本物が食べたい K・Kさんの作品です
八歳と五歳の孫娘は最近エビフライが好きになった。初めは一本ずつ買っていたが、よく食べるので作ることにした。市販のは衣ばかり厚くて中のエビはやせ細り小さい。手作りすれば中身のあるぷりぷりのエビフライを食べられる。久しぶりに揚げ物をした。夫と二人ではほとんどしないから「おっ、珍しいなあ」夫も言う。
喜ぶかなと期待したが、一口食べで「いらない」箸を置いた。「本物が食ペたい」と言う。どうやら総菜コーナーで売っているのは、衣に味がついているらしい。私のはケチャップソースをつけても箸はすすまない。張り切って作ったのに、がっかりする。なるべく手作りして添加物の入っていない物を食べさせたいと思うけれど、時間がかかり毎日とはいかず、買っていた。その味に慣れてきたのだろう。
本物が食べたいについて思い出した事がある。私の子供たちが小学校のころ、インスタントラーメンをよく食べていた。ある日、ホテルの中にある中華料理店でラーメンを食べた。「これが本物のラーメンだよ」。話をすると、「違う、いつもの本物のラーメンがいい」息子はかおを横に振った。いつもはインスタントラーメンで目の前のが本物なのに。あの時もがっかりした。
家で手作りするのが内食、買って並べると中食、外で食べると外食とか、最近は内食が充実している。たすかっているが家庭の味は薄れていくかもしれない。