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イスラム革命総本家   文科系

2017年07月17日 16時31分36秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 シリア情勢を学んでいて、サウジアラビアのことで驚いている。別エントリーで書いて、名著『「対テロ戦争」とイスラム世界』からの抜粋を冒頭に掲げたコメントをここに再掲して、若干の言葉を付け加えたい。

【 こんな国でも・・・ (文科系)2017-07-16 16:52:32
『そもそも犯罪者の公開処刑、女性の外出禁止、女性教育の制限、異教徒の宗教活動の禁止など、・・・・・・サウジアラビアの首都リアドでは、中央モスクの前の広場で金曜集合礼拝の後に公開処刑が実行されており、女性には運転免許証は発行されず、親族の同行なしには旅行も許されず、男女共学の中等・高等教育機関は存在せず、国内には一軒の教会、シナゴーグ、仏教・ヒンドゥー教寺院の存在も認められず、聖書や十字架を持ち込んだだけでも国外退去処分になる』

 知ってはいたが、こういうサウジアラビアは、現代世界の化石国に見える。アメリカが唱える「自由と民主主義の抑圧」の典型国もかくやと、こんな国でもと言ってはなんだが、国家主権は保証されているのである。国家主権は侵害されてはならないのだ。例え北でも、これを侵害したら国民が塗炭の苦しみを舐めるのである。イラクを見よ、シリアを見よ! 
 ただし、こういう国が大金持ちとして存在し、その金とアメリカの支援とを受けて有形無形周囲各国に干渉するのでは、まるで「憎まれっ子、世にはばかる」ではないか。イスラム原理主義騒動が止まないわけである。アルカイーダの創始者ビンラディン自身がサウジの王族で、彼には多大なサウジ資金も流れていたらしいのだが。

 とこう考えてさえ、こんな国の主権も守られねばならないのである。ただし、ある国の防衛問題にサウジが公然と触れた時には、集団安保体制ということで、国連公認の対サウジ自衛権発動はありうるのだろうか。】


 サウジ王族出身のビン・ラディンを匿ったとしてもたらされたアフガニスタン現在の惨状も、連載中のシリアの人道危機も、上記のような今のサウジが無かったら起こらなかったと思う。それほどに、この国の原理主義は強烈である。それでもって、有形無形の革命の輸出にも励んでいるんじゃないかと思われるほどに。この国が王制であって、世界第2位の原油埋蔵量を誇って英米資本と結びついているのだから、シリアやイラン、過去のエジプトなど周辺共和制国などは目の敵にされるはずなのだ。「自由と民主主義の輸出」に励んでいるはずのアメリカは、この国をこそ開放しなければならないのではないか。こんなことは僕は反対だが、アメリカの日頃の主張からすればということである。
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書評 「シリア情勢」(2)  文科系   

2017年07月17日 14時39分47秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今回は「第2章『独裁政権』の素顔」、「第3章『人権』からの逸脱」、「第4章『反体制派』のスペクトラ」の要約をする。

 アサドの父ハーフィズはバース党の若手士官として政権を掌握し、長く共和制首長として君臨してきた。その次男がこれを世襲したから、シリア政体は世襲共和制と呼ばれる。アサドはイギリスで学んだ眼科医で、その妻も英国生まれの元JPモルガン銀行幹部行員である。父の時代のいわば強権安定政権に対して、37歳で世襲後は一定の政治自由化に努めた。政治犯を認めて恩赦をなし、メディア規制を緩和したなどである。
 政体を支える組織は強力で、このようなものがある。政権の蔭の金庫役「ビジネスマン」。数万人の武装部隊にも成り代わることが出来る「シャッビーア」と呼ばれる裏組織。及び、国防隊などの予備軍事組織である。つまり、血族を中心に大きな参加型独裁ともいうべき政体ということだ。

 これに対する「人権派」諸組織はシリアの友グループと呼ばれる外国勢力によって支えられていた。米英、サウジ、カタール、トルコである。彼らは、アサド政権の背後にいたイラン、ロシア、レバノン・ヒズブッラーをも、人権抑圧派として当然批判した。

 シリアの友グループのデモなどが過剰弾圧されたというのは事実である。樽爆弾やクラスター爆弾などが、解放区などにも使用されているからだ。ただし、両勢力のどちらがこれを使ったかは、判明していないものが多い。シリア人権ネットワークの発表は解放区のみの映像などであって明らかに偏向があるし、シリア人権監視団も「民間人」というのはまやかしの側面がある。
 また、アサド政権が難民を作ったというのも、おかしい。難民が急増した時期がイスラム国やヌスラ戦線などの台頭によってアルカーイダ化が進み、国民の命が脅かされる事態が進んだ時期と重なるからである。

 初め、英米はシリアに経済制裁をしようとしたが、国連ではすべてロ中の拒否権にあって有志国としてやっている。ただし、欧米は初め「政権崩壊」を楽観視していて、アルカーイダ化が進み、テロが激化して国際問題になるにつれて、アサド政権の「化学兵器使用」を強調し始め、オバマによる制裁戦争寸前の地点まで行った。が、政権側の化学兵器全廃、引き渡しがロシア・国連の努力で成功すると、戦争は遠のいた。シリア国民連合はこれに反対したが、他二つの反体制派政治団体はこれを歓迎した。
 なお、2014年のマスタードガス使用がイスラム国によってなされたことは、はっきりと分かっている。

 いわゆる「反体制派」「自由・民主派」がいかにも強大なように語るのは、実力で政権を挫いたイスラム国やヌスラ戦線の拡大、残酷な仕業を隠すやり方でもある。それこそ無数の「穏健派」武装勢力が、イスラム国やアルカーイダと、外国人も含めた戦闘員の相互流出入を絶えず繰り返していたことでもあるし。欧米などシリアの友グループは、シリアのアルカーイダなら、政権抵抗勢力として支持していたと言って良い。現に、イラクで14年6月にカリフを名乗ったバグダーティーと、シリア・イスラーム国のジャウラーニーとは、仲違いをしている。イラクとシリアのイスラム国は別組織になったとも言えるのである。米英サウジなどシリアの友グループは当初、シリアのイスラム国を「民主化闘争勢力」と扱っていたことさえとも言える。

 ホワイト・ヘルメットとよばれ、ノーベル賞候補にも上がった「中立、不偏、人道」の救助・救命・治療団体が存在した。2016年には8県にまたがる114のセンターを有し、2850人を擁する大きな組織だ。が、これが不偏というのは偽りであろう。「解放区」でしか活動していないから、イスラム国、アルカーイダ、その他諸団体のいずれからも認められてきた一方で、政府軍地区ではなにもやっていないのだから。この組織を作ったのは、英国人ジェームズ・ルムジュリアー、元NATOの諜報員であり、国連英国代表部にも在籍し、2000年代半ばからはUAEの危機管理会社に移っている。このルムジュリアーが、2013年にトルコのイスタンブールでシリア人の教練を始めたのがホワイト・ヘルメットの発足であった。この組織には、米英独日の資金が流れ込んでいる。アメリカは13年に2300万ドル、イギリスも12~15年で1500万ポンドをここに支出している。


(もう一回は、続きます)

 
 
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