Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ラスト・ストーリーズ

2020-12-19 09:08:19 | 読書
ウィリアム・トレヴァー,栩木伸明 訳,国書刊行会(2020/08).装丁 中島かほる.

出版社の内容紹介*****
2016年に惜しくも逝去した名匠トレヴァー、最後の短篇集がついに登場。妻の死を受け入れられない男と未亡人暮らしを楽しもうとする女、それぞれの人生が交錯する「ミセス・クラスソープ」、一人の男を愛した幼馴染の女二人が再会する「カフェ・ダライアで」、ストーカー話が被害者と加害者の立場から巧みに描かれる「世間話」、記憶障害をもった絵画修復士が町をさまよい一人の娼婦と出会って生まれる奇跡「ジョットの天使たち」など、ストーリーテリングの妙味と人間観察の精細さが頂点に達した全10篇収録。*****

巻末に栩木(とちぎ)伸明による「アイルランドが生んだウィリアム・トレヴァー - かなり長めの訳者あとがき」.ここに個々の短編も詳しく解説されている.本文中に現れるジェイムズ・ジョイス,ディッケンズ,ブロンテなど,あるいはジョットの宗教画などについては,それぞれの短編の終わりに,注のかたちで加えてくれた方が読みやすかったとも思う.

この解説の表現を借りれば「細やかな心理描写,皆まで言わずに寸止めする省筆の冴え,人生に潜む多義的なうまみをそっと手のひらに載せて差し出すかのような場面...」が続出し,なおかつ「読者に考えさせる要素が詰まっている」のである.深く感動した,というのではなく,著者の掌で遊ぶことを楽しんだというのが,読後感.解決のないミステリを次々に読まされた感じはあるが,考えてみれば,世の中に解決があることなんかないのだ.

図書館で借用.この作家の長編も読んでみようか.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

reading

/Users/ogataatsushi/Desktop/d291abed711d558e554bf7af66ee57d7.jpg