文化系さんが根気よく追求されている〈官僚制度のメカニズム〉の労に呼応すべく、役所の言語からそれを見てみたいと思います。
●新聞には毎日のように、「罹災者に義援金を給付」「罹災者に見舞金の支給」といった記事がみられますが、
この〈給付〉とか〈支給〉といった用語はどんな意味を持つか。
ちなみに『母子保健法』には、次のような条項がみられます。
【未熟児に対しその養育に必要な医療の〈給付〉を行い、
又はこれに代えて養育医療に要する費用を〈支給〉することができる】
この〈給付〉〈支給〉とはどういう意味か、手元の辞典を広げてみました。
★給付とは、「品物やお金をくばり与えること」=『講談社・国語辞典』
「特定の相手に何らかの物品もしくは便宜を与えること」=『新明解』
★支給とは、「金品をあてがうこと」=『講談社・国語辞典』
「所属の公務員・会社員に給与や現物などを手渡すこと」=『新明解』
◆つまり、「配り」「与え」「あてがう」ことなのです。
これは、動物園の動物に餌を与える時の表現ではありますまいか。
〈給付〉でなく、「役に立つようにと差し出す」意の〈提供〉では何故いけないのか。
● このような用語は至る所に見受けられます。
「点字図書館は無料又は低額な料金で点字刊行物を盲人の求めに応じて閲覧させる施設とする」という条項が
『身障者福祉法』にみられますが、この条項にある〈閲覧させる〉は、〈閲覧できる〉ではないか。
ついでにいえば、〈施設〉の〈施〉は、「ほどこし」という意もあり、
施設とは「ほどこしのために設ける建物」と、無意識の裡に思っているのではないか。
●いずれにしても、この高見に立った用語の使い方こそ、
横着千万の権力を維持するために霞ヶ関官僚が作った法の本質を物語って
あまりあるものがあるとは言えないでしょうか。