OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

前向きマクリーン!

2009-11-10 11:11:16 | Jazz

One Step Beyond / Jackie McLean (Blue Note)

仕事地獄に落ちこんで東西南北、とにかく引っ張り回されている日々なんで、こういう時こそ、スカッとして、ちょいと過激な、ストレス発散のジャズを聴きたくなります。

で、本日ご紹介の1枚はご存じ、青春の情熱の代表格とも言うべきジャッキー・マクリーンが、従来のハートパップから更に突出して新しい道へと向かい始めた記念碑的な名盤♪♪~♪

録音は1963年4月30日、メンバーはジャッキー・マクリーン(as) 以下、グラチャン・モンカー三世(tb)、ボビー・ハッチャーソン(vib)、エディ・カーン(b)、トニー・ウィリアムス(ds) という、これ以降のモダンジャズをリードしていった凄い面々ですが、この時点では無名の新進気鋭揃い! 特にトニー・ウィリアムスは弱冠17歳だっんですねぇ!?!

A-1 Saturday And Sunday
 ジャッキー・マクリーンのオリジナルで、幾分、陰険な曲調のテーマメロディが不穏な空気を醸し出しますが、アドリブパートは痛快なアップテンポのモード系ハードバップ! その原動力は、もちろん当時の常識から逸脱したドラミングを披露するトニー・ウィリアムス、さらにどっしり構えてエグイばかりのウォーキングで突っ込んでくるエディ・カーンというリズム隊です。
 そしてジャッキー・マクリーンのギスギスして荒っぽいアルトサックスが、それこそ好き勝手に激ヤバのフレーズばっかりを吹きまくれば、呼応して暴れるトニー・ウィリアムスのドラムスに耳を奪われてしまうのです。
 また続くグラチャン・モンカーのアドリブパートでも、その傾向が尚更に強くなり、ピアノレス編成ということでコードの束縛から離れている所為でしょうか、相当にフリー色も濃くなりますが、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブラフォンが要所で助け舟的なハーモニーを入れてくるのがシブイところ♪♪~♪
 ですからアドリブパートに移っても、全く独自の感覚とスピード感が冴えわたり、過激なベースとドラムスを逆にリードしていくかのような斬新さが、たまりません。
 しかし、こうなるとトニー・ウィリアムスも若気の至りとは決して言えない、本当に物凄いドラムソロ! 銃後の守りというか、背後で要所を締めるエディ・カーンのペースも、全く良い感じです。
 あぁ、これぞ新しいモダンジャズだったんでしょうねぇ~♪
 全盛時代のジャズ喫茶でも、このアルバムが鳴り始めると店内の空気が、一瞬にして「ジャズを聴いている」という充実した気分に満たされていったものです。

A-2 Frankenstein
 グラチャン・モンカーが書いたマイナーメロディの不思議な曲調が、変則的なワルツビートで演じられていますから、これは怪しい!
 と言うよりも、一抹の分からなさと激しいビートに煽られた各人のアドリブが、そんな混濁から懸命に逃れんとする「あがき」として、実に最高なんですねぇ~♪
 例えばジャッキー・マクリーンはエキセントリックでハイキーな「音」をキメに使っていますし、グラチャン・モンカーのトロンボーンは十八番の爆裂フレーズを積み重ね、ボビー・ハッチャーソンも短いのが勿体無いかぎりの最高峰アドリブを聞かせてくれます。
 そしてもちろん、トニー・ウィリアムスが全篇でビシバシにキメまくりのドラミング! その全く新しい4ビートとリズム感は、とても17歳とは思えないほどですが、いえいえ、これが若さゆえの特権だと思います。実に凄い!

B-1 Blues Rondo
 アップテンポのブルースがロンド形式で演じられるテーマは曲タイトルどおりという、このアルバムの中では一番に聴き易い、従来型のハードバップなんですが、このメンツですからタダでは済みません。
 特にジャッキー・マクリーンのハッスルぶりは気恥ずかしくなるほどです。十八番のマイナーフレーズとアグレッシプな音使いは、この時期ならではの魅力でしょうねぇ~♪ これには終始、アップテンポのビートを送り出しているトニー・ウィリアムスも油断は禁物という感じです。

B-2 Ghost Town
 オーラスは再びグラチャン・モンカーのオリジナルで、如何にもという幻想的なムードの中で、過激なモダンジャズ最前線が演じられていきます。とにかく緩いビートの中で自在に浮遊し、それでいて暗黙の了解を守ったメンバー各人の名演が堪能出来ますよ。
 まずテーマアンサンブルの構成からして秀逸の極み!
 そしてアドリブパートでは、先発のジャッキー・マクリーンが熱いエモーションを丸出しにした過激節を存分に披露すれば、続くグラチャン・モンカーが作者の強みを活かした伸縮自在の大名演♪♪~♪ 上手くテンポを変化させていくところは、同時期のマイルス・デイビスのバンドでも試みられ始めた手法ですが、そのキーマンが、どちらもトニー・ウィリアムスだったというのが意味深です。
 ご存じのように、この若き天才ドラマーは、このセッション直後に、そのマイルス・デイビスに引き抜かれていくわけですが、ここで既にスタイルは固まりつつあったということなんでしょうか? この曲だけでなく、アルバム全体の成功の要因は、トニー・ウィリアムスの参加にあったといって過言では無いと思うほどです。
 それはボビー・ハッチャーソンのアドリブパートでも同様に素晴らしく、相当に饒舌なフレーズ構成がイヤミになっていないのも流石です。エディ・カーンの意地悪なペースワークも必要十分な凄みが、これまた最高!

ということで、これもガイド本では載ることの多い傑作盤なんですが、実はジャッキー・マクリーンという人気者のアルバムですから、それほどは売れていないかもしれません。何故ならば、これは大きな音量で聴くのが望ましく、それゆえジャズ喫茶の人気盤に成り得たのが真実ではないでしょうか。

和みなんて、無用の長物なんですよ、このセッションでは!?!

それは参加メンバーが当時のジャッキー・マクリーンのバンドレギュラーとして、実際にライプの現場で活動していたからに他なりません。そういうヤル気や意気込みが、アルバム全体からムンムンするほど立ち昇ってきます。

そして、こういう作品を聴けるようになったサイケおやじは、もしかしたら、ジャズモードへと回帰する兆しがあるのかもしれません。


犬と名曲

2009-11-09 11:32:46 | 日本のロック

熱い砂 c/w 哀愁のキャラバン / ザ・ヴァン・ドッグス (ユニオン)

GS期に活躍していた諸々のグループはロックを基調としながらも、R&Bや欧州系ポップス、そしてもちろんサイケデリックの大波を受けた最先端派まで、それこそ様々な音楽性をゴッタ煮状態で歌謡曲に昇華していたという、実に素晴らしいバンドがどっさり♪♪~♪

本日ご紹介のヴァン・ドッグスも、決して大ブレイクはしていないバンドですが、オルガン主導のR&Bにソフトロック調のコーラス、さらに青春歌謡っぽい熱血&哀愁路線が、失礼ながら節操も感じられないほど、ナチュラルに融合させていた隠れ名バンドだったと思います。

尤も、リアルタイムでサイケおやじが強い印象になっているのは、デパートの屋上イベントで行われたライプステージの時、ジャケットにも写っている大きな犬を連れていたことですし、なんとテレビ出演の時にも、同じ犬を連れていたという、なんとも意味不明なイメージ戦略でした。きっとバンド名に因んでいたのでしょうねぇ。

まあ、それはそれとして、おそらくはデビュー作だと思われる、このシングル盤に収録の両面2曲は、なかなか素晴らしく、昭和歌謡ロックの隠れ名演だと思います。

メンバーは池ひさし(vo)、相田幹男(g)、深川文男(g)、千葉正建(org)、岡田朝光(b)、志野義孝(ds)、そしてボクサー犬が1匹! ちなみに私が見たステージは、このシングル盤を発売した直後か直前の昭和42(1967)年の春でしたが、後にテレビに登場したヴァン・ドッグスはメンバーが大きく変わっていたように記憶しています。

肝心の楽曲については、ジャケットにも大きく記載があるように、まずA面の「熱い砂」が作詞:橋本淳、作曲:田代久勝による熱血青春エレキ歌謡にR&Bのフィーリングを加味し、さらにソフトロック系のコーラスもキマった、本物の名曲にして名演♪♪~♪ 間奏で繰り広げられるエレキギターとオルガンの絡み、また素晴らしいリズムギターが全篇で冴えまくりというアレンジも秀逸ですし、リードギターのフレーズが寺内タケシの十八番「Terry-sh」を演じているのも高得点! イントロが加山雄三の「夜空の星」からモロパクリなのも、憎めませんねっ!

ちなみに作曲の田代久勝は、もしかしたら我国の人気エレキバンドだったスペイスメンのギタリストと同一人物でしょうか? だとしたら、スペイスメンのバージョンも聴いてみたいものです。

そしてB面の「哀愁のキャラバ」が、これまた同系の演奏にして、タイトルどおりの哀愁味がたっぷりの名曲名演ですが、アレンジがブルーコメッツ調なのが、嬉しくも泣けてきますよ♪♪~♪ やはりオルガンとエレキギターのコラポレーションが最高ですし、これはA面の「熱い砂」にも共通する味わいなんですが、歯切れよく、しかも相当に重くて迫力のあるベースとドラムスの存在感も耳に残ります。

また両曲のミソになっているコーラスなんですが、私が実際に体験したライプではメンバー各人が歌える人だったと記憶しています。

それと同時にインスト演奏もやっていたんですが、これがまた上手かったですねぇ♪♪~♪ 今となってはオルガンとギター、そしてリズム隊のグルーヴがアメリカ南部ソウルのブッカーTとMG's みたいだったと知れるのですが、その頃は気がつくはずもなく、粘っこいブルーコメッツ!? なんて思っていました。

ということで、ヴァン・ドックスはお気に入りのバンドなんですが、残念ながらレコードは、これ1枚しか持っていません。どうやら5枚位は発売しているらしいのですが、CD化についても勉強不足で知りませんので、今後も探索は続ける所存です。

機会があれば、ぜひとも聴いていただきたいGSグループのひとつです。


秋に聴きたいバッドフィンガー

2009-11-08 10:53:16 | Rock

明日の風 c/w Without You / Badfinger (Apple / 東芝)


名曲には様々なエピソードがあって、また、それがあってこその名曲というのも、あると思います。

例えば本日の主役はビートルズの弟バンドとして人気があったバッドフィンガーですが、あえて私がお目当てだったのは、B面に収録された「Without You」です。

ご存じのように、この曲は1972年、ニルソンのカバーバージョンが世界中で大ヒットした、せつなくもハートウォームな畢生のパラード♪♪~♪ そのオリジナルバージョンを演じていたがバッドフィンガーだったんですねぇ~♪

これは当時から有名過ぎる真実として、バッドフィンガーは1970年秋に発表したアルバム「ノー・ダイス」の中で演じていましたが、ここからは「嵐の恋 / No Matter What」がリアルタイムでシングルカットされ、バッドフィンガーを代表するスマッシュヒットになっていました。

ただしアルバムそのものが、どれだけ売れていたかは知る由もありません。当然ながら我国でも、それなりの売れ行きだったとは思いますが、サイケおやじは例によって経済的な理由から買うことは出来ませんでした。

それがニルソンによって、バッドフィンガーの潜在的な人気が再びクローズアップされたというか、熱心なファンは溜飲を下げたと思います。

しかし私のような者にとっては、楽曲の素晴らしさに夢中になってはいても、バッドフィンガーのバージョンがLPでしか聴けないとなれば、諦めるのも……。

ただし、それがシングル盤で入手可能とあらば、即ゲットは言わずもがなというわけです。

で、そのオリジナルバージョンなんですが、ニルソンの大ヒットバージョンに比べると、あくまでもバンドサウンドを大切にした演奏パート、そして自作自演の強みを活かした実直な歌いっぷりが感度良好♪♪~♪

まあ、正直に言えば、ニルソンが演じていたボーカルの力量に夢中になった身としては、物足りなくもあります。それでも間奏のシンプルな味わいから終盤への「泣き」のメロディ展開は不滅でしょうねぇ。

最後になりましたが、A面に収録された「明日の風 / Cally On Till Tomorrow」は、彼らがアイビーズからバッドフィンガーと改名して最初アルバム「マジック・クリスチャン・ミュージック」からのカット!? と言うことは、おそらくはこのシングル盤は我国独自の企画だったように思います。

しかし、それなら「Without You」をA面にした競作盤にすればよいものを……。なんか遠慮でもあったんでしょうか?

まあ、それはそれとして、実はA面の「明日の風 / Cally On Till Tomorrow」もアコースティックギターをメインに、なかなか日本人好みの湿っぽいメロディが素敵な隠れ名曲じゃないでしょうか。ちょいと地味なところが、これまた魅力というか♪♪~♪

ということで、当時のバッドフィンガーの人気を物語るようなシングル盤でもあり、しかし結局は大ブレイクとまでは届かなかった実態を象徴する1枚かもしれません。それはマニアックでもなく、あえて言えば忘れられないバンドのひとつとしての存在感でしょう。

ビートルズに認められていた羨ましくなる環境から、後の様々なトラブルや悲報があって、今では「悲劇のバンド」なんて一部では決めつけられているバッドフィンガーも、この頃は人気も絶頂だったのです。

今頃の季節になると、特にそんなことが思い出されるのでした。


ペックのニューロック誕生

2009-11-07 10:54:30 | Rock

ジェフ・ベックのボレロ c/w Shapes Of Things / Jeff Beck (Columbia / 東芝)

エリック・クラプトンと並び称されるギターヒーローが、私の世代ならば、きっとジェフ・ベックでしょう。しかも両者はヤードバーズの新旧ギタリストであり、後に続いたのがジミー・ペイジですから、英国三大ギタリスト! と絶賛されていたんですねぇ~♪

そういう実在する伝説は今も健在なわけですが、中でもジェフ・ベックはギター道に徹しているあたりが人気の要因かもしれません。

もちろんテクニックや音楽的な閃きに関しては、まさに天才!

本日ご紹介のシングル盤は、前述したヤードバーズを辞め、独立して結成した所謂「第一期ジェフ・ベック・グループ」によるアルバム「トゥルース」からカットされた、おそらくは我国独自の発売だろうと思われますが、例によってLPが買えなかった少年時代のサイケおやじにとっては、これだけでも嬉しいレコードでした。

なにしろイギリスでは1968年に発売されていた「トゥルース」が、我国では翌年に「驚異のブルースギター! / ジェフ・ペック登場」という、そのものズバリの大仰な邦題で発売された瞬間から、音楽雑誌やラジオ&テレビの洋楽番組で絶賛の嵐!

もう、これはロックファン必聴のアルバムになったのです。

そしてラジオから流れてきた、このシングル盤のA面曲「ジェフ・ベックのボレロ / Beck's Bolero」には、確かにグッと惹きつけられるミステリアスで強烈に新しいロックを感じることが出来ました。

まずボレロですから、例のタンタカタタ~ンというリズムパターンを踏襲し、当然というかモーリス・ラベルの同曲をモチーフにしています。しかしジェフ・ペックのギターは、まず音色が絶品の美しさ♪♪~♪ そのメロディアスで、当時は宇宙的と表現されたスペーシーな感覚を存分に聞かせる前半部分から、強烈にアナーキーな叫び声を合図に一転、激しいハードロックな世界に突入するというインスト曲の決定版!

ちなみに後に知った事ですが、これは正確にはジャケットに写っているロッド・スチュアート(vo) やロン・ウッド(b) が在籍していたジェフ・ペック・グループの演奏ではなく、ジミー・ペイジ(g)、ニッキー・ホプキンス(p)、ジョン・ポール・ジョーンズ(b)、キース・ムーン(ds) を従えた、今となってはウルトラ級のオールスタアズによるスタジオセッションから生まれた名演で、中盤の掛け声はキース・ムーンによるものとされています。また作曲はジミー・ペイジ!?! おいおい、タイトルに偽り、あり!?!

しかし、そんなこんなは問題になりませんねぇ~♪

それほど美しも激しい、奇蹟の名演だと思います。

またB面収録の「Shapes Of Things」が、これも後に知った事ですが、ヤードバーズ時代の持ちネタ再演で、こちらはジェフ・ペック(g)、ロッド・スチュアート(vo)、ロン・ウッド(b)、ミック・ウォーラー(ds) という、今度こその「第一期ジェフ・ベック・グループ」ですから、そのヘヴィでソリッドなハードロックは間違い無し!

ちなみに当時はロッド・スチュアートなんて、文字通り「なんて」としてか評価されないオマケ的な存在感しかありませんでしたが、ここでの熱唱はジェフ・ペックの強引なギタープレイに拮抗対峙していますし、それを引っ張り回すが如きジェフ・ペックの意地悪さ、また意外にもメロディアスなロック・ウッドのペースとパワフルなミック・ウォーラーのドラムスがあって、これが新しいロックでした♪♪~♪

イントロからの叩きつけるようなリズム的な興奮、唸って叫び、伸縮自在のギターと激しい歌が冴えまくる演奏のコンビネーション! 何回聴いても血が騒ぎますから、後でヤードバーズのオリジナルバージョンに接した時には、気抜けのビールみたいだなぁ……、と不遜な事を思ってしまったですよ。

ということで、これもサイケおやじの青春には欠かせなかった1枚なんですが、肝心のLP「トゥルース」はリアルタイムで聴く事が出来ず……。これは今でも悔しい気分ですねぇ。なにしろ3年後に聴いたそこには、このシングル盤以上に物凄い衝撃があったのですから、もし昭和44(1969)年だったら……、と思うと、なにやらゾッとするほどです。

そしてその間にも「ベック・オラ」や「ラフ&レディ」といったリーダー盤、あるいはヤードバーズ時代の諸音源を聴いていたわけですから、ますますその恐ろしさが身に応えたというわけです。

う~ん、それにしても、この日本盤シングルのジャケ写は意味深というか、お茶目なロッド・スチュアートに比べて表情が冴えないジェフ・ペックというコントラストが、後の展開を予見していたような……。

そんな事まで想いながら聴く、この「ベックのボレロ」は、また格別です。


化石にならないルリ子のまなざし

2009-11-06 11:39:13 | 歌謡曲

愛の化石 / 浅丘ルリ子 (テイチク)

歌手から俳優に転向する人も多い芸能界で、しかし「昭和」の女優さんは歌うのもスタアの証として大ヒットしたのが、本日ご紹介のシングル曲です。

歌っている浅丘ルリ子は説明不要、日活の看板女優として夥しい作品の中でヒロインを演じ、また同時に歌ったレコードも沢山残していますが、この「愛の化石」は歌ったというよりも、「語り」がせつない大名演♪♪~♪

それはご存じ、「愛するって、愛するって耐えることなの?」というキメ台詞が、彼女のような美女から囁かれるという禁断の必殺技となって、本当にたまりません♪♪~♪

もちろん、そのバックには、せつなくも哀しい曲メロがちゃ~んと用意され、浅丘ルリ子ならではのハミングと歌唱も聞かれるのですが、やはり卓越した台詞回しがあってこその大ヒットでした。

とにかく並木六郎による作詞は、読んだだけでは気恥ずかしくなるような女心の悔恨を描いていながら、それを浅丘ルリ子が演じると、完全に十八番の世界になるんですねぇ~。もし、これが他の女優さんだったら、失礼ながらイモ芝居になるでしょうね。

また作曲:三木たかし、編曲:高見弘によるメロディ&演奏のパートは、これまた寸止めの胸キュン感がいっぱい♪♪~♪

ですから昭和44(1969)年のちょうど今頃、日本中はこの「愛の化石」に酔いしれていたわけですが、なんと同時期にはウルトラ級のメガヒット「黒猫のタンゴ / 皆川オサム」があったというのも、尚更に印象的な記憶です。

それと「あなたの心に / 中山千夏」も、この頃だったでしょうか……。

ということで、これが今から40年前って、光陰矢の如し!

ジャケットの美しすぎる浅丘ルリ子のおねえさまが、今もしっかりと私を見つめてくれる、それだけで幸せを感じるサイケおやじが本日の気分なのでした。


トニー・ウィリアムスのサイケデリックジャズ

2009-11-05 12:02:36 | Jazz

Spring / Anthony Williams (Blue Note)

あぁ~、今の国会は亡国合戦というか、今週は特に酷いですねぇ。野党のセコイ質問に答えの出ない答弁を演じる与党、それに拍手で野次を消すという、丸っきりヒットラーユーゲントの如き有象無象の新人議員! さらに昨日は口喧嘩……。

全く情けない親分衆の総長賭博って感じですが、こういう時こそ子分達が意気地を見せないと、ねっ!

ということで、本日はそんな気分の過激なジャズを聴いてしまったです。

主役のアンソニー・ウィリアムスとは、もちろんマイルス・デイビスのバンドで一躍名を上げた天才ドラマーのトニー・ウィリアムス(ds) ですから、参加メンバーもウェイン・ショーター(ts)、サム・リバース(ts)、ハービー・ハンコック(p)、ゲイリー・ピーコック(b) という所縁の過激派が揃っています。

そして録音が1965年8月12日ということは、トニー・ウィリアムスが弱冠二十歳そこそこの若造ながら、演目は全てが自身のオリジナル! ここで聴かれる勢いと音楽性の深さには絶句して、驚嘆するばかりです。

A-1 Extras
 いきなりスピード感満点に弾けるトニー・ウィリアムスのブラシが強烈! そして自在に飛翔しては暴れるゲイリー・ピーコックのペースも、基本は堅実な4ビートですから、不穏なテーマを経て、まずはウェイン・ショーターの唯我独尊というテナーサックスが怖い存在感を示します。
 う~ん、このあたりは同時期のマイルス・デイビスのバンドよりも自由度が高く、それはゲイリー・ピーコックの好き勝手なベースワークの所為もありますが、もちろんトニー・ウィリアムスのリーダーシップを理解している、あるいは度量の大きい参加メンバー達の心意気でしょうねぇ~♪
 そして問題児的なゲイリー・ピーコックのベースソロが、トニー・ウィリアムス十八番のスティックワークに煽られて過激に展開され、そこに自然体で絡んでいくサム・リバースの不気味なテナーサックス、再びブラシに戻っているトニー・ウィリアムスの自在なリズムの解釈が、もはやフリージャズを超越した自由性感度が絶大!
 ただし、それでも普通に聴けてしまうモダンジャズの醍醐味は失せていませんよ。
 全く凄いです。

A-2 Echo
 これぞっ、トニー・ウィリアムスならではのドラムスが主役となった名演の決定版!
 つまりは5分弱のドラムソロなんですが、繊細でシャープなシンバルワーク、テンションの高いタムやスネアのコンビネーション、そしてバスドラのアクセントも絶妙にして迫力満点という、流石の展開は飽きることがありません。

A-3 From Before
 そして始まるのが、混濁して陰鬱な隠れ名演(?)なんですが、ここまであまり出番の無かったハービー・ハンコックが全体をリードしていく展開が素晴らしいかぎりです。
 それは自然にピアノトリオ形式へ発展し、その美しくも緊張感に溢れたアドリブパートの構成力は、あくまでも個人の自由裁量を優先させながら、最高の纏まりとしてクライマックスから大団円へと流れていくのです。特にウェイン・ショーターとサム・リバースが入り込んでくる終盤のスリルは圧巻!
 全体としては抑制されたギリギリのところで勝負しているのでしょうか? もう少しの爆発力も期待してしまうのですが、最後の最後で限りない美学をシンプルに披露するハービー・ハンコックのピアノが万事OK♪♪~♪

B-1 Love Song
 B面に入っては、いきなりサム・リバースのテナーサックスが、不思議なフォークタッチのメロディを吹きまくる、この名曲♪♪~♪ 実際、妙な哀愁と中毒性を兼ね備えた演奏は、トニー・ウィリアムスの張りきったスティックワークが楽しめますし、聴き易い中庸アップテンポながら、決してマイルス・デイビスなんか出る幕が無いというムードが濃厚にあるんですねぇ~。
 サム・リバースも要所では十八番のダーティなトーンで彩られた混濁フレーズを聞かせてくれますし、ハービー・ハンコックは薬籠中の「節」を大サービスして、まさに新主流派の醍醐味がいっぱいです。
 ちなみにウェイン・ショーターは休憩中なのでした。

B-2 Tee
 一転して過激な濁流が襲いかかってくる強烈な演奏!
 それをリードしているのは、明らかにウェイン・ショーターの奇怪なテナーサックスとはいえ、トニー・ウィリアムスが得意技の完全披露する激烈な4ビートで全篇のジャズグルーヴを確保していますから、タダでは済みません。
 このアルバムに収録された中では、一番にマイルス・デイビスっぽいムードと言えばそれまでなんですが、ここに果たして御大が入ってこられるかは、不確定の要素が強く存在すると思います。もちろん、それを逆手に活かしたメンバー各人の力演は激しいですよ♪♪~♪
 ウェイン・ショーターが意地悪く浮遊すれば、必死に追い縋るトニー・ウィリアムス! それを笑って許してのハービー・ハンコックとゲイリー・ピーコックという構図には、4ビートジャズが行く所まで、確かに行ってしまった感じさえします。
 ところが凄まじいゲイリー・ピーコックのペースのアドリブの途中で、いきなり演奏がカットされ、終了するんですねぇ~~!?! これについては当時から、後に続くと思われるサム・リバースのアドリブパートがヘタレだった!?! とか、あるいは意図的に思わせぶりをやった目論見だとか!?! 賛否両論があったようです。
 まあ、サイケおやじ的には答えの出せない疑問ではありますが、この唐突な終了が、なかなか良い感じ♪♪~♪

ということで、ある意味では究極の4ビートジャズだと思うんですが、実は最初に聴いた時のサイケおやじは、妙にサイケデリックロックの雰囲気を感じていました。

後で知ったところでは、当時のトニー・ウィリアムスはモダンジャズのトップドラマーでありながら、気持はロックへ傾いていたそうですし、このリーダー盤以降では、ついにジョン・マクラフリン&ラリー・ヤングと組んだフリーロックという言うべき傑作「ライフタイム」を作ってしまったのも、納得出来ます。

それと、ここまで散々書いたマイルス・デイビス云々に関しては、親分が決して古いとかいう問題ではなく、その基本姿勢がジャズかロックか、そういう部分の拘りにあったとすれば、個人的には氷解するのですが……。このセッション後に録音された、例の「プラグド・ニッケル」でのライプ盤あたりを聴くと、こちらの尖がり方がモダンジャズの保守本流を危うくしていた気がするほどです。

永田町のカッコマン議員の先生方には、こういうものが必要だと痛感する次第です。


ぶる~すな気分にピーター・グリーン

2009-11-04 12:34:48 | Rock

黒くてニクイ女の子 / Fleetwood Mac (Blue Horizon / ソニー)

大義名分もあるし、もちろん法律的な裏付けもしっかりとあるんですが、ここ数日の私の仕事は鬼のように、非道です。

相手は自業自得、しかし私のやっていることは、やはり正義じゃないよなぁ……。

と恥ずかしながら青春物語のような自嘲に満ちている私の気分は、ぶる~~す……。

ですから、本日は朝から、こんなん聴いてしまったです。

ご存じ、サンタナのラテンロックな演奏が世界中で大ヒットした「Black Magic Woman」、そのオリジナルバージョンなんですが、なんとフリートウッド・マックの日本盤シングルには曲タイトルが、日本語で小さく「黒くてニクイ女の子」と入っているんですねぇ。

もしかしたら、初回盤は邦題が大きくデザインされたジャケットになっていたのかもしれませんし、当然ながらサンタナのバージョンが大ヒットした事による再発ジャケットが、本日掲載の私有盤かもしれません。

まあ、それはそれとして、フリートウッド・マックは1975年以降のポップス路線での大ブレイクが、あまりにも強烈な印象ですが、1967年頃の結成時には英国産ブルースのブーム、つまりブルースロックの代表的なバンドのひとつとして注目された存在でした。

当時のメンバーはピーター・グリーン(g,vo)、ジェレミー・スペンサー(g,vo)、ジョン・マクヴィー(b)、ミック・フリートウッド(ds) という4人組が定説になっていますが、実際は流動的だったようで、ボブ・ブラニング(b)、クリスティン・パーフェクト(key,vo)、ジョニー・アーモンド(ts,fl) 等々も参加していたようです。

ちなみにピーター・グリーンもジョン・マクヴィーも、そしてミック・フリートウッドもジョン・メイオールのブルースブレイカーズで修業を積んだ後に独立した形ですから、そのブルースロック魂は本物!

特にピーター・グリーンは既に神様扱いだったエリック・クラプトンの後釜に、自ら名乗りを上げて加入したという強者!?! こういうエピソードは情報が遠かった当時の日本では、ある種の神秘的な雰囲気で語られていましたですね。

しかし実際、ピーター・グリーンのギターは、その澄んだ音色と味わい深いフレーズの連なりが、明らかにエリック・クラプトンとは異なっていながら、勝るとも劣らないブルースフィーリングは唯一無二! 聴くほどにシビレるばかりです。

で、肝心のオリジナル「Black Magic Woman」は、サンタナのバージョンに比べると濃厚な妖しさは当然ながら不足しているものの、ドンツカでダサダサのドラミングが逆にカッコ良いというか、それがあってこそ冴えわたるピーター・グリーンのギターが泣きまくり♪♪~♪

実は告白すると、私はサンタナのバージョンが気に入ってから、このオリジナルバージョンでフリートウッド・マックとピーター・グリーンのギターに邂逅したのです。そして前述のプレースプレイカーズ時代のエビーソードや偉大なギタリストとしての諸々を追々に知らされていくのですが、確かにここでの演奏後半で楽しめるシャップルなノリはブルースロックがド真ん中!

ということで、ピーター・グリーンも私の憧れのギタリストのひとりとなりました。

しかし本人はご存じのとおり、精神的な要因と言われていますが、全盛期にグループを脱退して、長い隠遁生活に入ってしまうのです。このあたりはフリートウッド・マックが以降に音楽的な変遷を重ねていく事と無縁ではないようです。

しかし個人的には、やはりブルースロックをやっていた時代のフリートウッド・マックが大好きで、本日のような「ぶる~すな気分」の時にはジャストミートなんですねぇ……。

ちょいと今日は、気分もディープということで、失礼致します。


イケイケだったアニマルズ

2009-11-03 10:47:16 | Rock

It's My Life c/w I'm Gonna Change The World / The Animals (EMI / 東芝)

昭和40年代の日本の洋楽事情はベンチャーズを別格として、ビートルズが何でも一番だったった事は、これまでも度々、述べました。

しかし、そうした中にも根強く凄い人気を獲得していたのが、ご存じ「朝日のあたる家」で大ブレイクしたアニマルズです。とにかく持ち味の真っ黒でハードな歌と演奏は、時として歌謡演歌グルーヴというか、粘っこいコブシを伴ったエリック・バートンの歌いっぷりとゴリゴリのインストパートが琴線に触れまくり♪♪~♪

それはイギリスの白人バンドということで、もしかしたら本場アメリカの黒人R&Bよりも分かり易いものだったのかもしれませんし、ロック本来の突進力が何をやっても強く表現されていました。

ですから我国でも、例えば尾藤イサオが「悲しき願い / Don't Let Me Be Misunderstood」をカパーヒットさせたり、GS期には多くのバンドがアニマルズをお手本にした演目をやっていたのは、今日までに残されているレコードからも明らかですし、昭和40(1960)年6月の来日公演も大盛況!

しかしアニマルズというグループ内部は世界中で人気が沸騰するにつれ、ゴタゴタが噴出していたようです。そしてリーダーのアラン・ブライス(key,vo) が追い出される形で脱退するというところから、新メンバーのデイヴ・ロウベリー(key) を迎え入れ、1965年末に放ったヒットが、本日ご紹介のシングル曲でした。

ボボン、ボボンと弾むエレキポースに、幾分エキセントリックなエレキギターの定型フレーズが終始鳴り響き、その中にはビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンが好んで使うようなコードも入っている感じのポップさとサイケデリックの元祖のような妖しさが同居してしています。

しかしエリック・バートンの思わせぶりに真っ黒なリードボーカルが、相変わらずの力強さ! そしてコール&レスポンスのコーラスを伴ったクラマックスが実に熱いのです。そして覚えやすいキメのフレーズと歌詞にも、一緒に歌えるロックヒットの醍醐味があるのです。きっとライプの現場では、この曲をやるとステージと観客が一体化していたのでしょうねぇ~♪ そんな想像も易い、素晴らしいさです。

またB面収録の「I'm Gonna Change The World」はエリック・バートンが十八番の強引に粘って、さらに突進していく芸風が全開の爽快な名曲名演! ある意味、当時のストーンズよりも分かり易く、それでいて迫力でも上まわっているんじゃないでしょうか!? 新加入のデイヴ・ロウベリーのオルガンも前任者のアラン・ブライスよりはジャズ風味を抑えて、尚更にロックのフィーリングを強く打ち出した好演が新しいと思います。

それと歌詞の中身についても、この「I'm Gonna Change The World」は「白も黒も、右も左も拘りなく、とにかく世界を変える、変えてみせる!」と言った、如何にも当時、ロックや音楽で革命が成し遂げられるかもしれないという幻想を、実に強く歌っていますが、これはエリック・バートンのオリジナルで、後々のサイケデリック&プロテスト路線の発端的な証でしょう。

このあたりにもリーダーがアラン・プライスからエリック・バートンに移行した、本当に新しい姿勢が実感出来ると思います。

また逆の意味で、享楽を求めるしかない生き様を歌うA面にしても、その強引な表現力が如何にもアニマルズがド真ん中ですから、日常会話が英語の世界でも、それほどの違和感は無かったと思われます。

結局、アニマルズは大衆芸能路線から反体制の先進的なバンドへと変貌していった、所謂「本物」のロックバンドでした。それが後には「朝日のあたる家」の一発屋的な扱いから懐メロバンドとしか思われてない現状は、ちょっと哀しいものがあります。

それは「アニマルズ」を名乗るバンドが幾つも同時に存在していたり、エリック・バートンがアニマルズ以降に展開していた活動が真っ当に評価されていない現実にも象徴されておりますが、告白すると私はストーンズよりもアニマルズが好きな瞬間さえ、あるのです。

ということで、アニマルズ万歳!

本日は、これが結論ということで、暴言戯言、ご容赦願います。


マウンテンのリアルな幻想

2009-11-02 11:14:09 | Rock

悪の華 / Mountain (Windfall / Bell)

1970年代前半のロックを語る時、ふっと思い出すと言うよりも、実は相当に焼き付けられているのが、マウンテンというハードロックのバンドでしょう。

決してシングルヒットを出したわけでもなく、またロック史を変革した云々なんて事とは無縁のグループでしたから、今となっては忘れられた存在であるにも関わらず、何か古い友人と語り合った時の思い出話の様なものかもしれません。

しかし当時は、かなり熱い人気を獲得していました。

その秘密はメロディアスでハードなレスリー・ウェストのギタープレイであり、またクリームのプロデューサーとして辣腕を振るったフェリックス・パパラルディが「夢よもう一度」を見事に体現したサウンド作り! これを軸としたヘヴィで少しばかり湿っぽい歌と演奏がウケたのでしょう。欧米はもちろん、日本でも人気が爆発したのは、今となっては妙な心持さえするほどです。

そして本日ご紹介のアルバム「悪の華 / Flowers Of Evil」こそ、その決定打となった人気盤! 1971年に発売されるや忽ちの大ヒットとなり、我国では翌年「悪の華」という極めてストレートな邦題で売れまくりでした。ここに掲載したのは、その私有のアナログ日本盤です。

 A-1 Flowers Of Evil / 悪の華
 A-2 King's Chorale / 王様のコラール
 A-3 One Last Cold Kiss / 最後の冷たいキス
 A-4 Crossroader
 A-5 Pride And Passion / 誇りと情熱
 B-1 Dream Sequence / 幻想の世界
        Guitar Solo
        Roll Over Beethoven / ベートベンをぶっ飛ばせ
        Dreams Of Milk And Honey / ミルクとハチミツの夢
        Variations / バリエーションズ変奏曲
        Swan Theme / 白鳥のテーマ
 B-2 Mississippe Queen

このLPが上手いのは、A面がスタジオ録音、そしてB面がフィルモアでのライプという、丸っきり「クリームの素晴らしき世界」を強く想起させてくれることでしょう。それもこれも、プロデューサーのフェリックス・パパラルディの目論見がズバリと読み取れるのですが、当時のマウンテンのメンバーはレスリー・ウェスト(vo,g)、フェリックス・パパラルディ(b,key,vo)、コーキー・レイング(ds)、そしてスティーヴ・ナイト(key) が加わった全盛期の4人組でした。

ちなみにレスリー・ウェストは1967年頃、フェリックス・パパラルディに発見され、ローカルバンドながらレコードデビューもしていた巨漢ギタリストで、それがクリームの解散により、その路線の発展継承計画の中で誕生したのが、マウンテンというわけです。

このあたりの経緯については後に知った事ではありますが、とにかく後追いで聴いた1969年制作発売のデビューアルバム「レスリー・ウェスト / マウンテン」は、なかなかに正統的なハードロックの秀作でした。

そして続く「マウンテン・クライミング」や「ナンタケット・スレイライド」でファンを増やしつつ、待望の発表となったのが、この「悪の華」ですが、実は本当にマウンテンがブレイクしたのは、この「悪の華」以降だと思います。そして過去の作品がクローズアップされたのが、我国の実情だったように思うのですが、まあ、それはそれとして、とにかくマウンテンの魅力とはレスリー・ウェストのメロディ中心主義で泣きまくりのギターとフェリックス・パパラルデが中心となって作り出されるヘヴィでハードなサウンド♪♪~♪

そのあたりが特に顕著なのが、このアルバムA面ド頭のタイトル曲「悪の華」でしょう。グリグリにヘヴィなリフを基調としながらも、巧みにピアノを配して叩きつけるようなキメを構築し、覚えやすい曲メロとソウルフルなレスリー・ウェストのボーカルをメインに仕上げたキャッチーなところは流石、フェリックス・パパラルディの手腕が冴えまくり♪♪~♪ 当然ながらクリーム色も強く、そしてレスリー・ウェストのギターが泣きじゃくるのですから、これで心が躍らないロックファンは皆無と思われます。

まあ、正直言えば、前作アルバムまで濃厚だったドロドロ感が薄れているところは従来のファンには物足りないかもしれませんが、この「悪の華」があってこそのファン増大は、決して否定出来ないものがあるのではないでしょうか。

その賛否が上手く解消されるのが、物悲しいインスト曲「王様のコラール」を経て始まる「最後の冷たいキス」の重量級演奏でしょう。自在に蠢くフェリックス・パパラルディのペース、苦渋の選択という感じが強いレスリー・ウェストの歌とギター、現代音楽と演歌が融合したような曲メロも強い印象を残しますし、随所で滲み出るプログレ的なキメも好感が持てます。

そしてハードロック中毒者が最も嬉しいのは、フェリックス・パパラルディが「バッハがブルースを書くと、こうなるよ」と自ら語ったクリーム再現曲「Crossroader」でしょう。しかし個人的には、どこがバッハなのか? 良く分からないのですが、とにかくヘヴィなリフと対峙するレスリー・ウェストのギターが痛快ですし、それが疑似プログレという続く「誇りと情熱」へと繋がる流れは心地良いかぎり♪♪~♪ ここでは当時、大いに話題になっていたレスリー・ウェストのバイオリン奏法、つまりギターにあるボリュームをコントロールすることで生み出されるバイオリンの様なフレーズの放出が、なんとも懐かしいというか、今となってはニヤリとするのがリアルタイムからのファンだと思います。

こうしてレコードをB面に返すと、そこは激烈熱血のハードロック天国!

「幻想の世界」と題されたメドレー演奏は、当然ながらレスリー・ウェストのギターと歌をメインにしたド迫力の展開ですが、まずは冒頭のギターソロで、意外にも繊細な力量を聞かせてくれるのが絶妙のスパイスとなっています。

既に述べたように、レスリー・ウェストはギターが小さく見えるほどの巨漢であり、モジャモジャのヘアースタイルにワイルドな容姿、さらに情熱が裏返ったような意気込み先行型のボーカルが、ブルースブレイカーズ時代のエリック・クラプトン直系という、つまりレスポールのギターにマーシャルのアンプという正統派ハードロックの音で彩られますから、その奥底に確固として存在するナイーブな感覚は必要十分条件でしょう。

そのあたりを上手くプロデュースしていたのが、フェリックス・パパラルディに他なりません。

このB面で楽しめるライプ演奏でも、グリグリに蠢き、ドライヴしまくったベースで暴れながら、要所ではレスリー・ウェストの歌とギターを完全にサポートし、またドラムスやキーボードを巧みにリードしています。

肝心の演奏ではビートルズでもお馴染みのチャック・ベリーが書いたR&Rの古典「ベートベンをぶっ飛ばせ」に血沸き肉躍るはずです。そしてレスリー・ウェストのギターから弾き出される、実にメロディ優先主義のアドリブ間奏が、もう最高♪♪~♪ 個人的にも熱中してコピーしたものですが、簡単なようでいて、非常に難しいピッキングが!?!

このあたりはレスリー・ウェストのギター奏法全般に共通することで、リアルタイムの音楽誌やギター教則本でも、特別に取り上げられたものですが、チョーキングひとつにしても、そのニュアンスを真似るのは至難です。

またバンドの勢いもたまらないところで、地響きの如く暴れるフェリックス・パパラルディのペース、幾分軽めのドラムスとキーボードが良い感じ♪♪~♪ それゆえにある時は暴虐のリズムギターで突進するレスリー・ウェストが、次の瞬間、沸騰融解する強烈なアドリブソロに突入する必殺技がビシッとキマるのでしょう。

あぁ、実に爽快です!!!

そして、ついにやってくれるのが、当時のマウンテンでは必須の人気曲「Mississippe Queen」です。これはリアルタイムのニューシネマ「パニシング・ポイント」のサントラにも使われた典型的なハードロックなんですが、こういうリフとかノリって、わかっちゃいるけどやめられない! しかもこのライプバージョンでは、クリームの「政治家」のリフを一節、ちらりとやってくれますからねぇ~♪ この大サービス、たまらんですよ♪♪~♪

ということで、これはマウンテンの人気盤という以上に、ハードロックの傑作盤となりましたから人気は沸騰!

ところがなんと、マウンテンは突然に解散!?!

と言うよりも、レスリー・ウェストがクリームの残党であるジャック・ブルースと組んだ新バンド、ウェスト・ブルース&レイングを結成してしまうんですねぇ~。これには本当に、仰天させられ、期待が膨らんだのですが、結果はご存じのとおり、あまり冴えたものではありませんでした……。

このあたりの原因は不明なんですが、そんなこんながあって、前述したウェスト・ブルース&レイングの来日公演が、これまた突如として再結成マウンテンに変更されたのも懐かしい思い出です。

ハードロックは何時しか、丸で時代錯誤の象徴に言われてしまった時期がありました。そしてレスリー・ウェストにしても、マウンテンがフェードアウトしてしまった1970年代末には消息不明とさえ伝えられた存在になったのは、ちょいと悲しかったですねぇ……。

それが近年は時折の復活や過去音源の発掘もあって、再び熱い注目を集め始めたのは嬉しいところです。その中にはレスリー・ウェストのギター奏法のあれこれに関し、なかなかオタクっぽい世界も繰り広げられているようですが、まずはマウンテンという、一時的にではあるにせよ、クリームの夢を見せてくれたバンドは素敵な思い出になっています。


中村晃子のデビュー盤♪♪~♪

2009-11-01 10:35:33 | 歌謡曲

東京のイブ / 中村晃子 (キング)

昭和歌謡曲の大ヒット「虹色の湖」があまりにも有名な中村晃子のデビューシングル盤が、これです。

なんと仕事関係者のご厚情により、入手出来ました♪♪~♪

発売されたのは昭和40(1965)年10月ですが、A面の「青い落ち葉」は当然ながらヒットしていません。う~ん、なんというか、彼女の個性が活かされていない、些かの勘違いが……。

しかしB面収録の「東京のイプ」は正統派青春歌謡からエレキ歌謡への橋渡しのような、実に素敵な名曲にして、彼女の分厚い声質が素晴らしく輝いた名唱だと思います。

アップテンポで痛快なブラスアレンジ、ちょいと大仰なバックのコーラス、イントロからピンピンに躍動するエレキベースとビリっとしたエレキギター、熱いアルトサックスの合いの手もワクワク感を強めています。

そして何よりも、本音で生きる若い女の心情をハスッパに歌う中村晃子が、実に良いですねぇ~♪

ただし、皆様も良くご存じのように、当時の彼女は女優としての活動がメインでありながら、そのポジションが清純派でも、演技派でも無い、些か中途半端なものでしたから、なかなか思い切ったことが……。

あぁ、そのあたりが本当に勿体無かったですねぇ

しかし、それゆえにちょうど2年後に発売され、忽ちの大ヒットになった「虹色の湖」が尚更に眩しいと言っては、贔屓の引き倒しでしょうか。

今日は、そんなことを想いながら、このシングル盤を楽しんでおります。

あらためて感謝♪♪~♪