Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

文学フシギ帖

2011-02-13 09:31:04 | 読書
池内 紀「文学フシギ帖 ―日本の文学百年を読む」岩波新書 (2010/07).

新幹線車中で読むべく購入.
新書は文庫より高いという印象があったが,何時の頃からか それが逆転したようだ.

近現代日本文学の53人 (手塚治虫も含まれている) をほぼ時代別に4つに分け,それぞれに 4-5 ページ.論考というより茶飲み話で,どこから読んでも良い.
北海道新聞に連載されたというが,出来はまあ揃っている.

ちょっと違和感を持ったのは,"漱石に「吾輩は狸である」があることは,ほとんど知られていないであろう" という文章.「琴のそら音」のことを言っている.私自身は学位時代に落語みたいと面白く読んだが,「我輩は猫である」は全然連想しなかった.

多くは「琴のそら音」のように,代表作から外れたものを敢えて取り上げているようだが.例外は「大菩薩峠」.この小説は全巻エピソードの繋がりで,ヨーロッパの小説の主人公が成長したり反省したり社会性に目覚めたりするのとは違うと言っている.
机龍之介に関してはそのとおりだが,作者自身は何十年も書き続けるうちに,反省したり社会性に目覚めたりして,そのたびに大乗仏教だのユートピアだのに,小説のテーマがぶれる.そこを楽しむべき小説じゃないの.

ダメ男,尾形亀之助と,織田作之助の夫婦善哉の主人公のイメージがごっちゃになってしまった.内田百﨤の借金の話が.ご当人には悪いけれど,面白い.

著者自身のヘタウマなカット入り.
コメント
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