5回連載、話題の本をご紹介する2回目です。今回は「知事抹殺」の「判決と最大争点」
【 佐藤栄佐久著「知事抹殺」紹介(2) 文科系
2011年09月10日 | 国内政治・時事問題
その2 判決と最大争点
佐藤前知事の「罪状」がこういうものだとは、前回に述べた。以下、『 』は、本分からの抜粋である。
【 『この頃になると、私も、特捜部がどんな事件を描いているのかが、だいたいわかってきた。
前田建設が水谷建設を手先に使い、官製談合の謝礼として郡山三東スーツ(知事の家業の会社ー文科系)の土地取引の対価を支払ったという構図なのだ。つまり、ストーリーはこうだ。
「木戸ダムの発注で官製談合が行われており、県側は祐二(知事の実弟、家業の現社長ー文科系)が窓口になって話をまとめた。発注権者の知事が祐二に隠れる形で、県職員に働きかけて前田建設が発注できるように便宜を図った。ダムの受注に成功した前田建設は、謝礼として、郡山三東スーツの土地を水谷建設を迂回して高く買った」』(196ページ)
ここがつまり、「検察が描いた構図が成り立ったとしても、ご本人は一銭ももらっていない収賄事件」と語られるゆえんである。収賄罪とは、公務員でないと成立しない事件なのだから。なお、この木戸ダムというのが、東電福島原発絡みなのである。『2008年4月に竣工し、福島第2原発、広野火力発電所が使用する水の供給源の役割も担う』とあった 】
さて、判決はこういうものである。先ず、08年8月の第1審。
栄佐久、懲役3年、祐二、2年6か月。いずれも執行猶予5年。追徴金が72,720,317円。
次いで、今版の追記として、09年10月14日に第2審判決報告が末尾にあった。(この本の初版第一刷は2009年9月16日であって、僕が読んでいるのは今年5月16日に出た初版第6刷である)
栄佐久、懲役2年、祐二、1年6か月。いずれも執行猶予4年。そして、追徴金は0円、つまり収賄はなしというものであった。ではなぜ、収賄罪になるのか。こんな理屈を付けたのだという。
『「換金の利益」(売れない土地を買ってもらった)があったとし、収賄罪自体は成立させた。特に私について「利益を得る認識がない」とまでこの判決は言及し、一審よりも強く「実質無罪」を示唆している』(343ページ)
なお、上記の「売れない土地を買ってもらった」は全く事実ではないと、文中に示されている。この土地の「換金」(8億7000万円)の直後から2度ほど転売されているのだが、その値はどんどん高くなっていく。最初が9億6000万円で、次ぎにあるファンドに転売された時には、12億を超えている。
さて、これがどうして犯罪になるのだろうか。それも、圧倒的多数で支持されている現職知事を逮捕するという罪に。たとえ犯罪と言えても、本人の犯罪という証拠は何もなく、全くの形式犯にしか過ぎぬものである。
現在までの争点は二つあって、一つが「兄弟が共謀した」資金作り、今一つが木戸ダム発注先決定に向けて(佐藤前知事の)「天の声」が存在したというものである。前者は、後者が否定されれば前知事自身の犯罪には全く当らないはずだ。そして佐藤前知事は現在、「天の声」を証言した坂本土木部長を、一審での偽証と談合の罪で告発している。
この坂本氏については、個人名義の銀行入金が頻繁で、その額も凄い。こんなふうに法廷で立証されている。04年が1200万円ほど、05年が1900万円ほどを、それぞれ何回もに分けて入金している。この全ての出所について彼はこんな証言をした。
「親の資産や香典からタンス預金にしてあったものだ」
彼と前知事弁護人との法廷やりとりをご紹介しよう。
『 「一番多かったとき、タンスにはどのくらい入っていたのですか」
坂本は答えた。
「2500万~2600万です」 』
さて、前回紹介したこの言葉「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」は、知事逮捕に先立って祐二を調べた時に、東京地検特捜部・森本宏検事が発したものだ。この事件はやはり、村木厚子免罪事件、陸山会免罪事件と同様、国策捜査と観るのが妥当だと思う。福島原発や地方分権について、佐藤栄佐久氏は、どのように国に警戒されていたのだろうか。】
【 佐藤栄佐久著「知事抹殺」紹介(2) 文科系
2011年09月10日 | 国内政治・時事問題
その2 判決と最大争点
佐藤前知事の「罪状」がこういうものだとは、前回に述べた。以下、『 』は、本分からの抜粋である。
【 『この頃になると、私も、特捜部がどんな事件を描いているのかが、だいたいわかってきた。
前田建設が水谷建設を手先に使い、官製談合の謝礼として郡山三東スーツ(知事の家業の会社ー文科系)の土地取引の対価を支払ったという構図なのだ。つまり、ストーリーはこうだ。
「木戸ダムの発注で官製談合が行われており、県側は祐二(知事の実弟、家業の現社長ー文科系)が窓口になって話をまとめた。発注権者の知事が祐二に隠れる形で、県職員に働きかけて前田建設が発注できるように便宜を図った。ダムの受注に成功した前田建設は、謝礼として、郡山三東スーツの土地を水谷建設を迂回して高く買った」』(196ページ)
ここがつまり、「検察が描いた構図が成り立ったとしても、ご本人は一銭ももらっていない収賄事件」と語られるゆえんである。収賄罪とは、公務員でないと成立しない事件なのだから。なお、この木戸ダムというのが、東電福島原発絡みなのである。『2008年4月に竣工し、福島第2原発、広野火力発電所が使用する水の供給源の役割も担う』とあった 】
さて、判決はこういうものである。先ず、08年8月の第1審。
栄佐久、懲役3年、祐二、2年6か月。いずれも執行猶予5年。追徴金が72,720,317円。
次いで、今版の追記として、09年10月14日に第2審判決報告が末尾にあった。(この本の初版第一刷は2009年9月16日であって、僕が読んでいるのは今年5月16日に出た初版第6刷である)
栄佐久、懲役2年、祐二、1年6か月。いずれも執行猶予4年。そして、追徴金は0円、つまり収賄はなしというものであった。ではなぜ、収賄罪になるのか。こんな理屈を付けたのだという。
『「換金の利益」(売れない土地を買ってもらった)があったとし、収賄罪自体は成立させた。特に私について「利益を得る認識がない」とまでこの判決は言及し、一審よりも強く「実質無罪」を示唆している』(343ページ)
なお、上記の「売れない土地を買ってもらった」は全く事実ではないと、文中に示されている。この土地の「換金」(8億7000万円)の直後から2度ほど転売されているのだが、その値はどんどん高くなっていく。最初が9億6000万円で、次ぎにあるファンドに転売された時には、12億を超えている。
さて、これがどうして犯罪になるのだろうか。それも、圧倒的多数で支持されている現職知事を逮捕するという罪に。たとえ犯罪と言えても、本人の犯罪という証拠は何もなく、全くの形式犯にしか過ぎぬものである。
現在までの争点は二つあって、一つが「兄弟が共謀した」資金作り、今一つが木戸ダム発注先決定に向けて(佐藤前知事の)「天の声」が存在したというものである。前者は、後者が否定されれば前知事自身の犯罪には全く当らないはずだ。そして佐藤前知事は現在、「天の声」を証言した坂本土木部長を、一審での偽証と談合の罪で告発している。
この坂本氏については、個人名義の銀行入金が頻繁で、その額も凄い。こんなふうに法廷で立証されている。04年が1200万円ほど、05年が1900万円ほどを、それぞれ何回もに分けて入金している。この全ての出所について彼はこんな証言をした。
「親の資産や香典からタンス預金にしてあったものだ」
彼と前知事弁護人との法廷やりとりをご紹介しよう。
『 「一番多かったとき、タンスにはどのくらい入っていたのですか」
坂本は答えた。
「2500万~2600万です」 』
さて、前回紹介したこの言葉「知事は日本にとってよろしくない。いずれ抹殺する」は、知事逮捕に先立って祐二を調べた時に、東京地検特捜部・森本宏検事が発したものだ。この事件はやはり、村木厚子免罪事件、陸山会免罪事件と同様、国策捜査と観るのが妥当だと思う。福島原発や地方分権について、佐藤栄佐久氏は、どのように国に警戒されていたのだろうか。】