Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

「楢山節考」考

2011-02-11 14:58:49 | 読書
深沢 七郎「楢山節考」新潮文庫 (1964)

1956年に第1回中央公論新人賞受賞作.正宗白鳥が「人生永遠の書」と絶賛したそうだが,著者はそんなにご大層な作品を書いたつもりはなかったらしい.それまで日劇ミュージックホールという,早く言えば高級ヌード劇場でギターを弾いたりしていたという.ちなみに,彼は日本で最初にナイロン弦のギターを弾いた人でもあるそうだ.

どこかの寒村の姨捨山伝説をベースにしているが,随所に歌が入り,自筆の楽譜も挿入されている.内容はいたって牧歌的.ヒロインのおりんばあさんは山に捨てられるのを楽しみにしていて,最後はめでたく?捨てられる.

小説では生まれたての嬰児を捨てることも話題になっているが,いまは病院でおろす.老人が空き家で白骨化するのも,昔の姥捨てに対応しているのだろう.

右下がりのニッポン.老人達が保険制度ひいては税制一般を圧迫するに連れ,現代版・姥捨てが先鋭化し,制度化したりするかもしれない.
「肩たたき退職」というのがあるが,この場合は年金課のお役人が優先的に,子供が居ない・配偶者にも先立たれた一人暮らしの年寄りの肩を叩いて「もう良いでしょう」と安楽死させるのだ... わたくし的にははそれで一向に構いませんけど.おりんばあさんじゃないけど,条件次第では志願したいくらいだ.

この小説では息子やその嫁がおばあさんに優しいところが泣かせる.もっともらしく言えば,生きることの尊厳を感じさせてくれるのだが,この点は現在のほうが全然ドライだろう.
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