイビスのバンドで日常茶飯事だった緩急自在のフリープローイング系のキメを入れたりと、全く油断が出来ません。
しかし、それでいて最終的に気持良く聴けてしまうのは、このメンバーならではの実力に裏付けられたサービス精神の発露というところでしょうか。実際、サイケおやじは何度でも針を落してしまうのですから!
A-2 Go
今となっては一般的なウェイン・ショーターのイメージのひとつである、幻想的なスローバラードの演奏として、案外と当たり前の仕上がりかもしれません。
しかし、そうは言っても終始弾きだされるメリハリの効いたジャズビート、ジャズテットの進化系のようなソフトパップっぽいホーンのハーモニーはカーティス・フラーの参加と密接に関連していると思います。
またアドリブパートではジェームス・スポールディングのフルートが良い味出しまくり♪♪~♪ またロン・カーターも随所でハッとするほど刺激的に仕掛けてきますよ。
う~ん、これもジャズの醍醐味ですし、リーダーのウェイン・ショーターはミステリアスなムードと力強いプレイを両立させた名演を聞かせてくれます。
A-3 Schizophrenia
そして前曲のイメージを継承したようなモヤモヤのアンサンブルから一転、強烈なアップテンポのガチンコ勝負というのが、このアルバムタイトル曲のキモでしょう。
もちろん「精神分裂病」という意味合いに相応しく、参加各人が独善的な自己主張を繰り広げるのも、まあ、ひとつの「お約束」なんでしょうが、こういう「熱さ」が1960年代後半のジャズやロックを盛り上げでいた要素だと思えば、今は夢のようだと感じるばかりです。
B-1 Kryptonite
これが収録トラック中、唯一ウェイン・ショーター以外のメンバーが書いたオリジナル曲で、作者はここで終始演奏をリードするジェームス・スポールディングですから、「Tom Thumb」同様、かなりの確率でリーダーからの信頼を得ていたのでしょう。
そして実際、アップテンポの流れの中で複雑なモダンビパップとも言うべきテーマから先発のアドリブで披露するフルートは、なかなかのハイテンションですよ。刺激的なビートを送り出すジョー・チェンバースのシンバルやハービー・ハンコックのクールなコード伴奏も、そんなの関係ねぇ~~~! そういうノリです。
しかし続くウェイン・ショーターは流石に貫録というか、適宜フリーなアプローチも交えつつ、誰の真似でも無い、異様な空間を現出させるが如きアドリブ展開を聞かせてくれるんですが、ちっとも難しいことはないんですよねぇ~~♪ 「頭」というより「心」で演じる姿勢が伝わってくる感じでしょうか。
ですからハービー・ハンコックにしても、実に真摯に前向きですし、意外と意地悪なロン・カーターの遣り口も憎めず、スパッと演奏が終了される潔さは快感です。
B-2 Miyako
ワルツビートでスローに演じられるテーマメロディの美しさは、一説によると当時のウェイン・ショーターの結婚相手「ミヤコ」に捧げられたと言われているとおり、アドリブパートや演奏全体のアンサンブルも含めて、なにか特別の安らぎを感じます。
ただし、それはウェイン・ショーター独得の音楽性に夢中になっている者だけの話なんでしょうねぇ……。
ここにあるのは、所謂「ジャズ的な美メロ」とは一線を画した世界だと思いますから、多くの皆様が退屈されるとしても、それは避けえない現実であって、そう思えばジャズ喫茶全盛期の頃には、このアルバムのこの曲が流れると、席を立つお客さんも散見された記憶があります。
う~ん、今はどうなんでしょう?
個人的には好きな演奏なんですが……。
B-3 Playground
そしてオーラスは如何にも新主流派モロ出しの激しい演奏で、ガチンコで攻めてくるリズム隊を騙し討ちするようなテーマアンサンブルから、まずはウェイン・ショーターが変幻自在のアドリブでその場を引き締めていきます。
すると何時もは春風の如きカーティス・フラーまでもが、それに同調するんですから、たまりません。しかし続くジェームス・スポールディングがあまりにもリズム隊の思惑に乗っかった姿勢に徹するの、どうなんでしょうねぇ……?
ですからハービー・ハンコックが我が意を得たりの独善をやってしまう事にたまりかねたのか、かなり良いところでホーンのアンサンブルが割って入り、ドラムスとの対決へ突入するのに、それがフェードアウトしてしまうのはフラストレーション!?
ということで、セッション時期からすれば、参加メンバーは一番モダンジャズらしいプレイをやっていた頃であり、それでいて前もしっかり向いていたはずです。
つまり「温故知新」ではなく、「鋭意創造」が尤も上手く結実した演奏集じゃないでしょうか。
それはウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、そいてロン・カーターというマイスル・デイビスのグループではリアルタイムのレギュラーだった3人は言うに及ばず、とにかく時代に先駆けたものをやろう! そうした意図がバンド全体から発散されていますよねぇ~♪
5曲提供されたウェイン・ショーターのオリジナルが、何れも新鮮な響きを持っているのも特筆されます。
まさに聴けば納得する他はない、充実の名盤と断言致しますが、結果的にガイド本での推薦紹介にも載る事は少なく、またジャズ喫茶の人気盤という話も聞いたことがありません。
むしろ既に述べたように、これが鳴り始めると席を立つお客さんが……。
そんな現実がなんでだろぅ、とサイケおやじは昔っから不思議なほどです。
そのあたりを皆様にもご確認いただきとうございますし、謎(?)の解明も何時かは必要だと思っているのでした。