■青い影 / Procol Harum (Darme / キングレコード)
「ロックの名曲ベスト100」なんていう企画には必ずや選ばれるであろう、最高のヒット曲が本日ご紹介のシングル盤です。
これは、もう、言わずもがなですよねっ♪
バッハのカンカータをベースにした白人R&Bの傑作として世界中のチャートでトップに輝いた傑作曲ですが、この元ネタには、もうひとつ、アメリカ南部系ソウルの黒人シンガーとして根強い人気が今もある、パーシー・スレッジの大ヒット「男が女を愛するとき / When A Man Loves A Woman (Atlantic)」が否定出来ません。
その曲がヒットしたのは1966年夏で、その狂おしいばかりの熱血ソウルに共感したカバーバージョンや後追い曲が続出したのは芸能界の掟でもあります。そしてイギリス活動する敏腕プロデューサーのデニー・コーデルが、ブロコル・ハルムという新鋭バンドを起用して作りだしたのが、この1967年の「青い影 / A Whiter Shade Of Pale」と書きたいところなんですが……。
実はプロコル・ハルムというバンドは、決してポッと出のグループではなく、その前身はピートルズの前座として有名なパラウンツでした。彼等はビートルズのマネージャーだったプライアン・エブスタインと契約し、ビートルズと同じレコード会社から数枚のシングル盤を出している実力派です。
ただし、その音楽性がイマイチ、統一感が無いというか、R&Bやフォークロックの煮え切らない折衷スタイル……。結局はブレイク出来ないままに解散しています。
で、そのパラマウンツのメンバーが横すべり的に結成したのがプロコル・ハルムというわけですが、そのキーマンが詩人のキース・リードであったと言われています。
ちなみに結成当初のプロコル・ハルムのメンバーはゲイリー・ブルッカー(vo,p)、マシュー・フィッシャー(org)、レイ・ロイヤー(g)、デイヴ・ナイツ(b)、ボビー・ハリスン(ds) という5人に加え、前述のキース・リードが曲作りに関わっているという、後年のキング・クリムゾンのような集団でした。
もちろん、この名曲は、その5人で録音されたものだと思われます。
イントロから厳かに鳴り響くオルガンがバッハのカンタータ第14番を弾き続け、そのコード進行を活かした即興的なボーカルメロディは、「男が女を愛するとき」のフェイクに近く、なによりも幻想的な歌詞と情熱的に黒っぽく、しかし虚無的なイメージも強い歌唱が、如何にもヨーロッパ的な味わいと絶妙に化学変化をしてしまった、筆舌に尽くし難い気持ち良さが、僅か4分間に集約されているのです。
特にサビのところでグウォ~~、と巻き起こるオルガンの響きは最高ですねぇ~♪
ただし、プロコル・ハルムの不幸は、この曲ばかりが大ヒットしてしまったことでしょう。
当然ながら、同じクラシック趣味のシングルヒットを義務づけられながら、しかしバンドは新しい世界への飛躍を目指してメンバーチェンジを行ったのですから、どちらが本当の姿か分からないのがファンの気持ちでした。
そして前身バンドのパラマウンツから、ロビン・トロワー(g) と B.J.ウィルソン(ds) という屈強なハードロック根性の2人が正式に移籍した後に制作された最初のアルバムには、当然ながら「青い影」が入っていません。
おそらくバンドの本性はR&Bだったと思われるのですが、それがあればこそ、デニー・コーデルも「男が女を愛するとき」の後追いを画策したのでしょうし、バンドが後年、「ジミヘンもどき」としか言えないロビン・トロワーのギターを全面に押し出したハードロック街道へと歩み出したのも、また必然でしょう。
しかし私も含めて、多くのファンは、この「青い影」の味わいが忘れられません。
もちろんバンドも、そのあたりを考慮して、例えば「月の光」とか、クラシック趣味が横溢した名曲を出してはいますが……。
結局、プロコル・ハルムは最初から終わっていたバンドといったら失礼なのは重々承知、決定的な究極のスタイルをデビュー時に完成させてしまった悲劇があるように感じます。
その所為でしょうか、「青い影」はコンサート終了後や映画館の客出しBGMにも使われることが多く、それがまたジャストミートなんですねぇ~。実際、その場の感動が余韻として強くなるというか……。
ちなみに、プロコル・ハルムのツインキーボード編成は当時としても異色でしたが、「青い影」が大ヒットして後にデビューしたザ・バンドが、やはりそうだったことも印象的です。しかもデビューアルバムには「怒りの涙 / Tears Of Rage」なんていう、「青い影」もどきの名曲までが入っているのですから!?
ということで、本日は始まりが終わりという、刹那的な結論なりました。
それにしても日本盤のジャケットは「赤い影」という感じですね。
暴言ご容赦願います。