被爆70年 続く手帳申請 昨年8月以降303件に交付68件(16.7.31 毎日新聞)
広島、長崎で原爆に遭ったとして被爆者健康手帳の交付を求める申請が、被爆から70年となった昨年8月以降の1年間で303件に上ることが、47都道府県と広島、長崎両市への取材で分かった。いまだに多くの申請がある背景には、被爆者が自身や子供への差別を恐れ長年申請をためらってきたことや、高齢になり医療援護の必要性が強まってきたことなどがあるとみられる。
申請は21自治体にあり、うち広島市134件、広島県64件、長崎市37件、長崎県11件と被爆地が8割を占めた。他に多かったのは、大阪府12件、福岡県9県、東京都7件など。
厚生労働省によると、申請数は2013年度719件、14年度582件、15年度436件と減少しているが、被爆者の平均年齢が80歳を超えた今もなお、申請が続いている。広島市の担当者は「差別があって申請できなかったという話や、体が弱ってきたので申請したという声をよく聞く」と説明。福岡県の担当者も「家族や子供への影響を考え踏み切れなかった人や被爆事実を証明する証人が探しだせないなどの理由であきらめていた人もいる」と話す。
一方、審査結果が出たうち交付は68件、却下は100件、審査中が129件で、却下が交付を大きく上回った。取り下げなどが6件あった。国は被爆当時の罹災証明書や第三者2人以上の証明などを申請者に求めているが、高齢化した被爆者が自力で探し出すのはほぼ不可能な状態になってうる。
長崎市は申請37件のうち6割超の25件を却下し、交付は1件にとどまる。同市の担当者も「できるだけ客観的なもので被爆事実を証明してもらわなければならず苦労している」と語った。
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国がある一定の基準で手帳を交付するかどうか(医療費などに国の援助がえられる)を決めるのに一定の基準を設ける必要があることは理解できますが、実情としては行政の処分が、できるだけ与えないようにしていると受け取られるような印象があります。
毎日新聞の別の記事では、長崎で被爆した73歳(当時2歳)の女性は証人が1人しか見つからず、役所から「1人ではダメだ」と言われ、申請を諦めていました。しかしその後もう1人の証人が見つかりました。しかしその証言が「お寺に女の子がいたと聞いたことがある」という伝聞証言だったため、証拠として採用されず、支給されませんでした。
被爆問題に詳しい広島大学の田村和之名誉教授(行政法)は「おおむね10歳以上で被爆し、体験をよく覚えていた世代は高齢化で記憶があいまいになり、逆に若年被爆者には記憶がない人もいる。証拠や証人がなければ認めないという姿勢を行政がこのまま続けると、救済されるべき人が切り捨てられる可能性がある。知恵を出し合って解決策を考える必要がある」と指摘されています。 田村教授がおっしゃるように「救済されるべき人が切り捨てられることがないよう、解決策を考える必要があると思います。被爆者の人たちに残された時間は少ないのですから。
大西 五郎