OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ストーンズの「ゲット・ヤー」別バージョン

2009-04-10 12:04:50 | Rolling Stones

Get Yer Alternate Ya-Ya's Out 1969 / The Rolling Stones (Idol Mind)

今もギンギンに転がりつづけるストーンズは、何時の時代も好きですが、殊更1969年は特別だと思います。

それはバンドの要であったブライアン・ジョーンズを失って、もはやこれまで……、と思われたどん底から這い上がった執念! そして新作レコーディングの素晴らしい成果と久々に現場復帰が叶った強烈なライブステージ!

そうした当時の諸々が映画では「ギミー・シェルター」、レコードではライブ盤「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」で克明に楽しめるわけですが、特に後者では驚異的な売り上げで海賊盤の存在意義を強くしたブートの名盤が出回り、まさに今に繋がるストーンズの全てが、ここから再スタートしています。

さて、本日ご紹介のアルバムも、そうした歴史を如実に物語る1枚で、先週ゲットしたばかりの新作ブートです。

元ネタは前述した公式ライブアルバム「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト」のデモミックスを収録したアセテート盤ですが、これは既にストーンズのブートでは大御所の Vinyl Gang Pro. から「Fuck yer Ya Ya's Out!」として発売され、名盤認定されていたものです。

しかしそれには欠点があり、流出したアセテート盤の前半に大きな傷があった所為でしょうか、チリチリブチッという周期的なノイズが約1秒おきに入っていたのです。

それが今回のブツでは、奇跡的に別なアセテート盤が発見されたことにより、ちょっとした別物として素直に楽しめるようになりました。

もちろんアセテート盤そのものにあるチリチリという針音ノイズは避けようもありませんが、それを無理に消し去ることの無いリマスターと相当に高くなった音圧ゆえに、なかなか迫力のある音作りになっていますので、公式盤と比べて随所に違う部分がたっふぷと楽しめます。

 01 Opening
 02 Jumpin' Jack Flash
 03 Carol
 04 Stray Cat Blues
 05 Love In Vain
 06 Midnight Rambler
 07 Sympathy For The Devil
 08 Live With Me
 09 Little Queenie
 10 Honky Tonk Women
 11 Street Fighting Man

まず初っ端の「Jumpin' Jack Flash」では間奏で公式盤にはなかった、キース・リチャーズによるギターソロがダビングされています。しかも歓声はステレオなのに演奏はモノラルに近いミックスなんですねぇ~♪ ベースの音も太くて、これが意想外とも思える熱気です。

また続く「Carol」も同様に演奏だけがモノラルに近いミックスですが、ここではミックスダウンの様々な試みというか、フェーダーを上げ下げして音量を調節している感じが楽しめますよ。

さらに「Stray Cat Blues」「Love In Vain」「Sympathy For The Devil」の3曲はステレオミックスながら、チャンネルが左右逆!

「Midnight Rambler」は演奏前のハーモニカとMC部分がノーカットですし、「Little Queenie」ではダビングされている3本目のギターがはっきりと聞こえ、逆にピアノがひっこんでいます。おまけにキース・リチャーズが自分で楽しんでいるコーラスが良い感じ♪♪~♪ これは続く「Honky Tonk Women」でも、コーラスで歌いまくりのキース・リチャーズというお楽しみに繋がります。

その他にもミック・ジャガーのMCやボーカルが、随所で違いまくって書ききれないほどですし、当然ながら歓声のミックスも大きく異なっていますので、このあたりは何れ、拙サイト「サイケおやじ館」の「転石音盤史」で解明していく所存です。

ちなみにボーナストラックは、逆ミックスになっていた前述3曲を公式盤と同じにする逆々ミックスで収録していますよ。これもまた、嬉しいですね。

 12 Stray Cat Blues
 13 Love In Vain 
 14 Sympathy For The Devil

う~ん、それにしても1969年のストーンズは、やはり格別! なんというかヘヴィなグルーヴがドロドロにファンキーなんですねぇ~♪ それは多分、キース・リチャーズもミック・テイラーもエレキはギブソンのギターを使っているからじゃないでしょうか? ライブの現場で、これほど重量感のある、迫力の音が作りだされたのは最高! それをしっかりと録音したグリン・ジョンズの手腕にも拍手喝采ですし、そういう音の作り方の一端が、このブートでは楽しめると思います。

ということで、なかなか素敵なブツなんですが、残念ながらCDRです。まあ、それゆえに罪悪感が無いということも苦笑なんですが、そのあたりをご承知の上でしたら、海賊盤入門には最適かもしれません。

最後になりましたが、これで火がついたサイケおやじは久々に「転石音盤史」も更新致しました。お題は映画「ギミー・シェルター」です。よろしくお願い致します。

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これに尽きるディック・ジョンソン

2009-04-09 10:54:08 | Jazz

Music For Swinging Moderns / Dick Johnson (EmArcy)

白人アルトサックス奏者の名手といえばリー・コニッツ、アート・ペッパー、フィル・ウッズあたりが即座に挙がるところでしょう。そして別格がポール・デスモンドでしょうか。

バリバリのチャーリー・パーカー信奉者というフィル・ウッズを除いては、3人ともが如何にも白人らしいスマートなフィーリング、流麗なフレーズ展開と歌心の妙が実にクールで耽美秀麗な名人でしたから、その味わいに深くシビレるサイケおやじにとって、同じスタイルのプレイヤーを探究してしまうのは、ご理解願いたいところです。

で、そんな精進の中で巡り合ったのが、本日の主役たるディック・ジョンソンです。

この人はどうやらビックバンドで活躍していたマルチリード奏者らくし、クラリネットも巧みですが、やはり本領はクールにして甘美、そしてスイングしまくるアルトサックスに絶大な魅力を感じてしまいます。

ポール・デスモンド系の音色でリー・コニッツとアート・ペッパーをミックスさせたようなアドリブを演じられたら最後、完全に虜のアルバムが本日ご紹介の1枚というわけです。

録音は1956年2月29日&3月27日、メンバーはディック・ジョンソン(as)、ビル・ハバーマン(p)、チャック・セイゲル(b)、ボブ・マッキー(ds)、そして3月のセッションではデイヴ・ポスコンガ(b) が交代参加していますが、いずれもほとんど無名に近い面々ながら、演奏はバンド全員の意思統一も鮮やかな素晴らしさです。

 A-1 The Belle Of The Ball (1956年3月27日録音)
 A-2 The Lady Is A Tramp (1956年2月29日録音)
 A-3 Honey Bun (1956年3月27日録音)
 A-4 Why Was I Born (1956年3月27日録音)
 A-5 Poinceana (1956年3月27日録音)
 B-1 The Things We Did Last Summer (1956年2月29日録音)
 B-2 Like Someone In Love (1956年3月27日録音)
 B-3 Stars Fell On Alabama (1956年3月27日録音)
 B-4 You've Changed (1956年3月27日録音)

上記演目は良く知られたスタンダード曲も嬉しいかぎりで、結論からいうとA面がアップテンポの爽快サイド、そしてB面がしっとり愁いのスローサイドという感じでしょうか。もちろんディック・ジョンソンは、既に述べたようなスマートな歌心を全開させた名演を披露し、バンドのノリも最高にスイングしまくっています。

痛快なアップテンポでドライヴし、流麗なフレーズ展開と甘美なアルトサックスの音色が素晴らしい「The Belle Of The Ball」では、ジョン・ウィリアムスも顔負けの弾みまくったピアノを聞かせてくれるビル・ハバーマンも熱演で、これ1曲だけでツカミはOK! 後半のバロック風室内楽というアレンジも気が利いています。

そうした素晴らしさは続く「The Lady Is A Tramp」のウキウキした演奏でも存分に楽しめ、特にテーマのサビで聞かせるラテンビートのグルーヴは最高に白人っぽくてお洒落♪♪~♪ もろちんディック・ジョンソンの歌心も満点です。

ということは、リズム隊のスマートな熱演も言わずもがな、「Honey Bun」での楽しい雰囲気やビシッとした4ビートを堪能させてくれる「Why Was I Born」、さらに浮かれたラテンビートが疾走感溢れる4ビートへと一瞬にして転換する「Poinceana」のスピード感!

それがあってこそ、ディック・ジョンソンのアルトサックスが冴えわたりのフレーズを連発出来ると思うほどです。実際、そのアドリブやメロディフェイクにはリー・コニッツとアート・ペッパーの「イイトコ取り」が満載とはいえ、それは物真似というよりは、実に気持良い時間が楽しめるのです。

そしてB面は既に述べたようにスロバラの桃源郷♪♪~♪

まずは「The Things We Did Last Summer」での、せつないメロディフェイクに感涙しますよ。ポール・デスモンド直系の音色もイヤミがありませんし、それでアート・ペッパー流儀のフレーズを演じられたら、しんぼうたまらん状態は必至でしょう♪♪~♪

さらに優しさがジワジワと広がっていく「Like Someone In Love」、クールな忍び泣きという「Stars Fell On Alabama」、悔恨の情が滲む「You've Changed」という抜群の表現がダイレクトに歌心へと転化した3連発が続きますから、あぁ、何時までも聴いていたほどです。

録音も、このレーベル特有の明るくてパンチの効いた音作りですし、要所で上手く使われているエコーも素晴らしいスパイスだと思います。

ちなみにディック・ジョンソンは、これがおそらく初リーダー盤でしょう。そしてこの後にはリバーサイドへもリーダー作を残していますが、そちらは何故か黒人色が強くなったスタイルなのが、個人的にはちょっと……。

ですから私にとって最高のディック・ジョンソンは、このアルバムに尽きています。そして春の陽気な日々にはジャストミートの演奏集として、ぜひとも皆様にもお楽しみ願いたいと思います。

所有はもちろん、1980年代後半に出た日本盤アナログLPですが、これも何時かはオリジナルが欲しいもんです。

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ジャッキー・バイアードの笑顔が怖い

2009-04-08 12:12:24 | Jazz

Sunshine Of My Soul / Jaki Byard (Prestige)

デューク・エリントンのピアノを聴いていると、この人も聴きたくなります。

ジャッキー・バイアードはチャールズ・ミンガスのバンドレギュラーとしての活動が一番有名でしょう。そこで聞かせてくれたピアノはブルースからフリーまで広範な音楽性を包括したものでしたし、スタイル的には所謂ハーレム風ストライドからブギウギ、シカゴ系ピアノブルース、セロニアス・モンクと同系列の不協和音、セシル・テイラーも顔色無しの無調フレーズ乱れ打ち……、等々!

ですから、聴いていて決して、和めるものではありません。

しかも本人はピアノ以外にもサックスやギター、各種打楽器やトランペット、トロンポーンまでも堂々とやってしまう楽器の天才でしたから、そのリーダー盤もとりとめのない感じが強く、あまり一般ウケはしないものばかりです。

さて、このアルバムは、そうした中でも比較的統一された意図がストレートに表現された感じでしょうか、ピアノトリオの強力盤!

録音は1967年10月31日、メンバーはジャッキー・バイアード(p,g)、デヴィッド・アイゼンソン(b)、エルビン・ジョーンズ(ds,tympani) という物凄い3人組! 1曲を除いてのオリジナルも意欲的で、その奔放な演奏に圧倒されます。

A-1 Sunshine
 基本はワルツでモードを使ったアップテンポの曲ですから、導入部はエルビン・ジョーンズのポリリズムドラミングとディヴッド・アイゼンソンの不気味なベースが露払い! そしてちょっと愛らしいテーマメロディを弾いてくれるジャッキー・バイアードという構図が、全くのジャズ王道です。
 しかしそれが持続するわけではありません。
 ジャッキー・バイアードが率先してフリーな迷い道へと踏み込めば、ディヴッド・アイゼンソンが忽ちそれに追従しますから、エルビン・ジョーンズも穏やかではありません。なんとかキープしている王道のジャズビートがいじらしいほどです。それを嘲笑うが如きジャッキー・バイアードの自意識過剰もせつなくなります。
 ただしそういうものが、所謂デタラメ派フリージャズとは一線を隔しているんですねぇ~♪ これは私の感性の問題かもしれませんが、聴いていただければ納得される皆様も多いんじゃないでしょうか? そこがジャッキー・バイアードの魅力の秘密かもしれません。
 ちなみにベースのデヴィッド・アイゼンソンはオーネット・コールマンのバンドレギュラーとして大活躍した隠れ名手ですが、決してデタラメ派ではなく、凄いテクニックと音楽性を兼ね備えた実力の証明は、このアルバム全体に重要な働きとなっています。

A-2 Cast Away
 いきなり侘しいようなデヴィッド・アイゼンソンのアルコ弾き……。この妖怪人間べムのようなメロディ、そこに絡んでくるギターは、なんとジャッキー・バイアードが弾いているのですが、エルビン・ジョーンズがティンパニーを敲いて作るアクセントも陰鬱です。
 そしてジャッキー・バイアードのピアノが、これまたデタラメというか、ほとんど意味不明にしか、私には聞こえません。あぁ、疲れますよ……。
 しかしそれでも針を上げられない、妙な魔力があるんですねぇ……。デヴィッド・アイゼンソンのベースに麻薬的なものがあるんでしょうか……。それともエルビン・ジョーンズの意外にも考えぬいた打楽器が……。

A-3 Chandra
 一転してビバップ調の4ビート演奏が始まりますが、これって確か、チャーリー・マリアーノと一緒にやっていたような……。あっ、これは原盤裏ジャケットにも、そう記載してありました。
 で、ここでの展開はゴキゲンなモダンジャズではありますが、ジャッキー・バイアードのピアノスタイルは既に述べたように、セロニアス・モンクや初期セシル・テイラーのような、些か分断したハーモニーとフレーズを自分流儀に再構築する手法に拘泥しています。
 それゆえにエルビン・ジョーンズが十八番のオクトパスドラミングやデヴィッド・アイゼンソンの自意識過剰というベースワークが、尚更に痛快至極!
 曲は一応、ブルースですが、全然、それぽっく無いあたりが賛否両論でしょうねぇ。しかし楽しいですよ♪♪~♪ 大団円はデューク・エリントンになるという「お約束」が嬉しくもあります。

B-1 St. Louis Blues
 このアルバムでは唯一のスタンダード曲というよりも、あまりにも有名なジャズの古典ですから、汎用スタイルのジャッキー・バイアードには十八番の展開でしょう。ストライド奏法主体にテーマを弾いてくれるあたりの楽しさは格別ですねぇ~♪ まさに温故知新です。
 しかしそこに絡んでくるのが、デヴィッド・アイゼンソンの不気味なアルコ弾きとエルビン・ジョーンズのティンパニーで、ともに素晴らしいスパイスながら、やはり一筋縄ではいかない雰囲気となります。
 そしてアドリブパートでは淡々とした4ビートが、このアルバムの中では一番に普通とはいえ、それが逆に怖いムードになっていきます。う~ん、逆もまた真なり!?
 ジャッキー・バイアードが楽しいフレーズを弾くほどに、アブナイ雰囲気が横溢していくんですねぇ~。何故っ?

B-2 Diane's Melody
 これはシンプルにして、とても美しいメロディが印象的な名曲でしょう。
 素直にテーマを弾いてくれるジャッキー・バイアードに寄り添うのが、気分はロンリーでありながら、実はエキセントリックなデヴィッド・アイゼンソンのアルコ弾きというも素敵です。
 そしてエルビン・ジョーンズのしぶといブラシ、デヴィッド・アイゼンソンの野太い4ビートウォーキングを従えたジャッキー・バイアードが、自在にメロディをフェイクし、せつないほどに辛辣なアドリブを聞かせてくれるんですから、たまりません。
 ただしそれは、決してストレートではありません。様々な思惑や嗜好がゴッタ煮です。
 まあ、このあたりをどう楽しむかによって、ジャッキー・バイアードという人に対する評価や好き嫌いが分かれてしまうんでしょうが、私は好きです。
 最終パートの無伴奏なピアノ、それに絡んでくるベースというところが、特に良いですね♪♪~♪

B-3 Trendsition Zildjian
 そして最後は、ドカドカ煩いエルビン・ジョーンズの爆裂ドラミング! 全力疾走でデタラメを演じるジャッキー・バイアード! さらに激ヤバのデヴィッド・アイゼンソン!
 そんなトリオがヤケッパチな心情吐露ですから、スカッとしますよっ!
 これをフリー・ジャズといってしまえば、全くそのとおりなんですが、ジャッキー・バイアードは無機質に音を羅列しているのではない、と信じたいです……。う~ん、やっぱり無理か……。でも、スカッとするのは事実です。

ということで、サイケおやじはB面を聴くことが多いです。そのアンニュイなスタートから過激な叫びまで、実に危険なムードが自然に流れていく展開にシビレます。まさにジャズ喫茶黄金時代の一場面にはジャストミート!

なんともサイケで黒人ソウルというか、アメリカの缶詰パッケージみたいなジャケットイラストのど真ん中でニンマリというジャッキー・バイアードの意図が、これほどズバリと表現された局地的名盤も無いと思います。

所謂「歌心」なんて、このアルバムには無縁ですから、決して和めるような作品ではありませんが、ジャズのひとつの側面は十分に楽しめるんじゃないでしょうか。

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デュークな4人の緊張と和み

2009-04-07 12:37:50 | Jazz

Duke's Big 4 (Pablo)

新年度は初っ端から仕事関係のゴタゴタやトラブルが多くて、ちょっと凹んでいます。まあ、意気ごみは大歓迎とはいえ、それだって周囲との協調がなければ迷惑な話……。

う~ん、このあたりはジャズと同じかもしれませんねぇ。個人芸の凄いアドリブがあったとしても、全体の纏まりがなければ独り善がりですし、フリーのデタラメなんて、サイケおやじには全く認められるものではありません。

個人と全体の協調、ヤル気と調和のギリギリのバランスが名演・名盤の必須条件だとすれば、一般社会の仕事だって同じだと思いつつ、本日はこれを出してしまいました。

アルバムには誰がリーダーとは明記されていませんが、タイトルだけで至極当然! デューク・エリントンがピアニストとして、名人揃いのカルテットを率いた演奏集です。

録音は1973年1月8日、メンバーはデューク・エリントン(p) 以下、ジョー・パス(g)、レイ・ブラウン(b)、ルイ・ベルソン(ds) が参集していますから、これで悪い演奏になったら世界は破滅というしかありませんね。演目も所縁の名曲ばかりです。

A-1 Cottontail
 デューク・エリントン楽団としてはベン・ウェブスター(ts) をメインに押し出した循環コードのリフ曲とあって、今日でもジャムセッションには欠かせないテーマとなっています。
 威勢の良いアンサンブルから各人が、俺に任せろ的な自己主張とバンドとしての纏まりを大切にしたバランス感覚は流石! ジョー・パスの力んだアドリブソロを背後から強力にプッシュするルイ・ベルソンのブラシの冴え! その間で痛快な4ビートウォーキングを聞かせ、さらに短いながらも練達のアドリブを披露するレイ・ブラウン!
 そして最後にはルイ・ベルソンの豪快無比、ド迫力のドラムソロが炸裂すれば、そこにはウリだったツインのバスドラも顕在のようです。
 気になる御大、デューク・エリントンのピアノは全体をリードしつつ、的確な指示を出す感じに留まっていますが、ここではそれも正解だと思います。まずは小手調べ♪♪~♪

A-2 The Blues
 単純明快な曲タイトルですが、歴史的にはデューク・エリントンが早世した天才ベース奏者のジミー・フラントンと1939年にデュオ録音を残している演目とあって、特にレイ・ブラウンが神妙です。
 ここでは存在感抜群のパッキング、さらに滋味豊かなアドリブソロと間然することのない匠の技を披露していますが、さらに凄いのがジョー・パスのギター! オクターヴ奏法から小刻みなフレーズの連続美技、しぶといオカズやコード弾きも素晴らしいかぎりです。
 そして相当にキワドイ事をやっているデューク・エリントンのピアノも結果オーライでしょう。その直截的なピアノタッチが実に良い感じ♪♪~♪

A-3 The Hawk Talks
 ルイ・ベルソンの作曲になっていますが、かつてはデューク・エリントン楽団の看板スタアとして、自らのドラムスが大活躍した名演の再現を狙ったのでしょうか。
 しかしここではカルテットの演奏とあって、コード進行を指示する声やジャムセッション的な和みと協調、さらに個人芸の競い合いも鮮やかに楽しいムードです。
 肝心のルイ・ベルソンはブラシの至芸と強靭なバスドラ、メリハリの効いたスティックさばきが流石の名人! アドリブに専心する他の3人をがっちりと支えながら、同時に意地悪く煽る部分にもニンマリとさせられます。
 そしてここでもジョー・パスが何気なく凄いです!

A-4 Prelude To A Kiss
 これはお馴染み、デューク・エリントンの代表作という甘美なバラードの決定版♪♪~♪ 同楽団ではジョニー・ホッジス(as) の名演が歴史になっていますが、ここでは作者本人のピアノが良い味だしまくり♪♪~♪
 メロディとコードの魔法を解き明かすかのような味わい深さが最高ですから、ジョー・パスも極みつきのギターを聞かせてくれますし、レイ・ブラウンの小技の冴えも素晴らしいと思います。

B-1 Love You Madly
 これもデューク・エリントン的な、如何にもの名曲ですが、小編成の演奏としてはオスカー・ピーターソンの名盤「シェークスピア・フェスティバル (Verve)」に収録のバージョンが決定版だと、私は思います。
 ですから、そこで素晴らしいベースを聞かせていたレイ・ブラウンにしても、俺に任せろ!
 繊細にして豪胆、歌心とエグイばかりのジャズビートが完全融合のベースワークにはデューク・エリントンも感服したのか、本当に最高のピアノで応えていますし、ジョー・パスやルイ・ベルソンにとっても同じ気持ちなのでしょう、このアルバムの中でも特に良い雰囲気が横溢した、実にハートウォームな演奏か楽しめます。

B-2 Just Squeeze Me
 そして前曲の良いムードが見事に継承され、さらにジャズの素晴らしさが徹底的に追求された名演が続きます。
 緩やかなジャズのピートはしなやかにして力強く、なんとも怠惰な休日の午後のような主題が、大人のお洒落で演じられていく快感は、まさに至福♪♪~♪
 各人のアドリブも流石に名手の証を立派に果たしていますが、それよりも全体のバンドアンサンブルのナチュラルな感性にシビレます。

B-3 Everything But You
 あまり有名では無い曲ですが、聴けば一発、まさにデューク・エリントンというリフが耳に馴染んでいることでしょう。なにしろこれは、後に様々にフェイクされてモダンジャズの中核を成したと思われるほどですから!
 で、ここではレイ・ブラウンのベースが、実に奔放! ですからデューク・エリントンのピアノも大ハッスルというか、とてもシンプルに正統派ジャズの本領を聞かせてくれますし、ジョー・パスのリラックスしたアドリブやルイ・ベルソンの楽しいドラミングもあって、これがアルバムの締め括りにはジャストミート♪♪~♪

ということで、和みと緊張、自己主張と協調のバランスが実に秀逸な作品だと思います。

参加メンバーの中では、偉大なるデューク・エリントンが雲上人でありながら、やはりカルテットの一員としての役割が皆が平等だったのでしょう。お互いのリスペクトが滲み出た雰囲気が、聴いているだけでジンワリと伝わってきます。

ちなみにデューク・エリントンとレイ・ブラウンは、これに先立つ約1ヵ月ほど前に、やはり同レーベルにデュオの名作を吹きこんでいますから、コンビネーションはさらに鉄壁! ですからジョー・パスが流麗にギターを歌わせ、ルイ・ベルソンがリズムとビートの楽しさを押し出すのもムベなるかなです。

地味なアルバムジャケットですが、中身は超一級品として、末長く愛聴出来る作品だと信じています。

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ハーモニカの胸キュンインスト盤

2009-04-06 13:13:41 | Pops

Alfie / Eivets Rednow (Gordy)

哀愁系楽器の筆頭といえば、私はハーモニカだと思います。その郷愁、琴線をダイレクトに刺激してくるような音色は、とても魅力的ですよねぇ。そして同時にダーティなファンキー味も表現出来るところから、ブルースやフォークにも使われることが多いわけですが、その世界ではリトル・ウォーターやジェームス・コットン、またロックではブライアン・ジョーンズやポール・バターフィールド、そしてジャズではトゥーツ・シールマンス、はたまたフュージョン期にはりー・オスカーという人気者も出現したほど、身近に凄い名人が大勢!

そして本日ご紹介のイーヴェッツ・レッドナウもそのひとりとして、私が最も好きなハーモニカ奏者です。

ん~、この人、だぁ~れ?

という疑問も今では有名! Eivets Rednow こそは Stevie Wonder の別名にして、業界では慣例という逆さ綴りでやってしまった、1968年の別プロジェクトによる企画盤というわけです。

事の発端は当時ヒットしていたバート・バカラック作曲による素敵なメロディ、「Alfie」をスティーヴィー・ワンダーがカバーすることになり、しかし、その何弱なメロディを歌うことに制作者側が反対したとか、あるいはスティーヴィー・ワンダー自身が他人のカバーをストレートに歌うことに難色を示したとか、諸説あるようですが、とにかく出来上がったのはスティーヴィー・ワンダーが幼少時代から得意としていたハーモニカによるインストバージョンでした。

そしてこれが、実にせつなく、胸キュンメロディの泣きバージョン♪♪~♪

まさに青春の情熱と哀しさが絶妙にミックスされた最高の仕上がりでしたから、会社側もこれをシングル盤として発売するのに吝かではなく、しかし当時は天才少年歌手からイメージチェンジを図っていたスティーヴィー・ワンダーの諸々の事情から、前述したような変名での発表となりましたが、もちろん結果は小ヒットに終わっています。

ところが、その魅力はやはり絶大というか、業界の評判も良かったところから、ついにはアルバム企画にまで発展し、そして出来上がったのが本日ご紹介の1枚というわけです。

 A-1 Alfei
 A-2 More Than A Dream
 A-3 A House Is Not A Home
 A-4 How Can You Believe
 A-5 Never My Love ~ Ask The Lonly
 B-1 Ruby
 B-2 Which Way The Wind
 B-3 Bye Bye World
 B-4 Grazing In The Grass

全体の作りはスティーヴィー・ワンダー自らが演奏するハーモニカ、キーボード、そしてドラムスや打楽器をメインにしつつも、ゴージャスなオーケストラも配置された、まさにモータウンサウンドの秘密が解き明かされるような雰囲気で、実にたまりません。

そしてやっばりスティーヴィー・ワンダーのハーモニカの魅力は絶大です!

それは今日まで、数多くのヒット曲でも立派に実証されているとおり、独得の泣きメロフェイクとブレスの妙が、私の最も好むところでしたから、このアルバムの存在を知った時には本当にワクワクして即ゲット♪♪~♪ 連日連夜、聴きまくり、カセットにコピーして車の中でも鳴らしまくっていたほどです。

とにかく前述した「Alfei」の雰囲気の良さ、豪華絢爛なオーケストラをバックに、せつせつとメロディをフェイクしていくハーモニカは、まさに「スティーヴィー節」が全開です。

また続く「More Than A Dream」は、やはりメロディ展開やコード進行がモロに「スティーヴィー節」という、作者会心のオリジナル曲で、そのアップテンポの展開にシビレが止まらないほどです♪♪~♪ ボサロックのソウルジャズ的解釈が最高潮の中を、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカが自在に歌いまくっていますよ。

さらに3曲目の「A House Is Not A Home」は哀愁どっぷり路線♪♪~♪ このメロディと雰囲気がダイレクトに、我が国の昭和40年代映画やテレビドラマの劇伴音源へ影響していたのがミエミエの素晴らしさ♪♪~♪ サイケおやじにとっては、まさに青春の一幕が蘇ってくるスローな名曲名演になっています。

あぁ、このA面ド頭からの3連発で、このアルバムの価値は絶大というわけですが、しかしこのアルバムにはハーモニカだけではなく、スティーヴィー・ワンダーのキーボードを前面に出した演奏も入っていて、その決定版が「Which Way The Wind」です。

これはもちろんスティーヴィー・ワンダーの作曲によるものですが、そのメロディ展開からアレンジの細部に至るまで、まるっきり昭和歌謡曲♪♪~♪ 完全に辺見マリが歌っても違和感が無いという素晴らしさ♪♪~♪ 本当に歌詞が付けられてパクられたに違いないと確信されるはずです。「へぇ、やめてぇ~」ってな感じ♪♪~♪

あぁ、もう書いていて泣けてくるほどです!

そういうアレンジの妙も、このアルバムでは大きな魅力になっていて、例えばソフトロックの代表選手だったアソシエィションのヒット曲「Never My Love」とモータウンのドル箱グループのフォートップのヒット曲「Ask The Lonly」を合体させたメドレーが、本当に心地良い限り♪♪~♪ もちろんスティーヴィー・ワンダーのハーモニカも歌って、泣いての名演を聞かせています。

そのインストパートには、もちろんアドリブもきちんとありますが、それがまた非常に明快というか、気持良いのです。

機会があれば聴いていただきたい、としか締め括りには書けませんが、個人的には愛聴盤♪♪~♪ 復刻CDも出ていると思います。

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最高に危険な関係!

2009-04-05 12:07:47 | Jazz

les liaisons dangereuses / Art Blakeey's Jazz Messengers (Fontana)

フランス映画「危険な関係」のサントラ音源として有名な、所謂シネジャズの傑作盤です。

もちろん映画そのものには、ここに収められた演奏が全て使われているわけではなく、フィルムの映像に合わせて、その一部が編集されて聞かれるだけです。つまり楽曲はスタジオで完全演奏されながら、実際のサントラ音源とは異なっているわけですから、ジャズメッセンジャーズの熱演を楽しむには、このアルバムが必須というわけです。

ちなみに個人的な感想ですが、映画そのものは世評ほど名作だとは思えないサイケおやじにしても、このアルバムのシビレる魅力は絶大です。

それともうひとつ、主題曲「危険な関係」に関しての有名なゴタゴタに、デューク・ジョーダンの不遇がジャズの歴史になっています。

それは関連楽曲の作者クレジットが全て Jacques Marray というフランス人名義になっており、実際にテーマ曲を書いたデューク・ジョーダンには印税収入がほとんど入ってこなかったという始末です。

このあたりは、当時の映画制作のシステムでは当たり前というか、映画本篇の音楽担当者や関係者がその権利を丸ごと取得するのが慣例だったようで、デューク・ジョーダンも泣き寝入り……。しかしこの事実がアメリカのジャズ界の知るところとなり、ついに1962年になってチャーリー・パーカーの未亡人であるドリスが自己のレーベル=チャーリー・パーカー・レコードにデューク・ジョーダン名義でこの名曲を吹き込ませ、堂々と本当の作曲者を世に公表しています。

また他にも、このアルバムの演奏の中には、どう聞いてもベニー・ゴルソンが書いたとしか思えない楽曲もあるんですよねぇ。所謂ゴルソンハーモニーっぽいアレンジやメロディが……。

まあ、それはそれとして、録音は1959年7月28&29日のニューヨーク、メンバーはリー・モーガン(tp)、ボビー・ティモンズ(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) というジャズメッセンジャーズ本隊に加え、フランス人サックス奏者のバルネ・ウィラン(ts,ss)、デューク・ジョーダン(p)、それに数名の打楽器奏者が助っ人として彩を添えています。

A-1 No Prpblem (1st version) / 危険な関係のブルース
 これが実際はデューク・ジョーダンの書いた、あまりにも琴線に触れまくりというモダンジャズの大名曲で、マイナー調の胸キュンメロディと豪快なハードバップの4ビートが完全融合した熱演になっています。
 あぁ、この一緒に口ずさめるメロディのせつない素晴らしさ、ヘヴィで躍動的なジャズのビートの心地良さ♪♪~♪ ここまで親しみ易くて、しかもバカにされていない名曲も稀でしょう。
 もちろんアドリブパートの充実も、まさにハードバップが完熟していた証の名演続きで、まずはパネル・ウィランがハードバップ王道のテナーサックスで実にカッコ良く、続くリー・モーガンは猪突猛進! トリッキーで鋭角的なフレーズの冴え、鳴りまくるトランペット響きが痛快至極です。
 そして剛直なベースを響かせるジミー・メリット、変幻自在に燃え上がるアート・ブレイキーのドラミングは言わずもがな、歯切れの良いピアノタッチでファンキーなアドリブを演じてくれるボビー・ティモンズが流石の存在感!
 あぁ、何度聴いてもシビレがとまりません♪♪~♪

A-2 No Hay Problema / 危険な関係のサンバ
 全曲同様のテーマメロディをリズム隊だけでサンバ調に変奏したトラックで、ここでは特にジョン・ロドリゲス、トミー・ロペス、ウィリアム・ロドリゲスという3人の打楽器奏者が参加した、アート・ブレイキーとアフロキューバンボーイズ名義の演奏です。
 ボビー・ティモンズの弾みまくったピアノは、なんとなくキャバレーモードではありますが、コンガやボンゴが入ったリズム的な興奮はアート・ブレイキーのルーツ探究っぽいドラミングとグルになった痛快さですし、ここでも野太いジミー・メリットのペースがシンプルな凄味を聞かせてくれます。

A-3 Prelude In Blue / a“L'Esquinadw”
 これも聴けば一発、非常に有名なメロディですが、作者のクレジットが???
 まあ、そんなこんなは別にして、ここでの演奏はバルネ・ウィラン(ss)、デューク・ジョーダン(p)、ジミー・メリット(b)、アート・ブレイキー(ds) のカルテットが、ジェントルで気分なロンリーの決定版♪♪~♪
 とにかくパネル・ウィランの艶やかなソプラノサックスが何時までも忘れられなくなるでしょう。その音色と歌心の素晴らしさ♪♪~♪ 告白すればサイケおやじは、この演奏を聴いてバルネ・ウィランのファンになったのです。
 そしてデューク・ジョーダンの、せつない美メロしか出ないアドリブにも完全胸キュン状態♪♪~♪ 本当に泣けてきますよ。
 さらにそこからラストテーマへと繋げていくバルネ・ウィランの出だしのフレーズが、もう絶妙としか言えません。これにシビレなかったら、ウソですよねぇ~。
 おまけ風に続いていく最後のコーダー部分の余韻も、セックスの後の心地良い疲労のようで、あのエリック・クラプトンの「Layla」で聞かれる後半のパートと双璧じゃないでしょうか。

A-4 Valmontana (1st version)
 そしてこれは威勢が良くて、さらにソフトな黒っぽさが素晴らしいという、所謂ゴルソンハーモニー的な隠れ名曲♪♪~♪
 テーマアンサンブルは言わずもがな、アドリブに入っていくバルネ・ウィランのフレーズなんか、モロにベニー・ゴルソンを意識しているのがミエミエで、思わずニンマリですよ。
 またじっくりとハードバップ魂を発散していくリー・モーガンのバランスの崩れ方が、結果オーライの潔さ♪♪~♪ そうした即興の面白さをがっちりと纏めていくリズム隊の堅実さとグイノリのグルーヴは、やはり全盛期の凄さだと思います。

B-1 Miguel's Party / ミゲルのパーティ
 これもベニー・ゴルソンとしか思えない曲調の名演で、ミディアムテンポのグルーヴィな雰囲気の良さ、そしてアドリブの颯爽としたファンキーな連なりが、たまりません。
 閃きに満ちたリー・モーガン、幾何学的なフレーズを繰り出しながらハードバップを追求するバルネ・ウィラン、多彩な技で煽るアート・ブレイキーのドラミングも素晴らしく、ゴスペルムードを抑えつつ、しぶといピアノを聞かせてくれるボビー・ティモンズが、至極真っ当な黒人ジャズを聞かせてくれます。

B-2 Prelude In Blue / Chez Miguel
 これはA面同曲のアップテンポバージョンで、演じているのはバルネ・ウィラン入りのジャズメッセンジャーズですから、グイノリのハードバップが「お約束」です。
 ただしA面のバージョンが素晴らしすぎるというか、個人的にはそちらに夢中ですから、これも名演ながら印象はイマイチという勿体無さ……。
 それでもリー・モーガンの強烈な自己主張には圧倒されると思います。

B-3 No Prpblem (2nd version)
 これもド頭「危険な関係のブルース」の別バージョンですが、ここではテーマメロディの前に強烈にアフロなリフが付けられ、さらにアフリカ土着のビートが隠し味というアンサンブルが凄すぎます!
 もちろん、痛烈にテンポアップした演奏は凄味さえ感じるほどに充実し、リー・モーガンの直線的なツッコミ、バルネ・ウィランの硬質なアドリブライン、そして容赦無いリズム隊の煽りには震えがくるほどです。
 ボビー・ティモンズのピアノからアート・ブレイキーを要にしたソロチェンジのスリルも最高ですから、思わず興奮のイェ~ェェェェェ~!

B-4 Weehawlen Mad Pad
 これは即興的なパートで、リー・モーガンのアドリブを主体としたミディアムテンポの演奏ながら、やはり全盛期の勢いが完全に表出した名演だと思います。
 つれを受け継いだバルネ・ウィランの歌心もニクイばかりですから、フェードアウトしてしまうのが全く勿体ないかぎり……。

B-5 Valmontana (2nd version)
 そしてオーラスは、これもA面に収録されている同曲の別バージョンで、ますますゴルソンハーモニー色が鮮明になっているテーマ合奏からして、もうシビレまくりです。
 アート・ブレイキーのドラミングも冴えわたりのジャズビートは本当に魅力が満点ですし、リラックスして躍動的な各人のアドリブも大充実! バルネ・ウィランもリー・モーガンも、またボビー・ティモンズも本当に幸せだった時代が認識されると思います。

ということで、やはりこれは人気盤にして侮れない作品だと思います。

特にジャズメッセンジャーズはベニー・ゴルソンが退団し、ウェイン・ショーターが加入する端境期の姿ではありますが、やはり全盛時代の勢いは不滅ですし、ゲスト参加のバルネ・ウィランにしても、デクスター・ゴードンやハンク・モブレーの味わいを自分流に再構築したスタイルで熱演を披露しています。そして既に述べたように、「Prelude In Blue」で聞かれるソプラノサックスの素晴らしい魅力は、本当に聴かずに死ねるかですよねぇ♪♪~♪ ジョン・コルトレーンとは全く異なる、そのジェントルな響きと歌心に満ちた味わいは、この時期にもっとソプラノサックスの演奏を残して欲しかった……、と悔やまれるほどです。

ちなみに気になる映画の場面では、バルネ・ウィランやデューク・ジョーダン、そしてなんとケニー・ドーハムが演奏シーンで出演し、ここでの音源に合わせた「当て振り」を演じていますが、実にカッコイイ♪♪~♪

そして演奏そのものは不滅の素晴らしさとくれば、やっぱりハードバップって、本当に良いですねぇ~~~♪

アート・ブレイキーでは「Moanin'」や「Blues March」、そして「A Night In Tunisia」も確かな人気曲でしょうが、実は「危険な関係のブルース」こそが最大のヒット曲だと思います。しかし、あまりライブ音源が残されていないのは、何故でせう?

この名曲は作者自らのバージョンも含めて、他にも数多の録音が残されていますが、やはり極みつきが、ここでの演奏だと確信しております。

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ミルト・ジャクソンのジェントルファンキー

2009-04-04 09:47:08 | Jazz

Opus De Jazz / Milt Jackson (Savoy)

いよいよ新年度、新しい職場で頑張る気概に満ちた人が目立ちますね。所謂フレッシュマンというところでしょうか、不景気な現状には、彼等のようなハッスルが必要だと痛感しております。

さて、これは遥か昔、私が社会人となって初めて買ったアルバムです。

そう、あれは、今は無くなってしまった銀座の有名中古店「ハンター」でゲットしたのが、つい昨日のようです。ジャケットは有名カラー版ではなく、地味なモノクロの別物デザインでしたが、アメリカプレスの盤そのものが分厚かったので、こちらを選んだわけです。値段も確か千円だったと記憶していますが、ちなみに、いっしょに売られていたカラージャケットの日本盤は千二百円でしたから、まだ給料を貰っていない自分には、当然の選択だったというわけです。

内容は言わずもがなの名盤ですから、ジャズ喫茶で何回も聴いていまいしたが、それでも欲しくなる魅力が、確かにあるんですねぇ~♪

録音は1955年10月28日、メンバーはミルト・ジャクソン(vib)、フランク・ウェス(fl,ts)、ハンク・ジョーンズ(p)、エディ・ジョーンズ(b)、ケニー・クラーク(ds) という名手揃いで、ブルースとバラードの真髄がじっくりと演じられています。

A-1 Opus De Jazz
 オリジナルはホレス・シルバーが1953年11月に自作自演でブルーノートに吹き込んだピアノトリオのファンキー曲ですから、ミルト・ジャクソンにしてもお気に入りなのでしょう。このセッション以前の1954年6月にホレス・シルバーの助演を得て、ブレスティッジに名演を残していますが、やはり同曲の決定的なバージョンは、これでしょうね♪♪~♪
 ミディアムテンポの弾むようなグルーヴは、ちょっと聴きには単調としか思えないケニー・クラークとエディ・ジョーンズの迷いの無いコンビネーションに支えられ、その軽やかなブルースフィーリングが、たまらない魅力になっています。
 もちろん、これと同じようなノリは、ミルト・ジャクソンがレギュラーだったMJQでも演じられているのは確かです。しかしここでの演奏は、淡々とした中にも野太いグルーヴが感じられ、同時に奥深いジェントルな風情さえ滲んでくるのですが、その原動力はエディ・ジョーンズのしぶとい4ビートウォーキングとハンク・ジョーンズの素敵なピアノタッチじゃないでしょうか。それだけ聴いていても、グッと惹きつけられます。
 そして演奏そのものの仕掛けが、これまたニクイほど! ヴァイブラフォン、フルート、ピアノがソロを回していくアドリブパートは、コーラスを重ねる度に切り詰められていき、終いにはソロチェンジの様相となるのです。
 あぁ、このクールで熱い表現は圧巻ですねっ!
 ミルト・ジャクソンは、これぞっ、モダンジャズのブルースを発散させますし、飄々としてシブイ表現のフランク・ウェスのフルートは、音色そのものがハスキーな感じで高得点♪♪~♪ さらにハンク・ジョーンズのピアノのジェントルな存在感も素晴らしいかぎりです。
 オリジナルではホレス・シルバーが強烈にシンコペイトしていた、些かアクの強いテーマメロディのキモが、こうしてライトタッチで煮詰められていくところに、ジャズの面白さを感じてしまいます。

A-2 Opus Pocus
 これもブルースですが前曲とは一転、ヘヴィなグルーヴが横溢した名演ですから、ミルト・ジャクソンはますますの本領発揮♪♪~♪ 粘っこいウォーキングベースに導かれ、全くの自然体でブルースリックを響かせるヴァイブラフォンのソウルフルな味わいは、本当に格別ですねっ♪♪~♪ まさにブレ無いファンキー&グルーヴィン!
 そしてフランク・ウェスが、ここではディープなテナーサックスを披露してくれますから、嬉しさ倍増! コールマン・ホーキンス直系ともいうべきスタイルは、些か古臭いところが逆に高得点でしょう。というか、実はサブトーンも駆使したテナーサックスの不滅の魅力がたっぷりと味わえます。
 さらに滋味豊かなハンク・ジョーンズの伴奏に趣味の良いアドリブソロも最高で、ファンキーなドロの中の清涼剤というには、あまりにも素晴らしすぎです。

B-1 You Leave Me Breathless
 このアルバムの中では唯一のスタンダード曲で、落ち着いたスローテンポのバラード演奏ながら、流石は名人揃いとあって、セッションの中では一際輝く名演になっています。とにかくテーマ部分からして、各楽器の役割分担の妙、メロディフェイクの素晴らしさが堪能出来ますよ。
 歌心の真髄を披露するミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンは軽やかに舞踊り、フランク・ウェスのフルートはハートウォームな表現を大切にした健実な助演で好感が持てます。
 そしてハンク・ジョーンズのセンスの良さは絶品♪♪~♪ 地味なところが逆に凄いという感じでしょうか、流石だと思います。

B-2 Opus And Interlude
 ちょっとバラエティ番組のギャグオチのようなテーマメロディが、なかなかオトボケのブルースですが、アドリブパートは真正ハードバップの快適さが充満しています。そのミディアムテンポの淡々としたグルーヴは、このセッションならではの味わいでしょうねぇ~♪
 ちなみに既に述べたように、その原動力となっているベーシストのエディ・ジョーンズは、フランク・ウェスと同じく、当時のカウント・ベイシー楽団ではレギュラーを務めていただけあって、生粋のブルースフィーリングとジャズのグルーヴをナチュラルに表現出来る名手として忘れ難い快演が、ここに記録されたようです。
 それゆえに各人の持ち味が存分に披露されるアドリブパートは大充実! これがハードバップの素晴らしさです。

ということで、何れの曲も分かりきった楽しみに満ちた名盤だと思います。そして何度聴いても、決して飽きない傑作じゃないでしょうか。

今時期のウキウキした気分にもジャストミートだと思います。

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カッコイイ、チャーリー・マリアーノ

2009-04-03 12:32:53 | Jazz

Charlie Mariano Plays (Bethlehem)

ジャズメンにはカッコイイ人が大勢いますが、ルックス&プレイが共にスマートでキマッているひとりが、チャーリー・マリアーノでしょう。一時は秋吉敏子と結婚していたことでも有名ですね。

もちろん白人ということで、ウエストコーストジャズの重要なアルトサックス奏者という位置付けも間違いではありませんが、チャーリー・マリアーノはボストン出身という、本来は東海岸派のプレイヤーですから、チャーリー・パーカーからの影響が隠しようもない、元祖ハードバップの人でもありますし、1960年代にはモードやサイケロック風味の新進気鋭も演じていましたですね。

つまり何時の時代も先端の演奏を心がけていた前向きな姿勢が、素晴らしい演奏を残してくれた原動力として、私は感謝するばかりです。そして本日ご紹介のアルバムは、ウエストコーストジャズ全盛期の記録して、実に秀逸な1枚ですが、結論から言えば、本来は10インチ盤として世に出ていた「Charlie Mariano Sextet (Bethlehem BCP1022)」を拡大12インチLPとして再発する時に、新録の演奏を加えているところから、2種類のバンドの個性が楽しめるというわけです。

その内訳は、まず前述の10インチ盤セッションの録音が1953年12月21日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as)、スチュ・ウィリアムソ(tp)、フランク・ロソリーノ(tb)、クロード・ウィリアムソン(p)、マックス・ベネット(b)、スタン・リーヴィー(ds) という素晴らしい6人組!

一方、追加されたセッションの録音は1955年7月11日、メンバーはチャーリー・マリアーノ(as,ts)、ジョン・ウィリアムス(p)、マックス・ベネット(b)、メル・ルイス(ds) という、こちらはワンホーンでのハードバップ的な魅力が楽しめます。

A-1 Chloe (1953年12月21日録音)
 シブイ歌物の隠れ名曲として、ボーカルバージョンが数多残されていますが、インストならば、これが名演! 
 ちょっと陰鬱な3管のアンサンブルから一転、溌剌としたメロディ展開には開放感がいっぱいという魔法がニクイところ♪♪~♪ もちろんアドリブ先発のチャーリー・マリアーノはスマートな歌心に直観的なドライブ感が冴えまくりですよ。フレーズの語尾を端折り気味にするところは好き嫌いがあるかもしれませんが、それが逆に鋭角的というか、如何にもカッコイイ白人ならではの感性だと思います。
 またハートウォームなスチュ・ウィリアムソン、爽快なフランク・ロソリーノ、スイングして止まらないクロード・ウィリアムソンという共演者達の熱演にも、短いながらスカッとさせられます。

A-2 You Go To My Head (1953年12月21日録音)
 これはいきなりアルバムのウリとなった、チャーリー・マリアーノがワンホーンの決定的な名演です。初っ端から良く知られたスタンダード曲のメロディを自在にフェイクし、それでいて原曲の味わいを一際輝かせるという、まさに歌心の匠の技♪♪~♪
 じっくり聴けば、そのフレーズは相当に幾何学的な細かい技の集合体だと思いますが、それを歌心に上手く変換したというか、このあたりがチャーリー・マリアーノの優れた個性じゃないでしょうか。
 スローなテンポをグイノリのビートで演じるリズム隊も、地味ながら見事です。

A-3 S' Nice (1953年12月21日録音)
 如何にもウエストコースジャズがど真ん中の颯爽とした快演! アップテンポで繰り広げられる華麗なるバンドアンサンブル、躍動的なリズム隊のグルーヴも意外ほどに太く、もちろん各人のアドリブは素晴らしい限りです。
 特にチャーリー・マリアーノのアルトサックスが、まさにチャーリー・パーカー直系のフレーズとノリ! そのストレートなジャズ魂は尊いとしか言えません。またモゴモゴしているようで実はスピード感がたまらないフランク・ロソリーノが、良い味だと思います。

A-4 Manteca (1955年7月11日録音)
 これは新たに加えられたカルテットの演奏で、曲はディジー・ガレスピーが書いたラテンジャズの聖典♪♪~♪ それをチャーリー・マリアーノがテナーサックスで図太く吹きまくっています。
 それはウエストコーストという先入観からすれば違和感もあるのですが、時代は既にハードバップが主流でしたから、これも「あり」だった思います。
 個人的には大好きなジョン・ウィリアムスのピアノも、力強いタッチでシャープなフレーズを弾いてくれますし、ドラムスとベースがビシバシで、なかなか痛快!

A-5 It's You Or No One (1955年7月11日録音)
 そしてこれまたスタンダード曲を素材にした大名演!
 チャーリー・マリアーノは、ここでもテナーサックスを吹いていますが、お馴染みのメロディを最初はベースとのデュオでフワフワと演じ、次いで快適なドラムスとベースを呼び込んでからは、もう素朴なフェイクと美メロのアドリブが桃源郷♪♪~♪
 如何にも白人らしいグルーヴが演奏全体に横溢し、弾むようなリズム隊の楽しい快演もありますから、このアルバムの中では一際素敵な仕上がりになっています。
 数多ある同曲のジャズバージョンでは十指に入るほどの出来だと思うのですが、いかがなもんでしょうか。ジョン・ウィリアムスのアドリブも出来すぎですよ♪♪~♪

B-1 Three Little Words (1953年12月21日録音)
 これも有名スタンダード曲のウエストコースト的な展開が、如何にもの快演になっています。とにかくアップテンポで一糸乱れぬバンドアンサンブル、爽やかにして痛快なアドリブの連発、さらに気持ち良すぎるリズム隊の飛び跳ねビート♪♪~♪
 ここではフランク・ロソリーノの高速スライドワークが冴えたトロンボーンが強烈ですよ。

B-2 Green Walls (1953年12月21日録音)
 チャーリー・マリアーノが書いた、ちょっと新主流派っぽい進歩的なオリジナル曲です。3管のアンサンブルやヘヴィなビートを叩き出すリズム隊を聴いていると、本当に1960年代のブルーノートを想起させられるんじゃないでしょうか。
 それはアドリブパートの雰囲気にも継続され、浮遊感が全面に出たチャーリー・マリアーノのアルトサックスが実に新しく、ちょいと迷い道の他のメンバーとは一線を隔した感じですねぇ。
 曲調としてはウェイン・ショーターとかグラチャン・モンカーあたりが出てきそうな……。

B-3 Give A Little Whistle (1955年7月11日録音)
 一転して、これは明るく楽しい演奏で、バンドメンバーの掛け声とか弾んだ4ビートが痛快ですから、溜飲が下がります。
 チャーリー・マリアーノはテナーサックスで真っ向勝負ながら、幾分ぎごちないところが結果オーライでしょうか。素直な歌心は、相当に良い感じだと思います、
 またジョン・ウィリアムスがホレス・シルバー調のシンコペーションをモロ出しにした伴奏とアドリブで、本当にたまりませんよ♪♪~♪ ドラムスとベースの楽しげなところも高得点だと思います。

B-4 I Should Care (1955年7月11日録音)
 チャーリー・マリアーノのアルトサックスが、せつせつと歌いあげるテーマ演奏だけで完全降伏です。素材はもちろんお馴染みのスタンダード曲とはいえ、テーマよりも素敵な美メロのフェイクが出たりします。
 あぁ、演奏時間の短さが、なんとも勿体ないかぎりです。

B-5 My Melancholy Baby (1953年12月21日録音)
 オーラスも胸キュン系スタンダードの楽しい演奏で、ここではフランク・ロソリーノが参加していない所為か、かなりストレートな仕上がりです。
 つまりチャーリー・マリアーノの快調なアドリブが全面的に冴えまくり! 無理を承知で比較すれば、アート・ペッパーのような「愁い」よりは、もっと「素直な泣き」というか、しかし決して「嘘泣き」ではない心情吐露が良い感じなんですねぇ~♪
 スチュ・ウィリアムソンのトランペットも同様に素直な歌心を追求していますし、リズム隊もストレートな4ビートに徹していますから、一足早いハードバップという雰囲気です。

ということで、異なるセッションを強引に抱き合わせたわりには、違和感の無い名演集だと思います。

ちなみに同時期のレコーディングとしては、ベツレヘムにもうひとつ残された名盤「Charlie Mariano」がワンホーンの決定的な名演ですから、どちらが好きかは十人十色ながら、個人的はこちらを聴くことが多いサイケおやじです。

シンプルな歌心が楽しい「It's You Or No One」が、本当に好きなんです♪♪~♪

ハードなイメージのジャケットも、チャーリー・マリアーノのカッコ良さにはジャストミートだと思います。

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キャノンボールの最強バンド映像

2009-04-02 12:12:15 | Jazz

Cannonball Adderley Sextet 1962-63 (Jazz Shots = DVD)

これも最近入手した復刻映像♪♪~♪

さて、モダンジャズが最も幸せだった時代は1960年の前後数年間だったと、今更ながらに思います。

例えば白人ではチェット・ベイカーやディブ・ブルーベックのバンドが大ブレイクし、黒人ではジャズメッセンジャーズやマイルス・デイビスがメジャーと契約し、さらにセロニアス・モンクが白人中心のファンにウケ、スタン・ゲッツがボサノバでブームを巻き起こすといった、本当に素晴らしい状況でした。

キャノンボール・アダレイが率いたバンドも、その中で大活躍! 本日ご紹介のDVDは、1962年~翌年にかけて出演したテレビでのライヴショウを纏めたブツです。

メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ナット・アダレイ(cornet) の兄弟を中心にユセフ・ラティーフ(ts,fl,oboe)、ジョー・ザビヌル(p)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds) という全盛期のセクステットで、映像は全てモノクロです。

☆1962年11月、ロスでの収録:約27分
 01 Theme & Announcement
 02 Jessica's Birthday
 03 Primitivo
 04 Jive Samba
 05 Work Song
 06 Closing Theme & Announcement

 これは今までにも度々パッゲージ化されたアメリカの人気ジャズ番組「Jazz Scene U.S.A.」のリスマターで、結論から言えば画質&音質は過去最高のAランクです。
 オスカー・ブラウン Jr. のセンスの良い司会もさることながら、途中でインタヴューに応じながら、最後には番組を仕切ってしまうキャノンポール・アダレイが、なんとも憎めません。スタジオにはシングルヒットとなった「African Waltz」が入ったアルバムもディスプレイされ、おそらく番組への出演も、そのおかげかもしれません。
 肝心の演奏は、まさにそうした当時の勢いがそのまんまという凄い充実度で、バンドアンサンブルも鮮やかな「Jessica's Birthday」はアップテンポの痛快なハードバップ! ウネリを伴って豪快にドライヴしまくったキャノンボール・アダレイのアルトサックスが、とにかく強烈です。
 そしてタイトルどおり、原始的なモードを使った感じの「Primitivo」は、重厚にして緻密なバンドのアンサンブルと各メンバーのアドリブが深淵にして真っ黒! 竹笛やオーボエを神妙に吹奏するユセフ・ラティーフも印象的ですし、ジョー・ザビヌルのピアノが実にディープな心情吐露♪♪~♪ もはや単なるファンキーバンドから脱却したグルーヴの凄味が如実に出ていると感じます。
 しかし、やっぱりこのバンドはファンキーで陽気なノリが本来の魅力でしょうねぇ。それがお馴染みの「Jive Samba」と「Work Song」の2連発で最高潮♪♪~♪ ルイス・ヘイズのドラミングも実に爽快で、様々なビートをゴッタ煮とした美味しさが満喫出来ますよ。
 全篇を通して音質はモノラルミックスですが、各楽器のバランスも良く、キャノンボール・アダレイのアルトサックスは激しく咆哮し、ナット・アダレイやユセフ・ラティーフが持ち味を発揮すれば、ジョー・ザビヌルは相当に危なくっているとはいえ、まだまだ髪の毛があった時代の力演を披露していますし、サム・ジョーンズの堅実なプレイやルイス・ヘイズの上手さにも脱帽されると思います。

☆1963年7月、東京で収録:約55分
 07 Jessica's Birthday
 08 Brother John
 09 I Can't Get Started
 10 You And Night And The Music
 11 One Note Samba
 12 Work Song
 13 Scotch And Water
 14 Tengo Tango
 15 Trouble In Mind
 16 Jive Samba

 これは来日時に東京のTBSで収録のスタジオセッションで、前述したバンドに加えて黒人女性歌手のトニ・ハーパーが同行しており、「You And Night And The Music」と「One Note Samba」の2曲を歌っています。
 もちろん演奏はいずれも絶頂期の証明になっていますが、残念ながら画質はB……。それでも今まで出回っていたブートビデオよりは多少、マシでしょうか。ただし音質は相当に改善されています。
 演奏内容では、特に気になるトニ・ハーパーがリズム隊だけの伴奏で個性的な歌唱を聞かせてくれますが、ここは十人十色の好き嫌いかもしれません。
 個人的には後半の「Work Song」からが圧巻で、特にアダレイ兄弟が抜けてバンドメンバーに花を持たせたような「Trouble In Mind」が、ユセフ・ラティーフのディープなオーボエとジョー・ザビヌルの思わせぶりなピアノの名演で印象的♪♪~♪
 ちなみにユセフ・ラティーフはアドリブの中に中近東系のメロディやスケールを使うので、サイケおやじには苦手のひとりなんですが、このバンドの中では同様の試みも許容範囲だと思います。と言うよりも、実は凄い実力者だと痛感させられました。
 それとジョー・ザビヌルがビル・エバンスとウイントン・ケリーの中間のような、実に好ましい正統派ジャズピアノを披露して、好感が持てます。前年の映像と比較して、ますます存在感が薄くなっている髪の毛も……。
 肝心の主役、アダレイ兄弟は流石の大看板! キャノンボール・アダレイが「I Can't Get Started」のバラード演奏で兄貴を貫禄を示せば、ナット・アダレイは得意の作曲能力を遺憾無く発揮し、特にタンゴのファンキー的解釈という「Tengo Tango」では陽気なグルーヴが大爆発! その導火線となっているのがナット・アダレイというわけです。
 既に述べたように画質は良くありませんが、演奏そのものは秀逸ですから、十分に楽しめると思います。

☆1963年3月24日、スイスでの収録:約19分
 17 Jessica's Birthday
 18 Angel Eyes

 これが個人的にはお目当てというか、今まで全く観たことが無かった映像です。
 やはり同じバンドによる欧州巡業中にスイスで収録されたスタジオセッションで、画質&音質は一部で乱れもありますが、満足出来るAランク♪♪~♪
 ちなみにフィルムスタートのテーマにはキャノンボールらしく大砲のアニメを使い、そのバックには、やはりヒットしていた「African Waltz」が流されるというあたりが、なかなか当時の流行を物語っているのかもしれません。
 肝心の演奏は「Jessica's Birthday」が前記のパターンと同様に熱演! これが本場のハードバップだっ! というバンドの矜持が感じられますよ。
 そして緻密なアレンジを用いた「Angel Eyes」が、ユセフ・ラティーフの素晴らしいフルートを前面に出した名演♪♪~♪ 素直なテーマメロディの吹奏に寄り添うリズム隊ではジョー・ザビヌルが優しく、それでいてミステリアスなコード選びの伴奏で高得点ですし、主役を与えられたユセフ・ラティーフの丁寧なメロディフェイクも良い感じでしょうか。失礼ながら怪人的な風貌とは正反対のジェントルな演奏が、なかなか魅力的♪♪~♪ 十八番の唸り声奏法も憎めません。

ということで、全盛期だったキャノンボール・アダレイとそのバンドの真髄が楽しめると思います。とにかく各メンバーが物凄い実力者だったんですねぇ~♪ 特にユセフ・ラティーフは個人的には先入観があって、イマイチ好きになれないプレイヤーなんですが、ここでの真摯なジャズ魂には圧倒されてしまいました。

またウェザーリポートでのジョー・ザビヌル以前の姿を見せてくれる本人のピアノも魅力的で、やはり並々ならぬ才人の証明でしょう。

サム・ジョーンズとルイス・ヘイズという、真正ハードバップのリズムコンビが真髄を堪能させてくれるところも楽しく、もちろんアダレイ兄弟は手抜き無し! 演目がダブったりするとはいえ、そこはアドリブの世界ですから、それぞれに素晴らしいお楽しみが用意されています。

モダンジャズがもっとも大衆的だった当時の勢いが、ここに復刻されたのは喜ばしいですね。次は続く時期のロック&ファンキー時代を、ぜひとも観たいものですね。

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ピーターソンとクラーク・テリーの絶品スイング

2009-04-01 12:16:54 | Jazz

Oscar Peterson Trio + One (Mercury)

ジャケットをご覧なれば、ここでの「+ One」がクラーク・テリー!

この人は大変な実力者で、デューク・エリントン楽団の看板を務めていたこともありますし、マイルス・デイビスに影響を与えたとか、あるいはセロニアス・モンクと共演レコーディングをやっても圧倒的な存在感を示してしまったか、さらに自己のビックバンドを率いて活動していたこともあるという、そのわりにはイマイチ、我が国では人気がありません。

そのあたりは本国でも同様だったらしく、それを嘆いたオスカー・ピーターソンの熱望によって、この共演アルバムが作られたという真相もあるようです。

録音は1964年8月17日、メンバーはオスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds) という、ご存じ「黄金のトリオ」にクラーク・テリー(tp,flh,vo) が客演したカルテット♪♪~♪ ちなみにこれは、オスカー・ピーターソンがヴァーヴからマーキュリーへと移籍した最初の作品と言われています。

A-1 Brotherhood Of Man
 初っ端からオトボケファンキーなクラーク・テリーのトランペットが印象的ですし、続くオスカー・ピーターソンの唸り声もしぶとい、実に強烈なアドリブが既に最高です。あぁ、このアップテンポでグルーヴィなノリこそが、モダンジャズ最高の楽しみですねっ♪♪~♪
 そしていよいよ本領を発揮するクラーク・テリーのラッパの響きも絶好調! 強烈なハイノートからエグイばかりのフレーズ展開は痛烈にファンキーです。
 バンドとしての纏まりも素晴らしく、各人の至芸に酔わされてしまいますよ。短い演奏ですが、まさにアルバム冒頭には、これしか無い!

A-2 Jim
 小粋な歌物スタンダードをハートウォームに展開していくオスカー・ピーターソンのトリオが実に良い雰囲気を作り出すテーマ部分から、本当に和んでしまいます。適度にファンキーで歌心優先主義のメロディフェイクは、流石は名手の証でしょう。
 そしてミュートトランペットとフリューゲルホーンを持ちかえで交互に吹き分けるクラーク・テリーが十八番の妙技には、ジャズを聴く喜びがいっぱい♪♪~♪ これは左右の手に各楽器を持ち、ワンフレーズ毎に瞬時の吹き替えという、なかなかエンタメ系の技なんですが、決してお遊びではなく、リアルファイトです。
 それはここでの歌心のあるアドリブを聴けば納得でしょう。ミュートがマイルス・デイビスの元ネタであるという事実にも、嬉しくなりますよ。

A-3 Blues For Smedley
 オスカー・ピーターソンのオリジナルというファンキーなブルースには、クラーク・テリーのオトボケミュートがジャストミートの快演です。とにくかテーマアンサンブルからアドリブに入っていくところで、既にジャズの楽しさが横溢ですよ。クラーク・テリーの肉声を活かしたラッパの響きは、決して悪ふざけだとは思いません。
 そしてオスカー・ピーターソンのアドリブが、これぞ真髄の「黄金のトリオ」でしょうねっ! 落ち着いたレイ・ブラウンの4ビートウォーキングにタイミングが素晴らしいエド・シグペンのドラミングが、全く素晴らしいと思います。
 メンバーの凄い実力がしっかりと記録された、これも名演でしょうねぇ~♪

A-4 Roundalay
 ちょっと神妙なイントロからジワジワと滲みだしてくるモダンジャズの濃厚なムードは、ブルーノートあたりの新主流派のイメージさえ漂う隠れ名演です。とにかくクラーク・テリーの温故知新なプレイが最高ですよ。フレディ・ハバードやリー・モーガンでさえ、このファンキーで静謐な表現は、手の届かない世界じゃないでしょうか。
 そしてオスカー・ピーターソンがじっくり展開されるバンドのグルーヴに逆らうように、強烈な早弾きと強引なスクランブル! それに呼応して楽々と山場を作ってしまうドラムスとベースのコンビネーションも強い印象を残します。特にレイ・ブラウンのペースワークが強烈に前衛ですよっ!
 聴くほどに、このメンバーの実力とヤバい世界に圧倒されると思いますが、それは難しさよりも、楽しさが優先されているあたり、特筆物です。

A-5 Mumbies
 前曲のシリアスムードから一転、これもクラーク・テリーがウリにしている、言語明瞭なれど意味不明という独特のボーカルが楽しすぎます。
 これは文章よりも、とにかく聴いていただくしかない至芸なんですが、しいて言えばタモリのハナモゲラ語の元ネタとでも申しましょうか♪♪~♪ ここでは軽いゴスペル調も心地良い、実にスイングしまくった演奏で、オスカー・ピーターソン以下のトリオもノリノリですよ。

B-1 Mack The Knife
 ジャズ者ならば皆、心ウキウキのスタンダード曲ですから、このメンバーの演奏にも抜かりはありません。絶妙のドライヴ感がたまらないオスカー・ピーターソンのイントロから、クラーク・テリーのミュートトランペットが最高のメロディフェイクを聞かせれば、ツボを押さえたレイ・ブラウンのペースワーク、そしてエド・シグペンが素晴らしいドラミングで、がっちり脇を固めていきます。
 既に述べたようにクラーク・テリーのミュートはマイルス・デイビスに影響を与えたことが明瞭ですし、途中では十八番の駆け足スタイルも鮮やか♪♪~♪ そして終盤でのオスカー・ピーターソンとのコンビネーションも白眉だと思います。
 
B-2 They Didn't Believe Me
 相当にシブイ雰囲気のスタンダード曲ですが、初っ端から華麗なオスカー・ピーターソンのピアノがスローテンポで美しくメロディをフェイクしてくれるだけで、なんか幸せな気分になりますねぇ~♪
 そして途中から寄り添ってくるベースとドラムスに乗っかる感じで、実に素直にメロディを吹いてくれるクラーク・テリーのフリューゲルホーンの美しさ! この感情表現の奥深さには完全降伏です。
 決して派手なところが無いのに、これほど秀麗な演奏はないと思えます。

B-3 Squeaky's Blues
 これもバンドメンバー各人が秘術を尽くした即興のブルース演奏!
 繊細にして躍動的なクラーク・テリーのミュートトランペットが素晴らしく、途中では十八番のマーブルチョコレートのフレーズも出しまくり♪♪~♪
 またエド・シグペンのタイトにスイングするドラミングが、もう最高! ですからオスカー・ピーターソンも豪快なドライヴ感に徹した物凄さですし、土台を固めるレイ・ブラウンの奮闘も流石だと思います。
 これ、その現場に居たら歓喜悶絶で、失神寸前でしょうね。
 
B-4 I Want A Little Girl

 そして一転、これは私の大好きな演奏で、温故知新の極みつき演じるクラーク・テリーのラッパの響きが、実に琴線にふれまくりのメロディしか吹かないのです。
 ゆったりとしたテンポながら、相当に強いグルーヴがファンキーな味わいを醸し出していますし、オスカー・ピーターソンもじっくりと構えて熱い心情吐露!
 ですからラストテーマへと繋げていくクラーク・テリーの匠の技もイヤミ無く、大団円のハイノートが痛烈にヒットして、あぁ、良いなぁ~~~♪

B-5 Incoherent Blues
 オーラスはA面ラストを飾っていたクラーク・テリー流儀のハナモゲラ語が、スローブルースで楽しめるという、実に味わいのボーカル曲です。
 この、オトボケなフィーリングがマジに凄いという世界は、クラーク・テリーを聴く楽しみのひつでしょうねっ♪♪~♪ パックのリズム隊が相当に真剣なのが、かえって不思議な可笑しみなのでした。

ということで、これも名盤の中の大名盤! 特にクラーク・テリーの諸作中では一番に聴き易く、楽しいアルバムだと思います。

もちろんオスカー・ピーターソンにとっても代表作でしょうし、円熟していた「黄金のトリオ」の絶頂期が記録されたセッションでもあります。とにかくゲストを加えても、バンドの一体感が最高のコンビネーションで輝きまくっているのです。

メッチャクチャに不景気の新年度スタートではありますが、こういう屈託のないスイング感こそが、今の世相や仕事には必須だと、心に誓うのでした。

コメント
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