OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

幻の10年の現実

2009-07-22 10:32:18 | Rock

幻の10年 / The Yardbirds (Columbia / 東芝)

クリームによってエリック・クラプトンを知った私の前に屹立したのが、ヤードバーズというイギリスのロックバンドでした。

これはご存じ、クラプトン、ペック&ペイジという所謂ブリティッシュロックの三大ギタリストが順次在籍した名門グループとして、我が国でも昭和40年代半ば頃から伝説が独り歩きしていたわけですが、若き日のサイケおやじにしても、そんなに凄いのならば、絶対に聴く他は無い! と心に決めていたのです。

ところが例によって既にロックもアルバムで聴く時代に入っており、実はリアルタイムではシングルヒットを出そうと躍起になっていたヤードバーズにしても、前述した三大ギタリストが確固たる名声を得た後になっては、LPばかりが優先して発売される始末でしたから、小遣いの乏しいサイケおやじには聴くことが叶いません……。

しかし諸々の音楽マスコミによって、ジェフ・ベックとジミー・ペイジがツインリードギターを聞かせる曲がある事を知り、それが本日ご紹介の「幻の10年」です。そして勇んでレコード屋へ出向いた私を待っていたのが、B面にはエリック・クラプトンが在籍していた時代のヒット曲が収められた本日ご紹介のシングル盤だったのです。

つまり一粒で二度も三度も美味しいという徳用盤に思えたんですねぇ~♪

もちろん、これは昭和45(1970)年に売っていた再発盤なのですが、ヤードバーズが現実的に我が国で、どの程度の人気があったのかは、知る由もありません。少なくとも私はラジオのヒットパレードでも、あるいは他の番組でも聞いたことがなかったのですから、如何に三大ギタリストの存在が強烈な印象になっていたか、ご理解願えると思います。

そのヤードバーズはブリティッシュビートを代表する実力派グループとして、主にブルースやR&Bを演奏していた初期から、エリック・クラプトンが正式加入しての本格的なブレイクに繋がるわけですが、当時のメンバーはキース・レルフ(vo,hca)、エリック・クラプトン(g)、クリス・ドレア(g,b)、ポール・サミュエル・スミス(b,key)、ジム・マッカーティ(ds) という5人組でした。

そして彼等はR&B系の演奏を得意として人気を得るわけですが、バンドの方向性はマネージメントサイドの意向もあり、大衆的なヒット曲を狙うところへシフトし、そのきっかけが、このシングル盤B面に収められた「For Your Love」でした。そして結果は大成功!

しかし、そうした路線に反発したエリック・クラプトンは脱退し、以後の活躍は皆様がご存じのとおりですが、こうした経緯あって新参加したのがジェフ・ペックであり、また当時はスタジオミュージシャンをやっていたジミー・ペイジだったのです。

今日の歴史では、このジェフ・ペックが在籍していた時代を全盛期としているとおり、確かに1965年春頃から1966年末にかけて残された歌と演奏は、全く古びていないと感じるほど、斬新で永劫性が強く打ち出されています。

中でも本日ご紹介の「幻の10年 / Happenings Ten Years Time Ago」は、既に述べたようにジェフ・ペックとジミー・ペイジのツインリードのエレキギターが完全なニューロック! というよりもハードロックの花形はギタリスト! と高らかに宣言した名演でしょうねぇ~♪

まずイントロからして当時の流行だった東洋趣味が隠し味! 正直言えばストーンズの「黒くぬれ」みたいなんですが、叩きつけるようなテンションの高いリズムのキメとか、バンドが一丸となった突撃的なアタックが刺激的! しかもボーカルには神秘的なエコーが効果的に使われ、ブリブリにドライヴするエレキベースが、これまた味わい深いのです。

そして気になるツインリードのギターに関しては、モノラルミックスの所為もあるんでしょうが、どっちがどっちということもなく、低音域で終始、曲の根本となるメロディを弾いているのがジミー・ペイジ、破天荒なリズムギターと間奏の乱れたようなソロを聞かせているのがジェフ・ペックでしょうか? しかし曲と演奏の終盤になって細かいフレーズを入れてくるのがジミー・ペイジというお楽しみもあるんですが、ちょっと確証がありません。

ちなみにこの演奏に関しては、既にポール・サミュエル・スミスがプロデューサーに転向していたために、スタジオミュージシャンのジョン・ポール・ジョーンズがベースで参加していたと言われていますが、すると当時のステージではベースを弾いていたクリス・ドリアがリズムギターをやっている可能性もあり、これはなかなか興味深々です。

しかし、この曲の本当の魅力は、全体のサウンド作りがサイケデリックど真ん中の魅力にあると感じます。幾分、薄味なキース・レルフのボーカルも結果オーライでしょう。

正直、サイケおやじは最初、ペック対ペイジのギター合戦を期待していたのですが、結論から言えば、それは無く、ちょっと肩すかしだったのです。ただ、それでも「幻の10年」が気に入ったは、例えば間奏のところでの「笑い声」や「つぶやき」を効果的に使ったサウンドイメージの鮮烈さにあって、またエコーを効果的に使ったあたりも、まさにサイケデリックロックの本命でしたから、全く後悔していません。

またB面の「For Your Love」についても、既にシャリコマ曲だという話は知っていたので、ちょっと潜入観念が強かったのですが、ポップなメロディを存分に活かそうという意図が強いハープシコードの使用や中間部のロックンロールなノリは痛快至極! まさにヒット曲の王道を行く仕上がりになっているのは、流石だと思いました。

ところが後で知った事なのですが、お目当てのエリック・クラプトンは、このセッションに怒って不参加だったとか!? とすると、ギターパートはクリス・ドレアが演じているわけですから、あの「スローハンド」なギターソロが聞けないのも納得……。

ということで、煌めくギターの饗宴を聴くつもりが、ますます危ないサイケデリックの泥沼天国へと導かれた十代のサイケおやじは、長いアドリブやお経寸前のようなサイケプログレとか、モダンジャズという禁断の奥の細道を辿りはじめます。

と同時に、限りなく色彩豊かなポップスやメロディ優先主義の世界へも導かれていたのですから、結論はお金が……。

結局は、これも罪作りなシングル盤だったというわけです。

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