★沖縄の基地巡りをしてきたばかりの私に、考えさせられる記事がグループメールに掲載されていました。長文ですが是非お読みください。
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半月城です。
沖縄の米軍基地問題は、今や普天間基地の移設先をどこへ移すのかに焦点がしぼら
れた感があります。しかし、日本は在日米軍基地の役割をきちんと理解したうえで移
転問題を論じているのか、いささか気になっています。
たとえば基地の県外移転ですが、これは取りも直さず、米軍基地の有用性を認め、
かつ日本の役割をその人なりに考えた結果であると見られるのですが、そうした論者
は米軍基地の役割を具体的にどう評価しているのでしょうか? 単に日本を守るため
に必要であると考えるのでしょうか?
ひとまず、ここで米軍基地の役割について韓国サイドの見方を紹介したいと思いま
す。
沖縄の基地問題は韓国でも大きな関心をもって見守られています。というのも、沖
縄の米軍基地は、単に日本を守るという次元をはるかに超えて、台湾や韓国など東ア
ジアにおける自由主義陣営の安全保障という役割が課せられているからです。
最近、韓国の米軍基地移転問題に対する関心の深さや、日本に対する期待を朝日新
聞(2009.12.20)はこう伝えました。
--------------------
韓国政府高官は「日米関係の安定を強く願っている」と語る。韓国メディアにも
「在韓米軍の機能や規模に影響を与える」(ソウル新聞) として、懸念を持って注
視する記事が目立つ。韓国・外交安保研究院の尹徳敏(ユン・ドンミン)教授は東亜
日報への寄稿で「我々の安全に支障がでないよう、日本の考えを問いただすべきだ」
と主張した。
韓国の懸念の背景にあるのが、朝鮮半島有事の際に在日米軍が持つ重みだ。米韓両
国は、有事に備えた共同作戦計画「5027」を持つ。かつて、最大時で兵力約69
万人、艦艇約160隻、航空機約2千機からなる米軍の増援を約束した時期もあっ
た。その中核を担うのが「後方支援基地」の機能を持つ在日米軍だ。
米軍が機動性を追求して取り組むトランスフォーメーション(変革)や、米軍が保
有する戦時統制(指揮)権の韓国軍移管に伴う「5027」の見直しなどで、米軍の
増援規模は縮小するが、在日米軍の役割の重要性に変わりはないとみられる。
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現在の韓国は北朝鮮とは休戦中、すなわち戦争状態にあり、決して戦火が止んだわ
けではありません。その証拠に、韓国は北朝鮮との軍事境界線の西海への延長である
北方限界線(NLL)をめぐり、これまでにもしばしば北朝鮮と衝突して銃撃戦を繰りひ
ろげ、犠牲者までだしました。先月は幸いにも相手を狙った銃撃戦には至らず、南北
双方がお互いに空砲を撃ち合うだけに止まりました。
このように韓国は北朝鮮との危険な火種をかかえるだけに、有事の際の安全保障体
制は死活問題です。多少の南北衝突なら韓国軍で処理可能でしょうが、もし、中国や
ロシアが関係するような大規模な戦争になったら、もちろん在韓米軍や在日米軍が韓
国を助けるだろうと信じています。そんな時に思い浮かぶのが、沖縄にいるアメリカ
海兵隊です。
アメリカの海兵隊は、歴史的に「海外派遣の第一部隊として重視され,米西戦争
(1898)以降はカリブ海諸国などへのいわゆる砲艦外交の手段となり,第2次大戦では
太平洋戦線におけるアメリカ軍反撃の先兵として,ガダルカナル島,硫黄島,沖縄な
どへの上陸作戦において活動した(注1)」、勇猛果敢な「攻撃部隊」です。
アメリカ海兵隊を見ならって韓国でも海兵隊が創設されましたが、体に自信のある
志願者の応募が多く、入隊がむずかしい所として有名です。その難関ぶりは、軍隊の
東大とでもいえましょうか。
人気とされる秘密のひとつは、きびしい訓練をとおして培われる不屈の精神を養う
ことにあります。何しろ、海兵隊は最も危険な戦闘地域に真っ先に果敢に飛び込ん
で、命がけで戦うのが任務ですから、心身の鍛練は並大抵ではありません。それにあ
こがれる男性が多いのもうなずけます。
海兵隊は韓国であれ、アメリカであれ、敵地へ乗りこんで攻撃するのが任務なの
で、部隊は船やタンク、ヘリコプター部隊などが一体になって動く必要があります。
また、海兵隊は有事に迅速に派遣される必要があるので、グァム島へ全部が移転した
のでは、即応性に問題が生じます。グァムからソウルまで海兵隊が行くとなると沖縄
に比べて2日程遅れるので、作戦に支障がでることはいうまでもありません。
一方、台湾の場合は一日程度の遅れに止まるでしょうが、もっと本質的な問題があ
ります。アメリカは台湾との正式な外交関係を断絶したため、米軍は台湾には駐屯で
きません。その空白を沖縄の米軍が事実上肩代わりしており、そのために沖縄には海
兵隊を1万数千人、何とハワイの倍も置いています。その部隊がすべてグァムへ移転
するとなると台湾や中国などに対する心理的な影響は測り知れません。
アメリカの立場からすると、海兵隊をすべてグァムへ移した場合、東アジアにおけ
る自由主義陣営の安心感が大きく損なわれるので、必ず海兵隊の一部を沖縄に、最悪
でも日本国内に残す必要があると考えて当然です。
特に最近は米中関係が、ダライラマの訪米問題や台湾への武器輸出問題などでギク
シャクしているだけに、オバマ大統領は沖縄の海兵隊の役割をさらに重視することで
しょう。岡田外相は、「海兵隊が沖縄にいなくても抑止力が完全に失われることはな
い」と語りましたが、問題は日本に対する抑止力ではなく、中国などに対する抑止力
や有事の際の速攻能力が損なわれることがアメリカにとって痛手なのです。
そうした事態を避けるため、アメリカにとって日本の協力は欠かせません。日本は
自民党政権時代、政府は日本を守るためにという名分で、在日米軍基地が必要である
と説いてきました。しかし、本音は日本を守ってくれているアメリカへの責務とし
て、また、東アジアの平和を維持するという日本なりの「国際貢献」のため、東アジ
アの治安をになっている海兵隊の沖縄駐屯を望んできたのではないでしょうか。
話は余談になりますが、韓国では在日米軍の存在は北朝鮮に対する抑止力という効
果以外に、日本軍が危険な存在にならないための歯止めとしても役に立っているとい
う見方があります。戦前、韓国は日本に侵略された記憶があるので、決して日本軍の
強大化は望まないところです。在日米軍が東アジアにおける警察官の役割もはたして
いるといえましょうか。
さて、これまでの日本は国際的な政治力学の中でアメリカに追従する姿勢で一貫し
てきました。今、その路線が岐路に立たされていますが、そうした日米関係、日中関
係を韓国の中央日報はコラムで次のように分析しました。
--------------------
1945年の敗戦以降、日本は米国に対して徹底的に従順な態度を見せてきた。
このため従属国という声もあった。 その日本が米国に正面から反旗を翻す姿を見せ
ているため、米国としては衝撃であるしかない。 さる50余年間にわたり日本を支
配してきた自民党政権では想像もできなかったことが起きているのだ。
一方、中国に対しては接近を図っている。 執権後、鳩山首相が個別国家のうち初
めて訪問した国は中国だった。 民主党の実力者、小沢一郎幹事長は143人の国会
議員を率いて中国を訪問し、胡錦濤・国家主席に‘謁見’した。 中国の有力な次期
指導者である習近平副主席が日本を訪問すると、儀典上の慣例を無視して天皇との会
見を取り持ったりもした。 鳩山首相が南京を訪問し、1937年の南京大虐殺につ
いて謝罪する一方、胡錦濤・国家主席が広島で平和の意志を宣言することで、日中和
解の歴史的イベ ントを演出する案を検討中という声も聞こえる。
米国の衰退と中国の浮上で東アジアの地政学的な秩序が再編され、日本が本格的に
‘脱欧入亜’と‘脱米入中’に方向を定めたという 分析も出ている。 中国はすでに
日本の最大貿易国だ。 年間貿易額は3000億ドルに迫る。 中国の22都市と日本
の18都市をつなぐ正規航空便だけでも週635便にのぼり、年間500万人以上が
両国を往来している(注2)。
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中国を重視する鳩山首相は、一方では「対等な日米同盟関係」を口にしていまし
たが、それは単なる希望に止まるのか、あるいは実際にそれを実現するよう努力する
のか、まだ先が見えないようです。いずれアメリカとの基地問題交渉ではっきりする
でしょう。
相手のアメリカですが、アメリカ政府は、基地移転先は建前では従来案の辺野古の
海上がベストとしていますが、アメリカ内では多様な意見があるようです。先の中央
日報はそれをこう伝えました。
--------------------
米国内では普天間基地問題を眺める視点がいくつかある。 一つは米国が絶対に
譲歩できない問題だという保守派の視点だ。ジョージタウン大のビクター・チャ教授
は、「反米がいけないのか」という客気で米国に立ち向かった盧武鉉(ノ・ムヒョ
ン)前大統領の失敗を繰り返すなと鳩山首相に忠告している。 一方、ハーバード大
のジョセフ・ナイ教授は普天間基地のため50年の日米同盟が損なわれるのは米国の
損失だという立場だ。
第2次世界大戦の勝利で覇権的な地位を獲得した米国は、欧州と日本を自由陣営の
代表選手として重宝してきた。冷戦の終息と同時に米国の懐から抜け出して分家した
欧州は欧州連合(EU)という名前で一家を築き、国際社会の責任ある一員として役
割を果たしている。北大西洋条約機構(NATO)という同盟の絆は維持している
が、性格はグローバル同盟に変わった。
一方、体は大人になっても相変わらず親の保護を受けている日本としては、自国の
立場を息苦しく感じているはずだ。韓国も米国の思い通りによく育ったが、北朝鮮問
題のためまだ親の懐を離れるのは早い。 盧前大統領の自立の試みは思春期の少女の
反抗だった。
プリンストン大のジョン・アイケンベリー教授とジョージタウン大のチャールズ・
カプチャン教授は先日、ニューヨークタイムズへの寄稿で、日米同盟を維持するとい
う前提のもと、日本の対中接近を認めることで、中国と日本が東アジア統合の‘双頭
馬車’の役割をするのが望ましいという見解を提示した。EUの枠組みに縛られた統
一ドイツがフランスとともに欧州統合の両軸を形成したように、‘チャイパン(Ch
ipan)’が東アジア共同体の中心になるようにしようということだ。 それが中
国を国際社会の責任ある一員として編入・定着させる方法であり、米国はもちろん東
アジアの利益にもなるということだ(注2)。
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たしかに、「チャイパン」は同盟国にはなり得ないものの、GDP世界第2位と第
3位の「チャイパン」が東アジアの基軸として友好的、かつ有効的に機能するかぎ
り、台湾海峡や朝鮮半島など東アジアの安定も保たれることでしょう。もちろん日本
の安全保障も安定的に保たれることはいうまでもありません。その時、はじめて対等
な日米同盟関係が成立するのでしょうか。
以上、長々と書きましたが、要は沖縄県外移設論などをどう考えるのか、その際に
国際的な観点があやふやなままでは賛否両論は議論がすれ違いのまま平行線になり、
双方ともに説得力を持ち得ません。日本が今後どのような選択をするのか、日本国民
が明確なビジョンのもとに決定されるよう願う次第です。
注1)日立デジタル平凡社『世界大百科事典』
注2)中央日報「米国はもう日本の手を離す時だ」2010.1.26
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=125582&servcode=100§co
de=140
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半月城です。
沖縄の米軍基地問題は、今や普天間基地の移設先をどこへ移すのかに焦点がしぼら
れた感があります。しかし、日本は在日米軍基地の役割をきちんと理解したうえで移
転問題を論じているのか、いささか気になっています。
たとえば基地の県外移転ですが、これは取りも直さず、米軍基地の有用性を認め、
かつ日本の役割をその人なりに考えた結果であると見られるのですが、そうした論者
は米軍基地の役割を具体的にどう評価しているのでしょうか? 単に日本を守るため
に必要であると考えるのでしょうか?
ひとまず、ここで米軍基地の役割について韓国サイドの見方を紹介したいと思いま
す。
沖縄の基地問題は韓国でも大きな関心をもって見守られています。というのも、沖
縄の米軍基地は、単に日本を守るという次元をはるかに超えて、台湾や韓国など東ア
ジアにおける自由主義陣営の安全保障という役割が課せられているからです。
最近、韓国の米軍基地移転問題に対する関心の深さや、日本に対する期待を朝日新
聞(2009.12.20)はこう伝えました。
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韓国政府高官は「日米関係の安定を強く願っている」と語る。韓国メディアにも
「在韓米軍の機能や規模に影響を与える」(ソウル新聞) として、懸念を持って注
視する記事が目立つ。韓国・外交安保研究院の尹徳敏(ユン・ドンミン)教授は東亜
日報への寄稿で「我々の安全に支障がでないよう、日本の考えを問いただすべきだ」
と主張した。
韓国の懸念の背景にあるのが、朝鮮半島有事の際に在日米軍が持つ重みだ。米韓両
国は、有事に備えた共同作戦計画「5027」を持つ。かつて、最大時で兵力約69
万人、艦艇約160隻、航空機約2千機からなる米軍の増援を約束した時期もあっ
た。その中核を担うのが「後方支援基地」の機能を持つ在日米軍だ。
米軍が機動性を追求して取り組むトランスフォーメーション(変革)や、米軍が保
有する戦時統制(指揮)権の韓国軍移管に伴う「5027」の見直しなどで、米軍の
増援規模は縮小するが、在日米軍の役割の重要性に変わりはないとみられる。
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現在の韓国は北朝鮮とは休戦中、すなわち戦争状態にあり、決して戦火が止んだわ
けではありません。その証拠に、韓国は北朝鮮との軍事境界線の西海への延長である
北方限界線(NLL)をめぐり、これまでにもしばしば北朝鮮と衝突して銃撃戦を繰りひ
ろげ、犠牲者までだしました。先月は幸いにも相手を狙った銃撃戦には至らず、南北
双方がお互いに空砲を撃ち合うだけに止まりました。
このように韓国は北朝鮮との危険な火種をかかえるだけに、有事の際の安全保障体
制は死活問題です。多少の南北衝突なら韓国軍で処理可能でしょうが、もし、中国や
ロシアが関係するような大規模な戦争になったら、もちろん在韓米軍や在日米軍が韓
国を助けるだろうと信じています。そんな時に思い浮かぶのが、沖縄にいるアメリカ
海兵隊です。
アメリカの海兵隊は、歴史的に「海外派遣の第一部隊として重視され,米西戦争
(1898)以降はカリブ海諸国などへのいわゆる砲艦外交の手段となり,第2次大戦では
太平洋戦線におけるアメリカ軍反撃の先兵として,ガダルカナル島,硫黄島,沖縄な
どへの上陸作戦において活動した(注1)」、勇猛果敢な「攻撃部隊」です。
アメリカ海兵隊を見ならって韓国でも海兵隊が創設されましたが、体に自信のある
志願者の応募が多く、入隊がむずかしい所として有名です。その難関ぶりは、軍隊の
東大とでもいえましょうか。
人気とされる秘密のひとつは、きびしい訓練をとおして培われる不屈の精神を養う
ことにあります。何しろ、海兵隊は最も危険な戦闘地域に真っ先に果敢に飛び込ん
で、命がけで戦うのが任務ですから、心身の鍛練は並大抵ではありません。それにあ
こがれる男性が多いのもうなずけます。
海兵隊は韓国であれ、アメリカであれ、敵地へ乗りこんで攻撃するのが任務なの
で、部隊は船やタンク、ヘリコプター部隊などが一体になって動く必要があります。
また、海兵隊は有事に迅速に派遣される必要があるので、グァム島へ全部が移転した
のでは、即応性に問題が生じます。グァムからソウルまで海兵隊が行くとなると沖縄
に比べて2日程遅れるので、作戦に支障がでることはいうまでもありません。
一方、台湾の場合は一日程度の遅れに止まるでしょうが、もっと本質的な問題があ
ります。アメリカは台湾との正式な外交関係を断絶したため、米軍は台湾には駐屯で
きません。その空白を沖縄の米軍が事実上肩代わりしており、そのために沖縄には海
兵隊を1万数千人、何とハワイの倍も置いています。その部隊がすべてグァムへ移転
するとなると台湾や中国などに対する心理的な影響は測り知れません。
アメリカの立場からすると、海兵隊をすべてグァムへ移した場合、東アジアにおけ
る自由主義陣営の安心感が大きく損なわれるので、必ず海兵隊の一部を沖縄に、最悪
でも日本国内に残す必要があると考えて当然です。
特に最近は米中関係が、ダライラマの訪米問題や台湾への武器輸出問題などでギク
シャクしているだけに、オバマ大統領は沖縄の海兵隊の役割をさらに重視することで
しょう。岡田外相は、「海兵隊が沖縄にいなくても抑止力が完全に失われることはな
い」と語りましたが、問題は日本に対する抑止力ではなく、中国などに対する抑止力
や有事の際の速攻能力が損なわれることがアメリカにとって痛手なのです。
そうした事態を避けるため、アメリカにとって日本の協力は欠かせません。日本は
自民党政権時代、政府は日本を守るためにという名分で、在日米軍基地が必要である
と説いてきました。しかし、本音は日本を守ってくれているアメリカへの責務とし
て、また、東アジアの平和を維持するという日本なりの「国際貢献」のため、東アジ
アの治安をになっている海兵隊の沖縄駐屯を望んできたのではないでしょうか。
話は余談になりますが、韓国では在日米軍の存在は北朝鮮に対する抑止力という効
果以外に、日本軍が危険な存在にならないための歯止めとしても役に立っているとい
う見方があります。戦前、韓国は日本に侵略された記憶があるので、決して日本軍の
強大化は望まないところです。在日米軍が東アジアにおける警察官の役割もはたして
いるといえましょうか。
さて、これまでの日本は国際的な政治力学の中でアメリカに追従する姿勢で一貫し
てきました。今、その路線が岐路に立たされていますが、そうした日米関係、日中関
係を韓国の中央日報はコラムで次のように分析しました。
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1945年の敗戦以降、日本は米国に対して徹底的に従順な態度を見せてきた。
このため従属国という声もあった。 その日本が米国に正面から反旗を翻す姿を見せ
ているため、米国としては衝撃であるしかない。 さる50余年間にわたり日本を支
配してきた自民党政権では想像もできなかったことが起きているのだ。
一方、中国に対しては接近を図っている。 執権後、鳩山首相が個別国家のうち初
めて訪問した国は中国だった。 民主党の実力者、小沢一郎幹事長は143人の国会
議員を率いて中国を訪問し、胡錦濤・国家主席に‘謁見’した。 中国の有力な次期
指導者である習近平副主席が日本を訪問すると、儀典上の慣例を無視して天皇との会
見を取り持ったりもした。 鳩山首相が南京を訪問し、1937年の南京大虐殺につ
いて謝罪する一方、胡錦濤・国家主席が広島で平和の意志を宣言することで、日中和
解の歴史的イベ ントを演出する案を検討中という声も聞こえる。
米国の衰退と中国の浮上で東アジアの地政学的な秩序が再編され、日本が本格的に
‘脱欧入亜’と‘脱米入中’に方向を定めたという 分析も出ている。 中国はすでに
日本の最大貿易国だ。 年間貿易額は3000億ドルに迫る。 中国の22都市と日本
の18都市をつなぐ正規航空便だけでも週635便にのぼり、年間500万人以上が
両国を往来している(注2)。
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中国を重視する鳩山首相は、一方では「対等な日米同盟関係」を口にしていまし
たが、それは単なる希望に止まるのか、あるいは実際にそれを実現するよう努力する
のか、まだ先が見えないようです。いずれアメリカとの基地問題交渉ではっきりする
でしょう。
相手のアメリカですが、アメリカ政府は、基地移転先は建前では従来案の辺野古の
海上がベストとしていますが、アメリカ内では多様な意見があるようです。先の中央
日報はそれをこう伝えました。
--------------------
米国内では普天間基地問題を眺める視点がいくつかある。 一つは米国が絶対に
譲歩できない問題だという保守派の視点だ。ジョージタウン大のビクター・チャ教授
は、「反米がいけないのか」という客気で米国に立ち向かった盧武鉉(ノ・ムヒョ
ン)前大統領の失敗を繰り返すなと鳩山首相に忠告している。 一方、ハーバード大
のジョセフ・ナイ教授は普天間基地のため50年の日米同盟が損なわれるのは米国の
損失だという立場だ。
第2次世界大戦の勝利で覇権的な地位を獲得した米国は、欧州と日本を自由陣営の
代表選手として重宝してきた。冷戦の終息と同時に米国の懐から抜け出して分家した
欧州は欧州連合(EU)という名前で一家を築き、国際社会の責任ある一員として役
割を果たしている。北大西洋条約機構(NATO)という同盟の絆は維持している
が、性格はグローバル同盟に変わった。
一方、体は大人になっても相変わらず親の保護を受けている日本としては、自国の
立場を息苦しく感じているはずだ。韓国も米国の思い通りによく育ったが、北朝鮮問
題のためまだ親の懐を離れるのは早い。 盧前大統領の自立の試みは思春期の少女の
反抗だった。
プリンストン大のジョン・アイケンベリー教授とジョージタウン大のチャールズ・
カプチャン教授は先日、ニューヨークタイムズへの寄稿で、日米同盟を維持するとい
う前提のもと、日本の対中接近を認めることで、中国と日本が東アジア統合の‘双頭
馬車’の役割をするのが望ましいという見解を提示した。EUの枠組みに縛られた統
一ドイツがフランスとともに欧州統合の両軸を形成したように、‘チャイパン(Ch
ipan)’が東アジア共同体の中心になるようにしようということだ。 それが中
国を国際社会の責任ある一員として編入・定着させる方法であり、米国はもちろん東
アジアの利益にもなるということだ(注2)。
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たしかに、「チャイパン」は同盟国にはなり得ないものの、GDP世界第2位と第
3位の「チャイパン」が東アジアの基軸として友好的、かつ有効的に機能するかぎ
り、台湾海峡や朝鮮半島など東アジアの安定も保たれることでしょう。もちろん日本
の安全保障も安定的に保たれることはいうまでもありません。その時、はじめて対等
な日米同盟関係が成立するのでしょうか。
以上、長々と書きましたが、要は沖縄県外移設論などをどう考えるのか、その際に
国際的な観点があやふやなままでは賛否両論は議論がすれ違いのまま平行線になり、
双方ともに説得力を持ち得ません。日本が今後どのような選択をするのか、日本国民
が明確なビジョンのもとに決定されるよう願う次第です。
注1)日立デジタル平凡社『世界大百科事典』
注2)中央日報「米国はもう日本の手を離す時だ」2010.1.26
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=125582&servcode=100§co
de=140