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書評「暴露 スノーデンが私に託したファイル」 ②暴露と報復  文科系

2014年06月05日 10時03分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今回は、「第2章 香港での10日間」とその結末ということで書く。初対面の人物に会って、申し出が信用できるか否かの「証人尋問」を5時間もやって、いよいよ内部告発の世界的暴露にそのまま突入して行ったのである。厳密に選択され、ファイル分類された膨大な持ち出し資料の吟味を重ねて、まず4つの資料をターゲットに決める。最後にスノーデン自身の紹介、告発の心境吐露なども予定されることになった。これら総ての事が極秘体制を取りつつ、急を要する作業だった。暴露ニュースが出始めればすぐに合衆国情報機関の総力を上げた告発者捜しが始まり、スノーデン逮捕も含めていつ強制ストップが掛かるか分からないからである。スノーデン流の防諜経験から香港という場所にアジトが決められていたとは言え、そこが発見されるのも時間の問題なのである。予定の最後にスノーデン自身が配信記事に動画入りで登場するまでは、アジトの発見はどうしても隠さねばならない。

 
英国系ガーディアンから、第一弾ベライゾン
『アメリカ最大手通信業者〈ベライゾンビジネス〉に対して、外国諜報活動監視裁判所が全国民のすべての通話記録をNSAに提出するよう命じた件について』
『NSAが〈ベライゾン〉加入者数千万人の通信履歴を収集』
『〈ベライゾン〉に全通信履歴の提出を求める裁判所命令がオバマ政権による国内監視の規模を物語る』
『裁判所は〈ベライゾン〉に社内のシステム上すべての国内外通話履歴を「毎日継続して」NSAに提出することを指示した』
なお、このガーディアンというのは、著者が契約してきたマスコミ機関である。つまり、このニュースを世界に暴露し始めた専属機関と言って良い。もっともガーディアンだけに政府の風当たりが強くならないようになどの配慮もあって、他のマスコミにも意識的にいくつかのニュースは流している。 

第2弾は、ワシントンポストが初発
『米英諜報機関が大規模極秘プログラム:米インターネット九社(文科系注 フェイスブック、グーグル、アップル、ユーチューブ、スカイプなど)からデータを入手』
『国家安全保障局(NSA)とFBIが、アメリカの大手インターネット関連企業九社のセントラルサーバーに直接アクセスした事実が発覚。外国人ターゲット追跡のために分析官が必要とするボイスチャット、ビデオチャット、写真、Eメール、ドキュメント、アクセスログを入手』

スノーデンが所信を語る
 この10日間の最後が内部告発者スノーデン自身のマスコミ登場であって、ガーディアンのホームページに動画付記事を載せたのである。ここには、彼が初めて2人に連絡を取ったときの声明文から、こんな言葉が引用されている。
『私は自分の行動によって、自分が苦しみを味わわざるをえないことを理解しています。これらの情報を公開することが、私の人生の終焉を意味していることも。しかし、愛するこの世界を支配している国家の秘密法、不適切な看過、抗えないほど強力な行政権といったものが、たった一瞬であれ白日の下にさらされるのであれば、それで満足です』
 なお、この内部告発者登場自身は、本人の希望したところである。そして、「こういう人間による内部告発である」ということが、政府の大々的違法行為を順に暴露していった最後に出てくるという効果的演出狙いである。この演出は、2人のジャーナリストの助言によるものだが、この瞬間からスノーデンの境遇が激変していくと全員に覚悟されていたものだった。「NO PLACE TO HIDE  EDWARD SNOWDEN(隠れる場所もない エドワード・スノーデン)」、この著作の原題だった言葉である。もっとも、こんな演出をしなくとも、史上初のこれほどの内部告発者は政府情報機関の総力を上げて割り出されていくだろう。そもそも、国家安全保障局(NSA)から内部告発が出たなどというのは、史上初の大事件なのだから。つまり、すぐに割り出されるものをこちらから攻勢をかけてこの告発が社会に訴える力を一段と高めると、これが狙いなのであった。
 なお、スノーデンの人格などについて、こんなこともある傍証にはなるだろう。高校を中退する原因にもなったコンピューター技術により、18才で時給30ドルを稼ぎマイクロソフト認定システムエンジニアになっている。また、2004年20才で「イラク戦争を戦うために合衆国陸軍に入隊」している。あの9・11直後から「愛国者」になったことの現れなのである。このことにすぐに幻滅した後でも、「国家の仕事を」という意図で情報機関にコンタクトが取れたわけであった。その後は、前回書いた通りの経歴を経ていく。なお、29才の彼の年収は約20万ドルともあった。

逃亡と報復
 さて、ここからは関係者がスノーデンをアメリカ政府に渡さない行動に腐心することになっていく。結論を言うとエドワード・スノーデンは間もなく香港からロシアへ逃げて、現在は確か、モスクワのシェレメチェボ空港で生活しているはずだ。ロシアにも迷惑をかけないように税関をくぐっていないということでもあろうか。また、いつか適切などこかの国にすぐに亡命できるようにしておこうという工夫なのでもあろう。

 以上全てに対して、アメリカ政府の怒りがどれほど凄まじいものであったか。その凄さの一端として作者はいくつかの事件を紹介している。一つは、ブラジルはリオにある著者の家から、ノートパソコン一台が「消えた」こと。
 今一つは、英国ガーディアン本社に英国政府通信本部(CGHQ)がスノーデンのディスクを引き渡せと要求してきたこと。CIA、NSA高官などは、持ち出し情報の量と質とを知らないでは枕を高くして寝られないということなのでもあろう。これに応じないでいたらこんなことが起こったという。CGHQ職員がガーディアン本社に押しかけてきて、スノーデン関連のCDすべてを要求した。編集長がこれを拒否したやりとりの結末がこうだ。
『彼らの気がすむまですべてのハードドライブを破壊することになった』
『CGHQの職員達は、編集長をはじめとする〈ガーディアン〉のスタッフに続いて地下のニュース編集室に入り、彼らがドライブを粉々にする様子をとくと眺めたそうだ』

(続く)
コメント (2)
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