Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

吉田篤弘「チョコレート・ガール探偵譚」

2021-02-04 08:45:27 | 読書
平凡社 (2019/5).

著者は多作で,どれもどうでもいい内容 (どうせ読むならどうでもいいものを読みたい,と思っている) にして,レベルは高い.

これはハードカバーの美本で,文章は平凡社「こころ」に連載されたもの.古びた映画のチラシに載っていた「チョコレート・ガール」というタイトルに惹かれ,そのひとつの言葉だけを起点として探索した成り行きを,2年にわたって書き連ねた結果だそうだ.「探偵譚」とあるが,サイレント末期の映画,その監督・主演女優・原作に関する文献を古書店と図書館をめぐって探偵した「譚」である.こういう行為自体が嫌いではないので,楽しく読んでしまった.

読みかけて,これは実録だろうかという疑問に勝てなくなり,「チョコレート・ガール」,その主演の「水久保澄子」などを本に先回りしてググってしまった.その結果,筋も先回りして読めてしまったのが,いいような悪いような... 水久保澄子はぼくの母親と一つ違いだが,その生涯は小説みたいにおもしろい.成瀬巳喜男は小津安二郎と作風が似ているので出世できなかったと言うが,死後もその不運は続き,小津ほど評価されていないようだ.

洗足高女とか祐天寺とか懐かしい固有名詞がときどき現れた.
昭和7年の「映画評論」引用文,本書83ページ「プロの少女」の「プロ」はプロレタリアートから来たのではないかな?

図書館の本.
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