★今回、「昭和区平和の集い」の講師として元沖縄県知事の大田昌秀氏をお迎えし、沖縄の問題を学ぶことによって平和や九条の意義を再確認することとなりました。ところが、集いへの参加を呼びかける中で大田さんって誰?とか、旬を過ぎた人!とか、中には今何故沖縄?といった声さえ聞きました。九条の会ではこうした現実を直視し平和の原点である沖縄問題につぃてもっと深く知ろうという話が出てきました。
話し合いの中で、沖縄問題について造詣が深く地元で活躍してみえる先生が近くにおみえになることが分かりました。
名市大教授の阪井芳貴教授です。そこで、先生にお願いして沖縄の歴史は無論、新しい問題についても分かりやすく語っていただくことになりました。
今回はその手始めとして上記のタイトルで投稿いただきました。今後も引き続き投稿願う予定ですご期待ください。 (昭和区九条の会会員 まもる)
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1.「沖縄」の歴史と現実を知ってください! 阪井芳貴
初めまして。名古屋市立大学大学院の教員をしております阪井芳貴と申します。日夜沖縄のことを考えている重症の沖縄病患者で、沖縄県から、美ら島沖縄大使を拝命しております。
さて、みなさんは、沖縄にどのようなイメージをお持ちでしょうか? 沖縄にお出かけになったことのある方はたくさんおられると思います。観光で行かれると、おそらく、沖縄の明るい面、愉しい面、琉球王朝のすばらしい歴史文化、そして日本中探してもここにしかない美しい自然に触れて、沖縄っていいなぁ、日本じゃないみたい、やっぱり癒しの島だわ、などというイメージをますます強められたかも知れません。
また、沖縄出身の俳優やミュージシャンの活躍や、名古屋のいろいろなイベントで目にするエイサーなどをごらんになって、沖縄の音楽や芸能に魅了されている方もたくさんおられると思います。
たしかに、その通りです。沖縄は、すばらしい文化と自然を有した独自性を発揮して、本土にない魅力を発信しています。私も、その魅力にとりつかれたひとりです。
でも・・・。
では、沖縄県民・ウチナーンチュは癒しの島の住人、楽園の住人なのか、というと、それは違います。県民所得はダントツ万年全国最下位、完全失業率は万年全国最高、最低賃金も全国最低水準、離婚率も全国一を争う、というように、決して楽園をイメージできる数字ではありませんね。
つまり、実際のウチナーンチュの生活は、数字で比較すると、とても苦しいのです。にもかかわらず、観光で経済を成り立たせるしかない沖縄は、癒しの島のイメージを外に発信せざるを得ない、逆に言えば、本土が沖縄にそういうイメージを求めている、ということだと思います。
これは、罪作りなことだと思います。なぜか。
現在名古屋市博物館で開催中の「あんやたん写真展」をごらんになると、その理由がおわかりになると思います。
本土防衛の捨て石とされた沖縄は、悲惨な沖縄戦の後、こんどはサンフランシスコ講和条約によって完全に日本本土から切り離され、アメリカ軍の施政権下、常に理不尽に抑圧された状況下に置かれます。それが27年も続いたあと、なんとか日本国の沖縄県として「復帰」してからも、他府県にはない開発振興策などが施されたにもかかわらず、前述のように本土との格差は縮まらず、しかも米軍基地は復帰前と変わらず存在し、極めて偏った負担をさせられるという不公平な扱いを受け続けています。
そんな64年間に、絶えず闘いを繰り返してきたことが、写真を通して理解できると思いますし、にもかかわらず力強く沖縄のアイデンティティに誇りを持ち暮らしてこられたウチナーンチュのエネルギー、言い換えればしたたかさに、脱帽せざるを得ないのですが・・・。
そういう歴史や現実に目を向けず、癒しの島を装い続けることを求めるとは、罪作りなことだと思いませんか?
2.沖縄の「環境」問題
私は、沖縄本島中部の宜野湾市というところで暮らしたことがあります。沖縄国際大学という私立大学に国内留学するため、大学近くのアパートを借りたのです。この大学、ご存知の方も多いと思いますが、キャンパスが米軍の普天間基地に隣接するという特殊な立地の大学です。そこに近いアパートに住む、ということは必然的に基地のすぐそばに住む、という滅多にない機会となったわけです。
その結果、私と家族は、米軍基地問題を身体を通して知る、ということになったのです。年中、そして一日中(つまり深夜にも)米軍の航空機の離発着の騒音と危険にさいなまれ、また、有事の際に沖縄駐留の米軍がどういう動きを見せるのかを目の当たりにすることになりました。
これが、沖縄の最大の環境問題だと、私は思っています。もちろん、基地を抱える地域、横須賀・立川・厚木・岩国・三沢などなども同様ではありますが、沖縄本島全体に占める米軍基地の面積の割合や基地の役割の重要度から見れば、他の地域と同列に見ることはできないと思います。
長い返還交渉が実り、沖縄側に返還された土地も、すぐに利用できるわけではありません。長年の基地使用の間に弾薬や燃料などが及ぼした土壌汚染などを入念に調査しないと、使えないのです。また、基地の跡地利用においても、新たな開発による海洋汚染などを引き起こしてきた経緯があります。
沖縄本島を取り囲んでいたサンゴ礁は、沖縄戦直後からみると90%消滅してしまったというデータがあります。ほとんどが、リゾート開発や生活排水、基地からの排水が原因です。つまり、観光振興のための開発が、観光の最大の目玉であるサンゴ礁の海を破壊してきたのです。このままでは、沖縄の観光の根幹を失い、観光立県は成り立たなくなるかもしれないのです。そして、それは沖縄だけの問題ではすまない問題を内包しています。サンゴ礁には、海に住む生物の60%が生息するとも言われているからです。
いっぽう、緑豊かなやんばるの森にも、上空には米軍ヘリが飛び交い、地上にはハブ退治のために持ち込んだマングースによる生態系破壊が進んでいます。泡瀬干潟という沖縄本島中部東海岸に広がる世界的に有数の干潟も、開発のために埋め立てられようとしています。政権交代により、その工事が中断、そして中止になりそうだという朗報はありますが、開発と環境保全の問題は、県内各地でいつもせめぎ合いを続けてきました。 これらはすべて、人間がもたらした危機です。そこに、沖縄の経済振興の課題がリンクしていることも重要なポイントです。
ところで、沖縄は、自分たち(及び先祖たち)は自然の中で生かされてきた、という意識を大切に守っている希有な人々がまだまだいるところでもあります。それが、祭や芸能をしっかり継承するという姿勢となって表れているのですが、日々の生活の中に祈り・拝みがあり、目に見えないもの=神を信じ、人知を越えた存在である自然に対し敬虔に接する心が受け継がれるならば、沖縄の環境問題は、いつか良い方向に向かっていけると信じています。その可能性が、まだかろうじて残されているのが沖縄だと思います。
ただ、それはそれとして、私たちヤマトゥンチュは目の前の沖縄の環境のこれ以上の破壊を食い止めるべく、やれることを見つけ実践しなければならないと思っています。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
阪井 芳貴
話し合いの中で、沖縄問題について造詣が深く地元で活躍してみえる先生が近くにおみえになることが分かりました。
名市大教授の阪井芳貴教授です。そこで、先生にお願いして沖縄の歴史は無論、新しい問題についても分かりやすく語っていただくことになりました。
今回はその手始めとして上記のタイトルで投稿いただきました。今後も引き続き投稿願う予定ですご期待ください。 (昭和区九条の会会員 まもる)
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1.「沖縄」の歴史と現実を知ってください! 阪井芳貴
初めまして。名古屋市立大学大学院の教員をしております阪井芳貴と申します。日夜沖縄のことを考えている重症の沖縄病患者で、沖縄県から、美ら島沖縄大使を拝命しております。
さて、みなさんは、沖縄にどのようなイメージをお持ちでしょうか? 沖縄にお出かけになったことのある方はたくさんおられると思います。観光で行かれると、おそらく、沖縄の明るい面、愉しい面、琉球王朝のすばらしい歴史文化、そして日本中探してもここにしかない美しい自然に触れて、沖縄っていいなぁ、日本じゃないみたい、やっぱり癒しの島だわ、などというイメージをますます強められたかも知れません。
また、沖縄出身の俳優やミュージシャンの活躍や、名古屋のいろいろなイベントで目にするエイサーなどをごらんになって、沖縄の音楽や芸能に魅了されている方もたくさんおられると思います。
たしかに、その通りです。沖縄は、すばらしい文化と自然を有した独自性を発揮して、本土にない魅力を発信しています。私も、その魅力にとりつかれたひとりです。
でも・・・。
では、沖縄県民・ウチナーンチュは癒しの島の住人、楽園の住人なのか、というと、それは違います。県民所得はダントツ万年全国最下位、完全失業率は万年全国最高、最低賃金も全国最低水準、離婚率も全国一を争う、というように、決して楽園をイメージできる数字ではありませんね。
つまり、実際のウチナーンチュの生活は、数字で比較すると、とても苦しいのです。にもかかわらず、観光で経済を成り立たせるしかない沖縄は、癒しの島のイメージを外に発信せざるを得ない、逆に言えば、本土が沖縄にそういうイメージを求めている、ということだと思います。
これは、罪作りなことだと思います。なぜか。
現在名古屋市博物館で開催中の「あんやたん写真展」をごらんになると、その理由がおわかりになると思います。
本土防衛の捨て石とされた沖縄は、悲惨な沖縄戦の後、こんどはサンフランシスコ講和条約によって完全に日本本土から切り離され、アメリカ軍の施政権下、常に理不尽に抑圧された状況下に置かれます。それが27年も続いたあと、なんとか日本国の沖縄県として「復帰」してからも、他府県にはない開発振興策などが施されたにもかかわらず、前述のように本土との格差は縮まらず、しかも米軍基地は復帰前と変わらず存在し、極めて偏った負担をさせられるという不公平な扱いを受け続けています。
そんな64年間に、絶えず闘いを繰り返してきたことが、写真を通して理解できると思いますし、にもかかわらず力強く沖縄のアイデンティティに誇りを持ち暮らしてこられたウチナーンチュのエネルギー、言い換えればしたたかさに、脱帽せざるを得ないのですが・・・。
そういう歴史や現実に目を向けず、癒しの島を装い続けることを求めるとは、罪作りなことだと思いませんか?
2.沖縄の「環境」問題
私は、沖縄本島中部の宜野湾市というところで暮らしたことがあります。沖縄国際大学という私立大学に国内留学するため、大学近くのアパートを借りたのです。この大学、ご存知の方も多いと思いますが、キャンパスが米軍の普天間基地に隣接するという特殊な立地の大学です。そこに近いアパートに住む、ということは必然的に基地のすぐそばに住む、という滅多にない機会となったわけです。
その結果、私と家族は、米軍基地問題を身体を通して知る、ということになったのです。年中、そして一日中(つまり深夜にも)米軍の航空機の離発着の騒音と危険にさいなまれ、また、有事の際に沖縄駐留の米軍がどういう動きを見せるのかを目の当たりにすることになりました。
これが、沖縄の最大の環境問題だと、私は思っています。もちろん、基地を抱える地域、横須賀・立川・厚木・岩国・三沢などなども同様ではありますが、沖縄本島全体に占める米軍基地の面積の割合や基地の役割の重要度から見れば、他の地域と同列に見ることはできないと思います。
長い返還交渉が実り、沖縄側に返還された土地も、すぐに利用できるわけではありません。長年の基地使用の間に弾薬や燃料などが及ぼした土壌汚染などを入念に調査しないと、使えないのです。また、基地の跡地利用においても、新たな開発による海洋汚染などを引き起こしてきた経緯があります。
沖縄本島を取り囲んでいたサンゴ礁は、沖縄戦直後からみると90%消滅してしまったというデータがあります。ほとんどが、リゾート開発や生活排水、基地からの排水が原因です。つまり、観光振興のための開発が、観光の最大の目玉であるサンゴ礁の海を破壊してきたのです。このままでは、沖縄の観光の根幹を失い、観光立県は成り立たなくなるかもしれないのです。そして、それは沖縄だけの問題ではすまない問題を内包しています。サンゴ礁には、海に住む生物の60%が生息するとも言われているからです。
いっぽう、緑豊かなやんばるの森にも、上空には米軍ヘリが飛び交い、地上にはハブ退治のために持ち込んだマングースによる生態系破壊が進んでいます。泡瀬干潟という沖縄本島中部東海岸に広がる世界的に有数の干潟も、開発のために埋め立てられようとしています。政権交代により、その工事が中断、そして中止になりそうだという朗報はありますが、開発と環境保全の問題は、県内各地でいつもせめぎ合いを続けてきました。 これらはすべて、人間がもたらした危機です。そこに、沖縄の経済振興の課題がリンクしていることも重要なポイントです。
ところで、沖縄は、自分たち(及び先祖たち)は自然の中で生かされてきた、という意識を大切に守っている希有な人々がまだまだいるところでもあります。それが、祭や芸能をしっかり継承するという姿勢となって表れているのですが、日々の生活の中に祈り・拝みがあり、目に見えないもの=神を信じ、人知を越えた存在である自然に対し敬虔に接する心が受け継がれるならば、沖縄の環境問題は、いつか良い方向に向かっていけると信じています。その可能性が、まだかろうじて残されているのが沖縄だと思います。
ただ、それはそれとして、私たちヤマトゥンチュは目の前の沖縄の環境のこれ以上の破壊を食い止めるべく、やれることを見つけ実践しなければならないと思っています。
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阪井 芳貴