Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

チューバはうたう - mit Tuba

2010-10-12 09:31:14 | 読書
瀬川 深,筑摩書房(2008/03).

図書館で借用.「チューバはうたう」の他二編.
表題作はシカラムータ・大熊ワタルに捧ぐ」とある.
ヒロイン現在 26 歳は中学時代に部活で,柄が大きいという理由でチューバを押し付けられてから,この楽器にのめり込んで行く.
よくある青春部活小説とは違うおとなの小説.ヒロインには世間的でいう恋人らしき男もいる.「おまえさぁ,チューバって,そんなに面白いの?」が,この男の投げかける痛切な疑問だ.ピアノ ギター フルート バイオリンなどのポピュラーな楽器ではなく,なぜチューバなのか,なぜオーケストラやブラスバンドに入らないのか,ヒロインのチューバに対する思い入れとこだわりが,ほとんど全編独白で語られ,それでいて読んだら離せない.
ストーリーは最後の1/3あたりで急展開し,感動のクライマックスもあるが,結末は不明.

ただし,楽器をやらない人がこの小説に共感するかどうかは疑問.

チューバ吹きは身近にいないが,ベーシストならけっこう知っている.音楽を下から支えるというだけでなく,ベーシストにはクラシックとかジャズとかいう境界を問題にしない人が多い.チューバとベースは近いものがあるようだ.

2007年第23回太宰治賞受賞作.

小説に出て来る,Muzucanti aurii の CD を探したが失敗.著者のブログによれば,このグループは Fanfare Ciocarlia その他をモデルとした創作とのこと.
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