Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

アンナ・マグダレーナ・バッハ「バッハの思い出」

2010-10-29 10:35:10 | 読書
山下肇訳 講談社学術文庫 (1997).

アンナ・マグダレーナは大バッハの二度目の奥さん.恥ずかしながら,ぼくはアンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳の やさしいメヌエットから判断して,このひとはバッハの娘だと勝手に思い込んでいた.15 歳年下なので,娘みたいな感じもあったとは思うが.
Wikipedia によれば,この本は1925 年の初版が匿名で発表されたので,この奥さん著と誤解されたが,書かれたのはアンナ・マグダレーナの死後である.

日本で翻訳が出たのは 1950 年で,訳者は当時は大学教養学部のドイツ語の先生だった.この方のお名前を記憶しているところを見ると,あるいは教わったのかもしれないが,ろくに勉強しなかったのでそこは覚えていない.
山下先生がアンナ・マグダレーナ本人の著作であるとしたのがけしからん...という人もいるらしいが,あとがきを読めば,訳者のこの問題に対する真摯な姿勢は解るはず.

でも出版者は,著者あとがきのほかに 音楽史を専門とする人のあとがきを加え,著者も改変しなくちゃいけないな.奥付を見たら 2003 年で 8 刷.けっこう売れているのに,講談社の怠慢 !

「...なのでございます」という調子の日本語訳は,終戦間もない時代,と言うより古き良き昭和の時代を思わせる.というより,18 世紀・バッハの時代も跳び越え,源氏物語の現代語訳みたい.バッハが彼女をひざの上に抱えて鍵盤に向かうラブラブ場面など,いかにも当事者の口から出ているように生々しく,作者の筆力はなかなかなもの.

いっそフォントも戦前のものを使い,やぼったいカバーは銅板画にかえたらいかが.

キルンベルガーだの,ゴールドベルクだのという,聞き覚えのある人物も,当然のことながら続々登場.
雇い主との軋轢.たくさん子供を作っても次々に死んだり,大きくなったら非行に走るのがいたり,バッハ家も火の車だったんだな.マグダレーナの晩年は子供たちとも行き来がなくなったようで,このあたりは現代的.

コメント (1)
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