OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ビートルズの残影・パイロット篇

2012-01-21 15:48:13 | Rock

Magic / Pilot (EMI / 東芝)

これまでにどういう経緯があったにせよ、やはりサイケおやじはビートルズが好きですから、必然的にその影響下にあるバンドや歌手、あるいは楽曲の諸々には大いに気が惹かれます。

例えば本日ご紹介のパイロットは1970年代ポップスがお好みの皆様にとって、まさに説明不要というビートルズ後追いバンドのひとつであり、同様の路線で1960年代末から活躍し、大変な人気を集めたアイビーズバッドフィンガーが小型ビートルズならば、パイロットはイギリス版チューリップというのが、サイケおやじの独断と偏見による分類です。

と言うのも、我国のチューリップが「魔法の黄色い靴」で公式デビューしたのが1972年なのに対し、パイロットのそれは1974年という時差は決定的でありますが、しかしビートルズというドグマの呪縛を良い方向へと解釈進化させた音楽性は極めて同質の魅力に満ちているんですねぇ~♪

しかもチューリップが広く大衆に受け入れられた大ヒット曲「心の旅」で完全ブレイクしたのが、1973年夏! ということは、パイロットが既に好んで使う似たようなエレキギターの響きや曲メロの展開手法、そしてコーラスの用い方等々が如何にも!????

う~ん、このあたりには何かミッシングリンクのようなものが存在しているんでしょうねぇ……。

という疑問を瞬時に抱かざるをえないほど、パイロックのというバンドは気になる存在で、このデビュー曲「Magic」発売時のメンバーはデヴィッド・パットン(vo,g,b)、ビル・ライオール(vo,key)、スチュアート・トッシュ(ds) という3人組でしたが、実際には数人のギタリストが交代で参加していた言われています。

とすると、この「Magic」で好ましいテンションのギターを弾いているのは誰でせう?

実はパイロットのビートルズ趣味を探求する時、絶対に無視出来ないのがプロデュースを担当したアラン・パーソンズの存在で、今日まで続くこの才人の活動の根底にあるのが、後期ビートルズのサウンドエンジニアだったという履歴でしょう。

その周辺については、何れじっくりと書きたいところですが、とにかく正式デビュー前のパイロックに既に濃厚であったビートルズっぽさを増幅させるに必要な因子が、アラン・パーソンズであったとすれば、我国のチューリップが尊敬の念を抱いて目標とした道筋が、何故か共通の響きであったという、ちょいと上手く表現出来ないミステリアスな魅力は何時までも残るんですねぇ~。

きっと、その間にはサイケおやじが未だに知らない事象があるはずというのは、本当に悔しいです。

しかし、そうは思いつつも、現実的にパイロットというバンドは大好きですし、この「Magic」を端緒として残された音源は全てが愛おしいばかり♪♪~♪

それゆえに現在まで、きっちり纏まった復刻が成されていないのも、また悔しいところですが、まずはひとつひとつ、楽しんでいくのが得策なのでしょう。

皆様にも、ぜひ聞いていただきたいところです。

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ピケット対オールマン=フェイム組の凄さ

2012-01-20 16:04:30 | Soul

Hey Jude / Wilson Pickett (Atlantic)

幾ら強がっても、基本は気が弱いサイケおやじですから、ここ一番の仕事や生活の諸々で気合いが必要な時には、それなりの手助けを必要とする事が度々です。

そしてそんな時、特に有用なのが音楽であって、例えば本日ご紹介のアルバムはその点において、サイケおやじの愛聴盤のひとつ♪♪~♪

ご存じ、黒人R&Bの王道歌手として、まさにソウル度満点のボーカル&シャウトを存分に聞かせてくれたウィルソン・ピケットが1969年に出したヒットアルバムなんですが、実は告白すると、サイケおやじがこのLPをゲットしたのは別の目的でありました。

そうです、既にご推察の皆様も大勢いらっしゃるはずですが、ここに収録の歌のバックには早世した天才ギタリストのデュアン・オールマンが参加しているのです。

 A-1 Save Me
 A-2 Hey Jude
 A-3 Back In Your Arms
 A-4 Toe Hold
 A-5 Night Owl
 A-6 My Own Style Of Loving
 B-1 A Man And A Half
 B-2 Sit Down And Talk This Over
 B-3 Search Your Heart
 B-4 Born To Be Wild
 B-5 People Make The World

さて、今では既定の事実として良く知られていますが、黒人R&Bの制作現場は、ほとんどの場合において白人が主導しているのが常であり、それは全体を統括するプロデューサー以下、特にセッションのカラオケパートが白人ミュージシャンによって演じられていたという真相は、それをバックに歌う黒人歌手にとっても最初は戸惑いがあったと言われています。

そしてウィルソン・ピケットの場合も例外ではなく、実はニューヨーク周辺では黒人ミュージシャンを中心として行われていたレコーディングの実際が、むしろさらに本質的なブラックソウルを全面に打ち出していたアメリカ南部録音の諸作、つまり所謂サザンソウルの場合は、例えばメンフィスのスタックスサウンドのように、その本質が白人によって作られていた現実があって、最初にそれを知らずに現場へ入った瞬間、驚愕したと本人が事ある毎に語っていたほどです。

しかし流石は大物の貫録というところでしょうか、ウィルソン・ピケットがそうした現場から最初のヒットを出したのは、おそらく1965年の「In The Midnight Hour」からだと思うのですが、とにかくずっしりとヘヴィなバックの演奏と粘っこい熱血ソウルなボーカルスタイルの相性の良さは抜群! 以降の大ヒット連発は有名な歴史だと思います。

で、そうした流れの中の1968年晩秋、ウィルソン・ピケットのレコーディングセッションに参加したのが、後にオールマン・ブラザース・バンドで大ブレイクするデュアン・オールマンであり、そこから作られたのが本日掲載のアルバムというわけですが、既にレコード産業はLP主体に移りつつあったとはいえ、まだまだ時代はシングルヒットが優先され、アルバムが出されるのは、それがあってこその実情でしたから、セッション毎に幾つか録られた楽曲は当然ながらシングル向けの候補が必要であり、なんとっ!? 選ばれのはビートルズが同時期に世界中で大ヒットさせていた「Hey Jude」なんですから、これにはウィルソン・ピケット本人も躊躇いがあったと言われています。

ちなみに書き遅れていましたが、件の現場はアラバマ州のフェイムスタジオで、プロデューサーはそこのオーナーである白人のリック・ホールということは、参加ミュージシャンがジミー・ジョンソン(g)、バリー・ベケット(key)、デヴィッド・フッド(b)、ロジャー・ホーキンス(ds) 等々を中核とする所謂マスル・ショールズ・リズムセクションであり、デュアン・オールマンは西海岸に出てのメジャーデビューとなったアワ・グラスというバンドの失敗から出身地の南部に舞い戻り、当時はセッションギタリストとして活動していた頃……。

それがどういう経緯か、とにかくフェイムスタジオにおいてウィルソン・ピケットのセッションで名演を残したことは決定的で、特に問題の「Hey Jude」はもちろん歌の魅力は絶大ながら、デュアン・オールマンのド派手なギタープレイがあってこそのシングル発売決定だったように思います。

それは誰もが知っているメロディを抑え気味に歌い出すウィルソン・ピケットがジワジワと提供する荘厳なムード、それに寄り添いながら要所で鋭いツッコミを入れ、絶妙のスパイスとなるデュアン・オールマンのギター♪♪~♪ そして後半からの盛り上がり大会では激しくソウルフルなシャウトをさらに煽るアグレッシヴなフレーズの乱れ撃ち!

あぁ~、何度聴いても、興奮しますっ!

しかし、正直に告白すれば、この「Hey Jude」を最初に聴いた時のサイケおやじは、その凄さや興奮性感度の高さには馴染めず、何故ならば、オールマンズで堪能させてくれたロックギター本来の流麗にしてハードなノリが無かったからで、もうひとつ事情を述べておけば、それはデュアン・オールマンの死後に纏められた「メモリアル・アルバム」という故人のセッション活動時代の業績も含む2枚組オムニバスLPに入っていたトラックでしたから、他の収録演目と比較して、何が名演なのか? イマイチの実感が掴めなかったというわけです。

ところが、このアルバム単位で聴くウィルソン・ピケットとデュアン・オールマン、そしてフェイムスタジオのセッションミュージシャンとのコラポレーションは最高の極みとしか言えないほど、濃密で熱いグルーヴに満たされています。

実はデュアン・オールマンが明確にギターを弾いていると断定出来るのは、「Hey Jude」の他に「Save Me」「Back In Your Arms」「Toe Hold」「My Own Style Of Loving」「Search Your Heart」「Born To Be Wild」だけと思われますから、アルバム全体に捨て曲無しの仕上がりを鑑みれば、如何に参加ミュージシャン全員のレベルが凄かったか!?!

完全に震えて実感するばかりですっ!

それはデュアン・オールマンの名演として持ち上げた「Hey Jude」にしても、ウィルソン・ピケットの歌に呼応するが如き盛り上げに資するホーンセクションの熱さ然り、エッジの効いたリズム隊のエグ味然し!

そうしたところがあって、初めて成立する傑作トラックだと思います。

その意味で個人的にも好きでたまらないのが、グツグツとミディアムテンポで血が滾っていくような「Back In Your Arms」のソウルグルーヴの凄さで、もちろん基本は黒人ゴスペルフィーリングでしょうし、さらにディープな「Search Your Heart」の真っ黒な蠢きも最高ですよっ!

また流行歌というか、「Hey Jude」にしてもそうなんですが、リアルタイムでヒットしていたロック曲のカバーである「Born To Be Wild」はステッペンウルフの「ワイルドで行こう!」ですから、まさにイケイケのウィルソン・ピケットが満喫出来ますし、ほとんどCCRスタイルの「A Man And A Half」にしても、実質的にスワンプロックの種明かし的な仕上がりになっているのは、もうひとりの参加プロデューサーとして暗躍したトム・ダウトの仕業かもしれません。

しかし、このアルバムの出来が素晴らしいのは、黒人公民権運動との繋がりも深いと思われる名曲「People Make The World」をオーラスに配置したことでしょう。

まあ、率直に言えば些か大袈裟な感じも致しますが、それでもこれだけの名曲名唱は滅多にあるものではなく、おそらくは作者のボビー・ウーマックが弾いているであろうギターの味わいも、なかなか深いものがありますよねぇ~♪

ということで、繰り返しますが、個人的には聴くだけで「力が入る」、まさに気力充填の愛聴盤です。

特に強いバックビートに支えられた、横揺れするようなリズムの快感は至極であり、熱血と情緒を併せ持ったウィルソン・ピケットのボーカル表現は絶好調! 加えてデュアン・オールマンのギターが随所で楽しめるとあっては、繰り返し何度も針を落してしまうのは必定であり、それでいて決して飽きることがありません。

そのあたりはアクが強すぎるスタイルとも言えるウィルソン・ピケットの歌いっぷりを鑑みて、ちょい聞きには若干の精彩に欠けるというご意見も各方面であるようですが、十人十色の好き嫌いと断じます。

それほど、このアルバムが好きっ!

というのがサイケおやじの偽りの無い心情であります。

そして最後になりましたが、デュアン・オールマンを聴くために買ったLPで、実はフェイムスタジオ組の実力を再発見させられ、そっち方面の奥の細道を辿り始めたことを追記させていただきます。

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これを聴けば気分だけは蘇る

2012-01-19 14:57:40 | 歌謡曲

蘇る金狼のテーマ / 前野曜子 (キャニオン)

本当にバカヤローな仕事が続き、ブチ切れて辞めてやろうと思っても、やっぱり度胸の無いサイケおやじにはそれが出来ません。

実際、自分の扱いを冷静に眺めても、完全に腰がぬけている情けなさですよ……。

しかし、心の奥底には汚いお偉方への反抗心が消えていませんから、せめて気分は大藪春彦&松田優作の「蘇る金狼」で!?!

そう思うのが今日の本音であって、掲載したシングル盤を朝から鳴らしてしまった事についても、皆様のご理解を願うばかりでございます。

ちなみに説明不要かとは思いますが、大藪春彦の原作は昭和39(1964)年に発刊された人気作であり、松田優作主演の映画版は昭和54(1979)年に制作公開されての大ヒット作になりましたから、以降も様々なバリエーションによる映像化が続いています。

しかし松田優作主演版は、普段冴えないサラリーマンが実は裏の本性を剥き出しにしての野望達成を狙うという、原作の本筋をなかなか上手く纏めていましたし、何よりも松田優作のハードボイルドでクールなオトボケも見事な演技と佇まいが、一般にイメージされている期待を裏切りませんでした。

全裸でやられる風吹ジュンも良かったですねぇ~~♪

う~ん、これもまた、男のひとつの憧れであり、決して実現不可能な世界を虚構であるにせよ、銀幕の世界と映画館の闇の中という特殊空間で堪能出来たことは大いにありがたい話だったのです。

さて、そこで現在の自分の状況や心情を鑑みれば、その主人公のように強い目的意識で体を鍛えていたわけもなく、野望と実践的欲望を満たす手段としての女犯も出来ず、はたまた諦観的な破滅への道も辿れませんから、せめて主題歌によってムードに浸るのが関の山でしょうか。

実際、前野曜子がジワっと歌ってくれるそれは、ギスギスした心へ滲みわたるんですよねぇ~~♪

いゃ~、高音域での刹那のハスギーボイスによる歌い回しが全く絶妙♪♪~♪

もちろん楽曲そのもののメロディ&歌詞もロマンに満ちているんですけどねぇ、それを歌えるのも前野曜子の真骨頂でしょうが、彼女については何れ、じっくりと書きますので、今日はここまでと致します。

で、「蘇る金狼」の気分なんですが、当然ながらサイケおやじには松田優作演じるところの主人公のようなハードボイルドな生き方は出来るはずもありませんから、主題歌を聴いたせめてもの結論として、「蘇る勤労意欲」ってところですか……。

失礼致しました。

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縺れっぱなし

2012-01-18 15:51:18 | Weblog

申し訳ありません……。

仕事で難儀して、本日の1枚は休載致します。

ご容赦下さいませ。

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1960年代テイストのジョー・パス

2012-01-17 15:33:07 | Jazz

A Sign Of The Times / Joe Pass (World Pacific)

今でこそジョー・パスの演奏はレコード&CDで気軽に聴けるようになりましたが、この天才ギタリストが「ヴァーチオーゾ」という完全ソロギターの傑作アルバムによって大ブレイクを果たした1970年代前半は、まだまだそんな状況ではありませんでした。

というか、一応は1960年代に残したモロジャズ盤はそれなりに日本でも再発されていたんですが、基本的に悪いクスリに耽溺していた頃であれば、その分量は需要を満たすことがなく……。

ですから、必然的にジョー・パスのファンは奥の細道に入ってしまうはずが、そんな中にあっても殊更我国で無視されていたのが、本日ご紹介のLPです。

なにしろ結論から言えば、皆様もご推察のとおり、これは所謂イージーリスニングジャズという、ある種のムード音楽盤であり、思わず見惚れてしまう素敵なパツキンのお姉さまがデザインされたジャケットも、実は1970年代のガチガチのジャズ者からは疎まれる大きな要素でもありました。

 A-1 A Sign Of The Times
 A-2 The Phoenix Love Theme
 A-3 Nowhere Man / ひとりぼっちのあいつ
 A-4 Dindi
 A-5 A Summer Song
 A-6 Moment To Moment
 B-1 It Was A Very Good Year
 B-2 Are You There
 B-3 What Now My Love / そして今は
 B-4 Softly As I Leave You / そっとさよなら
 B-5 Sweet September

しかし、そういう点からすれば、ウェス・モンゴメリーはどうなんだっ!?

と思わず語気を強めたくなるのが、サイケおやじの正直な気持であり、告白すればこのアルバムを入手して謹聴したのはフュージョン全盛期の1970年代も後半でしたから、収録演目に因む見事な1960年代テイストが、周囲の目には如何にも時代遅れだったにちがいありません。

ただし西海岸の主流派編曲家として見事な実績を積み重ねていたボブ・フローレンスのアレンジは、このアルバムが制作発売された1966年前後の流行最先端だったボサノバのソフトロック的展開が集約されたものですし、それに迎合する事のないジョー・パスのギタープレイはモダンジャズそのものなんですよねぇ~♪

例えばアルバムタイトル曲「A Sign Of The Times」はトニー・ハッチが書き、ぺトゥラ・クラークが歌ってヒットさせた黄金のブリティッシュポップスなんですが、ここでの弾みきった明るい演奏は女性コーラス隊のハミング&スキャットに彩られながらも、実に凄いメロディフェイクと瞬間芸の極みのようなアドリブフレーズが飛び出しているですよねぇ~♪ しかも随所で活躍するフルューゲルホーンがチェット・ベイカーなんですよっ!

う~ん、わずか2分ちょいの演奏時間に、これだけ濃密な楽しさをテンコ盛りにしたサービス精神は流石だと思うばかりです。

そして続く「The Phoenix Love Theme」は映画音楽からの抜粋流用らしいんですが、スウィートな女性コーラスやボサロックのビート、全体のメロディの流れ等々、如何に我国歌謡界の作編曲家がこのあたりを研究鑑賞していたかを物語るんじゃないでしょうか。個人的には何か山下達郎のオールディズ系の歌が出てきそうな錯覚さえ覚えるんですよねぇ~♪

ちなみに演奏メンバーとしてジャケットにしっかりと名前が記載されているのは、ジョー・パス(g)、チェット・ベイカー(tp,flh)、フランク・キャップ(ds) だけなんですが、言わずもがなの推察として、当時のハリウッドポップスを裏で支えていたスタジオミュージシャンが良い仕事をやっているのは既定の事実でしょう。

しかも全体を貫くソフトロック&ボサロックのビートが実に快適で、ビートルズの大ヒット曲「ひとりぼっちのあいつ」や同じくイギリスのポップス系フォークデュオとして同時代に活躍したチャド&ジェレミーの「A Summer Song」、あるいはシャンソンの有名曲「そして今は」あたりの知られ過ぎたメロディでさえも、抜群の新鮮度で楽しめるんですから、これも後追いの醍醐味ってやつでしょうか♪♪~♪

つまり、それは本質的にジャっズぽい部分が演奏とアレンジの双方で大切にされている証かもしれません。なにしろヘンリー・マンシーニでお馴染みの「Moment To Moment」の4ビートグルーヴは本物ですし、ボサノバ王道の「Dindi」やバカラックメロディの代表格「Are You There」で聴ける濃密なジャズフィーリングは決して侮れません。

そこで前段の話に戻ってみれば、CTIの諸作で絶大な評価のウェス・モンゴメリーのやっていた路線は何も突然変異ではなく、同時期に似たような企画で作られた演奏がどっさりあったというわけです。

しかし、それらが特に我国で無視されたのは、もしかしたら掲載したジャケットの罪深いほどのナイスフィーリングかもしれませんねぇ~。正直、なにかエレキインストのアルバムのようでもあり、モダンジャズ真っ向勝負の雰囲気なんか微塵も感じられませんから!

おそらく、このアルバムを1970年代に愛聴していた日本のリスナーは、ジョー・パスの偏執的ファンかチェット・ベイカーのコレクターが多かったはずで、もちろんサイケおやじは前者でありましたが、もうひとつ、基本的にこういうボサロック物が好きという本質は隠し通せないと観念しております。

決して万人向けとは申しませんが、機会があればジャケ写のムード共々、虚心坦懐にお楽しみいただきたいアルバムで、もしかしたから今日では、ソフトロックのコアなマニアには御用達になっている可能性もあるかと思うのでした。

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蘇るあの日のELP

2012-01-16 15:45:05 | Rock Jazz

Emerson Lake & Palmer Live At The Mar Y Sol Festival '72 (Shout)

キーボードロックの雄であり、1970年代ではプログレなんていう枠を超越する人気バンドであったエマーソン・レイク&パーマー=ELPは、当然ながら世界中を巡業し、公式&非公式にかなりのライプ音源を残していますが、本日ご紹介のCDは1972年4月に出演したプエルト・リコ・ポップ・フェスティバルから、これは待望の纏まった復刻です。

 01 Hoedown
 02 Tarkus
 03 Take A Pebble
 04 Lucky Man
 05 Piano Improvisation
 06 Pictures At An Exhibition / 展覧会の絵
 07 Rondo

と言うのも、当時のELPはまさに上昇期であり、1970年のデビューアルバム発表から翌年には「タルカス」、そして「展覧会の絵」という超絶ヒットの大名盤LPを連発し、さらにリアルタイムの新作「トリロジー」は完成直前! しかもその間に行われていた濃密なライプステージの評判も上々でしたから、既に熱演は期待を裏切らないはずです。

ところが当時、実際に公式音源化されたのは「Take A Pebble ~ Lucky Man」という、グレッグ・レイクがメインのアコースティックなパートだけが、この音楽祭をダイジェストした2枚組ライプオムニバスLP「マール・イ・ソル(Atlantic)」に収められての発売……。

ちなみに件のフェスティバルは3日間の開催で、出演したのはオールマンズ、フェィセズ、マハビシュヌ・オーケストラ、カクタス等々の人気ロックバンドの他にもデイヴ・ブルーベックやハービー・マンといったジャズ系ミュージシャンが多数参加した、今となっては夢のコンサート企画でしたから、前述したライプアルバムだけでは収まらなかった音源がブートで流出していたのは言わずもがなでしょう。

このELPのステージにしても、そうやって聴けた部分もありましたし、実は数年前になりますが、「イン・ザ・ビギニング」という既発音源メインのCD&DVDで構成されたボックスセットのウリとして、ファンには絶対の開陳となったのですが……。

正直に言えば、ステレオライン録音のそれは如何にも臨場感に乏しく、とてもバカ高い件の箱物の価格とは折り合えません。

ですから、ここにCD1枚物として、ほとんど同じ内容が、しかもリマスターされて登場すれば、これは速攻でゲットするのがファンの宿命でしょう。

さらに言えば、ここに収録の演目は、今や伝説となったELP初来日公演のプログラムと極力近いのも高得点!

期待度満点のバンド紹介から、強引に飛び出す「Hoedown」が鳴り出せば、あの後楽園球場の狂熱が思わず蘇ってしまう皆様も絶対に多いはずで、そのアドレナリンの噴出逆流度は天井知らずでしょう♪♪~♪

もちろん「Tarkus」と「展覧会の絵」あたりの人気組曲は当然如く熱血と狂乱の長尺演奏ですし、「Take A Pebble」と「Lucky Man」のアコースティックセットでは、前述したライプオムニバスアルバムではカットされてしまったキース・エマーソンが十八番の「Piano Improvisation」が存分に楽しめますよ♪♪~♪

ちなみにリマスターされた音質はステレオライン録音で、基本的には左にキース・エマーソン、右にグレッグ・レイク、そして真ん中にカール・パーマーの三者定位になっていますが、今回はかなり厚みが感じられるミックスに変えられているようですから、大音量にするほどに違和感は失せていく感じがしています。

また演奏そのものも既に述べてように、これが上り調子の勢いというやつなんでしょうか、現実的には会場の湿度と熱気によって暴走気味だったと言われるキース・エマーソンの各種シンセやムーグ等々の響きが結果オーライの興奮度を生み出していますし、要所で炸裂するカール・パーマーの大車輪ドラミングや力強くて、さらに味わい深いグレッグ・レイクの歌いっぷりは言うまでもありません。

ですからオーラスの「Rondo」はご存じ、キース・エマーソンがナイス時代から引き継いだ人気演目とあって、もう勢いは止まりません!

ということで、ファンにとっては録音の古さ加減も含めて、まさに至福の時間が過ごせますし、繰り返しますが、あの初来日公演を体験された皆様であれば、懐かしさがこみあげてくるに違いありません。

もちろんサイケおやじも、そのひとりとして、あの日の興奮に胸キュン感を覚えつつ、この復刻CDを楽しんでいるのでした。

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ビリー・ジョエルはこれが極みか?

2012-01-15 16:12:28 | Singer Song Writer

素顔のままで / Billy Joel (Columbia / CBSソニー)

なんだかんだ言っても、まだまだ1970年代の洋楽には素敵なメロディが溢れていましたし、もちろんそれは演じるミュージシャンの資質や素養といった基本的な部分と大きな関わりがあったのでしょう。

例えば本日ご紹介の「素顔のままで / Just The Way You Are」は説明不要、今となってはAORポップスのエバーグリーンであり、広く世界のスタンダード曲と認定されたビリー・ジョエル自作の大ヒットなんですが、これがなかなか一筋縄ではいきません。

ご存じのとおり、ビリー・ジョエルは決してデビュー時からスタア街道を驀進したミュージシャンではなく、既に幼少で身につけたクラシックピアノの腕前を活かした弾き語り歌手として、十代中頃から三流(?)クラブで生活費を稼ぐ必要に迫られていた赤貧の境遇だったそうですし、いろんなハコバンのトラをやっていた流れから、ハッスルというグループで正式にレコードデビュー出来た時の文字通りのハッスルぶりは想像に易いと思います。

もちろん結果的にLP2枚分ほどの音源からはヒットが出せず、リアルタイムでの売り上げは知る由もありませんが、ビリー・ジョエルが大スタアになって後の1980年代前半に堂々の再発となり、がめついヒット作になっていた記憶があります。

実はサイケおやじにしても、そんな下積み時代のビリー・ジョエルを聴いたのは、まさにその頃!

そしてモータウンやノーザンソウルを巧みに流用した曲&サウンド作りの妙には、種明かし的なルーツの開陳がなされたと思いましたですねぇ。

ただしサイケおやじが初めてビリー・ジョエルを意識したのは、1973年末頃から日本でも小ヒットした「Piano Man」からでしたので、明らかにエルトン・ジョンの影響下にある曲作りと歌とピアノのコラポレーションからは一線を画していたバンドスタイルのハッスルでの音源は、なにやら場末感が……。

ちなみにここまでの経緯としては、そのハッスルでのデビューが1968年で、その解散が1969年末頃、さらに新バンドとして驚くなかれのハードロックに染め抜かれたアッティラというグループを結成し、1970年頃にアルバム1枚を残した後、いよいよソロ歌手として再デビューしたのが1972年でしたから、しぶとい! と言われれば、そのとおりだと思います。

極言すれば、やっている事に一貫性が感じられず、なにか流行に流されている感があるんですよねぇ。それが世間一般からの評価でしょう。

ところがサイケおやじは後追いでそれらの音源に接するほどに、実は大ブレイクしたビリー・ジョエルの音楽性の秘密に突き当った気分になりました。

例えば、この1977年の発表の「素顔のままで / Just The Way You Are」は、歌物スタンダードの「You Are Too Beautiful」からメロディのキモばかりか、歌詞の要点までも借用していると思いませんか?

これぞ、見事な温故知新であり、ヒット曲製造の上手さの証明でもあり、はたまた下積み時代にクラブの酔客やアベック相手にスタンダードな恋の歌を演じていたビリー・ジョエルが刷り込まれた世界観なのでしょうか?

まあ、とにかく、これほど良く出来たダメ男向けの胸キュンポップスというか、男の女々しさをウリにした歌も珍しいほどかと思いますし、当然ながら、サイケおやじは大好きです♪♪~♪

今となっては周知の事実となった、元ネタよりも良い曲を作るのがプロのソングライターという不文律こそ、ビリー・ジョエルには相応しく、それでいて見事な独創性を発揮していた全盛期の魅力は、この「素顔のままで / Just The Way You Are」に極まっていると思うのでした。

あっ、最後に一言!

女の気持は変わって当然なのかなぁ~。まさに諸行無常ですねぇ。

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ストレートガレージもサイケデリックだったブルース・マグース

2012-01-14 15:07:18 | Rock

Pipe Dream / The Blues Magoos (Mercury / 日本ビクター)

今は歴史の中の人気バンドになってしまったブルース・マグースも、全盛期は最もメジャーなサイケデリックバンドという二律背反を立派に実践していました。

特に1967年に放った代表的なヒットの「Nothin' Yet」は、今やディープ・パープルの「Black Night」の元ネタとして、これは決して忘れられる事はないでしょう。

また「サイケデリック」という言葉を音楽用語として定着させる役割の大きさも、このバンドの功績のひとつかもしれません。それは本日掲載した日本盤シングルのジャケ写にも、「サイコデリック・サウンド」なぁ~んていう、なかなかしぶといウリが載っているほどですからねぇ~♪ また最初のヒットによって出したLP「サイケデリック・ロリポップ」が、その内容よりも、アルバムタイトルによって記憶と歴史に残っている事も皮肉だと思います。

というのも、所謂「サイケデリック」な「ロック」には当時からガレージ系ハードロックの流れと共に、ドロドロしてユルユルな演奏も含む幻想的な表現が求められ、それゆえに凝りに凝ったスタジオレコーディングによる「造り物」といった面白さが、今日では一般的なイメージになっている感があります。

しかし1960年代中頃、明確に勃興して音楽マスコミから「サイケデリック」という輝かしい(?)称号を与えられたロックバンドの多くは前者、つまりガレージ系のギスギスしてシンプルなサウンドを全面に出していたのが本当のところじゃないでしょうか?

もちろん当時、そのジャンルのトップバンドに君臨していたジェファーソン・エアプレインはブルースやフォーク、ジャズやR&Bを大胆に融合させた音楽性とライプステージにおけるライトショウ等々の視覚的イメージを並立させることで、そうした問題提起を企てた側面は無視出来ませんが……。

ただ、それにしても個人的には「サイケデリック」な「ロック」とは、ビートルズ中期の蠢くようなスタジオ録音の楽曲に象徴される人口的なサウンド、あるいはピンク・フロイド等々が演じていた抑揚の少ない空間志向ロック、はたまたグレイトフル・デッドのようなジャムバンドっぽい手法による長尺演奏があってこそ、見事に成り立つジャンルだと思い込んでいた十代の頃、ブルース・マグースの叩きつけるようなエグ味の効いたスタイルは、そこからほとんど逸脱した世界に感じられました。

そして皆様がご推察のとおり、若き日のサイケおやじは、そうした所謂ハードロックの原理主義的展開が大好きですから、後追い中古での入手ながら、相当に気合いの入る探索をやりましたですねぇ。

ちなみにブルース・マグースはアメリカのバンドで、メンバーはラルフ・スカラ(vo,org)、マイク・エスポジット(g)、エミール・シールヘルム(vo,g,b)、ロン・ギルバート(vo,g)、ゲオフ・デイキング(ds) という5人組で、歌と演奏もイケてますが、ルックスやファッションセンスも侮れませんから、我国のGSに与えた影響も相当に大きかったと思っています。

中でも本日ご紹介の「Pipe Dream」は、そのストレートなカッコ良さにおいて、1967年当時としても抜群の本物ロックであり、オルガンのシンプルにしてキャッチーなキメ、大技小技を織り交ぜたリードギター、ビシッとタイトなリズム隊のビート感がたまりませんねぇ~~♪

極言すれば如何にも歌謡曲に接近したヒット狙いのGSへの応用度も高く、絶妙の覚え易さが良い感じ♪♪~♪

それゆえに結論として、グループの人気が長続きしなかったのは不思議なほどなんですが、残されたレコードや音源は全てが蒐集の対象に成り得るバンドだと思いますし、実は一旦解散した後にはアシッドフォークみたいなスタイルに変貌した演奏も残していますから、もしかしたら再結成メンバーで今も活動を継続しているのかもしれません。

ということで、これほどストレートにガレージ系ハードロックの魅力を伝えてくれたバンドは、ブルース・マグースが一番じゃないでしょうか。

残念ながらサイケおやじはやる事が叶いませんでしたが。アマチュアバンドにはジャストミートの演目としての存在価値も、この「Pipe Dream」には確かにありますよ。

そして書きながら、今からでも遅くないよなぁ~、と決意を固めつつあるのでした。

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看護婦も接客商売じゃないのか!?

2012-01-13 15:45:01 | Weblog

定期健康診療のため、午前中から病院に居っぱなしですので、本日の1枚は休載ご理解願います。

しかし、それにしてもさっきの意地悪看護婦にはドタマにきましたよ!

一応、こっちはお客なんですがねぇ。

逆の立場であの態度だったら、怒りませんか、あんたはっ!?

と思わず激情モードに入ってしまったほどです。

あぁ、今日の宴会でのサイケおやじは陰湿になりそうだなぁ~~。

失礼致しました。

 

コメント (4)
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パーカー・ウイズ・ストリングスの至福に理屈は不要

2012-01-12 14:55:27 | Jazz

April In Paris / Charlie Paker With Strings (Verve)

もろちんチャーリー・パーカーはモダンジャズを創成した偉大な天才ですから、その閃きはアドリブだけでなく、自らの音楽性全般多岐にわたり、いつまでも滅びることがありません。

つまり何時如何なる場合に聴いても、チャーリー・パーカーはチャーリー・パーカーであって、それは本人が一番認識していたはずですから、例えストリングスとの共演企画であっても、なんら躊躇すること無く己の音楽を貫けば、周囲は自ずと納得させられる真実が本日ご紹介のLPにもぎっしりと収められています。

 A-1 April In Paris
 A-2 Summertime
 A-3 If I Should Lose You
 A-4 I Didn't Know What Time It Was
 A-5 Everything Happens To Me
 A-6 Just Friends
 B-1 They Can't Take That Away From Me
 B-2 You Came Along (From Out Of Nowhere)
 B-3 East Of The Sun (West Of The Moon)
 B-4 Easy To Love
 B-5 I'm In The Mood For Love
 B-6 I'll Remember April

しかし例によって初っ端から大上段に構えた文章を綴るサイケおやじにしても、ジャズを聴き始め、それなりに概要輪郭が分かり始めてきた頃は、チャーリー・パーカーともあろう天才が、何故にストリングス入りのスタンダード演奏という軟弱路線をやったのか? その迎合主義に失望を覚えたのも確かです。

なにしろジャズ評論家の先生方が解説して下さる諸々によれば、チャーリー・パーカーはビバップと称されるモダンジャズを牽引した、所謂「尖がりまくった」ミュージシャンであり、そのヒップな感覚で演じるところは黒人アングラ音楽でありながら、白人にファンが多かったという文化的素養の凄さに結びついている実相さえありましたから、何も大衆に媚びる必要があったのか??

なぁ~んていう、結局それは世間知らずの独善しか思いつかない若気の至り……。

チャーリー・パーカーにしてみれば、もっと多くの人々に自分の音楽を楽しんで欲しかったはずで、当然ながら経済的な欲望も否定出来ないでしょうし、それはレコード会社や興行エージェントの思惑でもあったはずです。

そしてチャーリー・パーカーであれば、人種差別や進み過ぎた音楽性の壁なんか、絶対に乗り越えられる確信があったんじゃないでしょうか。

そして勉強不足のサイケおやじには確かな事は言えませんが、とにかくストリングをバックにした元祖イージーリスニングジャズの企画が持ち上がった時、おそらくはチャーリー・パーカー本人が一番ヤル気満々だったように推察しています。

さて、そこでこのアルバムのA面にはストリングスと共演した公式スタジオセッションの最も早い時期の記録である1949年11月30日の演奏が、またB面には翌年7月5日の録音から6曲を抜粋して収めた構成になっています。

ちなみに説明不要とは思いますが、各々のトラックはこれが初出ではなく、当然ながら最初はSPに収録されての発売から、アルバム単位に纏められた経緯にしても、まずは10吋盤があり、この12吋盤はその後という事になりますが、それにしてもアルバムタイトルを強くイメージ化したジャケットデザインは、なかなか秀逸ですよねぇ~♪

で、肝心の演目は上記したとおり、良く知られたスタンダード曲ばかりとあって、チャーリー・パーカーはストレートにメロディを吹奏しつつも、天才ならではの鋭いファーリングでそれをフェイクしたり、当然の如く用意されたアドリブパートでは、あのドライヴしまくったグイノリフレーズや抜群のタイム感覚による跳躍とウネリを堪能させてくれますよ♪♪~♪

そして気になるストリングスセクションとの関係については、必ずしも上手くいっているとは個人的に言い難いものがあって、なにかチャーリー・パーカー率いるジャズバンド側とストリングスグループの存在が遊離しているように聞こえるんですねぇ……。

このあたりは時代的な録音技術の問題もあるでしょうが、おそらくは同じスタジオでの一発録りだったと思われる状況の中、モノラルミックスにしては妙に両者の分離が良すぎるという贅沢(?)を言いたくなるのです。

ただし、これは特にA面のセッションに顕著なんですが、その両者の媒介となっているが如きオーボエによる彩りのアンレンジが、ちょいと捨て難い魅力になっていますよ。

ちなみにレコーディングセッション参加のメンバーはチャーリー・パーカー(as) 以下、レイ・ブラウン(b)、バディ・リッチ(ds)、スタン・フリーマン(p) 等々のジャズ系名人が基本のバンド構成に、全体のアレンジをジミー・キャロルやジョー・リップマンという、あまりジャズ者には馴染みの無い人達が担当したというところにも、その解明の秘密があるのかもしれません。

その意味で前述した印象的なオーボエがミッチー・ミラーによって演じられたのも意味深というところでしょうか。

それとチャーリー・パーカーが本格的にアレンジされた大編成のバックを使っての大衆音楽寄りの録音は、決してこれが初めてではなく、ヴァーヴと契約した後では既に1年ほど前からラテンやセミクラシック調のセッションを完成させていましたし、何よりも本人の駆け出し時代はR&B系のビッグバンドで研鑽を積んでいたのですから、殊更の意識は不必要!?

なんとっ! リアルタイムでのチャーリー・パーカーは、この「With Strings」の企画を実際のライプ興業でも実践し、公式&非公式に残されたそれらの音源を聴く限りでも、モダンジャズ本流の味わいはきっちりと楽しめるところにチャーリー・パーカーの天才性は証明されていますが、常に自分本位の結果が強烈に打ち出されてしまうのも流石だと思います。

と言うか、それはチャーリー・パーカーを聴く、あるいは聴けるという至福の前では本当に瑣末な事なんでしょうねぇ~~♪

ということで、このジャケ写を眺めつつ楽しむ天才の歌心は、また別格です。

繰り返しますが、まずチャーリー・パーカーがそこに存在し、リズム隊やストリングスセクション等々が後付け的になって聞こえるのも、素直に「良」として認める他はなく、これはおそらく現在最先端のレコーディング技術で同じものを録ったとしても、結果は同じに決まっています。

そう断言して後悔致しませんが、つまらない理屈をグダグダ書き連ねている自分が情けなるほど、懐の深~~い音楽が聴けるのは確かなのでした。

コメント (2)
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