カナヅチ K・Kさんの作品です
テレビや映画で沈没する船を見るのが苦手。なぜかといえば恥かしながらカナヅチだから。
小学生のころ、学校のプールで二十五メートルの泳力テストがあった。泳げなかった私は覚悟を決め、息継ぎなしで必死に手足を動かした。五メートルも行かない所で先生に「もういい」と声をかけられて解放された。
たぶん、前に進まないでその場でもがいているだけの私は、溺れているように見えたのだろう。そのころ、スイミングスクールなどはあまりなかったせいにしているが、覚える機会はいくらでもあったはずなのに……。大人になってからスイミングスクールに通ったが、浮く事も出来なかった。沈んでいく私を見て「力を抜いて」、コーチは声をかけながら「浮きにくい体質かな」首を傾げる。この時も諦めた。
幸い夫もカナヅチ。水着も持っていない。だから、旅行は海へ行かない。船旅もしない。「潮風はべたべたするから嫌い」、言い訳する。山の方を選ぶ。「森林浴は気持ちが良いねえ」、深呼吸して美味しい空気を思いっきり吸う。
その遺伝子を引き継いでいるのか、子どもたちも泳ぎは苦手だった。プールのある日は「お腹が痛い」、訴えて休んだり、わざと水着を忘れたりした。私の苦い経験からスイミングスクールに強引に通わせた。なんとか泳げるようになりほっとした。私は今のところ、さっそうと泳いでいる夢だけは見る事があるけれど……。
テレビや映画で沈没する船を見るのが苦手。なぜかといえば恥かしながらカナヅチだから。
小学生のころ、学校のプールで二十五メートルの泳力テストがあった。泳げなかった私は覚悟を決め、息継ぎなしで必死に手足を動かした。五メートルも行かない所で先生に「もういい」と声をかけられて解放された。
たぶん、前に進まないでその場でもがいているだけの私は、溺れているように見えたのだろう。そのころ、スイミングスクールなどはあまりなかったせいにしているが、覚える機会はいくらでもあったはずなのに……。大人になってからスイミングスクールに通ったが、浮く事も出来なかった。沈んでいく私を見て「力を抜いて」、コーチは声をかけながら「浮きにくい体質かな」首を傾げる。この時も諦めた。
幸い夫もカナヅチ。水着も持っていない。だから、旅行は海へ行かない。船旅もしない。「潮風はべたべたするから嫌い」、言い訳する。山の方を選ぶ。「森林浴は気持ちが良いねえ」、深呼吸して美味しい空気を思いっきり吸う。
その遺伝子を引き継いでいるのか、子どもたちも泳ぎは苦手だった。プールのある日は「お腹が痛い」、訴えて休んだり、わざと水着を忘れたりした。私の苦い経験からスイミングスクールに強引に通わせた。なんとか泳げるようになりほっとした。私は今のところ、さっそうと泳いでいる夢だけは見る事があるけれど……。