■夢の動物園 c/w 59番街橋の歌 / Simon & Garfunkel (Columbia / 日本コロムビア)
昨日書いたとおり、ニッポンの洋楽事情には、それなりの邦題がヒットの要因だと思いますが、ひとつ間違えると、思わず失笑!?!?
文字どおり、礼を失しているとは思いますが、そんな状況場面はこれまでに多々ありまして、例えば本日ご紹介のシングル盤はサイモンとガーファンクルという、我国でも絶対的な人気を獲得している説明不要の二人組が昭和42(1967)年初夏に出した1枚で、そのローテーションは本国アメリカに準拠しているんですが、それにしても原題「At The Zoo」を「夢の動物園」とする邦題は凄過ぎませんかねぇ~~!?
そりゃ~、確かに穏やかでアコースティックな歌い出しから一転、ウキウキするようなフォークロック王道の展開は、4ビートジャズの風味と効果音を上手く使ったサイケデリックなムードをも滲ませる楽しさですから、「夢の~」という形容を振り充てた意図は理解出来ます。
しかし動物園を閉塞した社会状況に譬え、中で暮らす種々雑多な生き物達を人間のように描写した鳥獣戯画を深読みすれば……。
動物園ではあらゆる事が行われている
と、誰かが私に言った
そのとおりだね、全く
という意味深な最初の部分の歌詞がある限り、表面上で強調されている楽しい雰囲気を素直に受け取るのは、どうなんでしょうか?
実は告白しておくと、サイケおやじが掲載のシングル盤を入手したのは、決してリアルタイムではなく、サイモンとガーファンクルを蒐集する一環として、昭和50(1975)年に中古屋から掘り出したものです。
つまりこれは完全なる後追い漁盤で、一応はサイモンとガーファンクルの音源を聴き通し、この「At The Zoo」も日本では発売元がCBSソニーに移って以降の「動物園にて」という、客観的な邦題で親しんでいたわけですから、その歌詞の中身の皮肉っぽさが素敵な曲メロの逆説的効果と相まっている事を鑑みれば、思わず……。
ただし、さらに裏読みすれば、そうした表面上のウキウキ感は、まさに「うつし世は夢」という江戸川乱歩の座右の銘に通じるものがあって、「夢の動物園」と邦題をつけた担当者の懐の深さを流石と思う気持も、同時にあるんですよ。
結局、今日はサイケおやじの短絡と悔悟を綴っている事になりましたが、その意味でB面収録の「59番街橋の歌 / The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」は、まさに「そのまんま」の直訳邦題が良い感じですし、サブタイトルの「Feelin' Groovy」に偽り無し♪♪~♪
当然ながら、これは日本コロムビア盤もCBSソニー盤も共通したほどのジャストミートだったんですが、実はここにもうひとつの迷い道があって、それは近日中に書きますんで、今日はここまでと致します。
ということで、洋楽の邦題は罪作りでもあり、また親しみ易さの源泉でもあります。そして、それが無かったとしたら、せっかくの素敵な音楽が埋もれてしまう結果も数多残されたと思いますねぇ~、心底。